東日本大震災:被災した福祉施設に車両を届けています
難民を助ける会では、被災地で活動に必要な車両を失った障害者施設や高齢者施設を対象に、車両の提供を行っています。10月14日に宮城県山元町の高齢者施設「ささえ愛山元」、16日には岩手県陸前高田市の障害者施設「すずらんとかたつむり」を訪問し、車両の贈呈式を行いました。贈呈式に参加した、東京事務局の生子なつ帆が報告します。
※この活動は、JTI財団のご寄付により実現しました。
福祉施設の送迎に欠かせない車
障害者施設や高齢者施設では、歩行が困難な利用者もいるので、送迎用の大きな車が必要です。しかし今回の震災で、多くの施設が車を失いました。震災から半年が経ち、各施設が本格的な活動を再開しようとしたとき、施設の建物やパソコンなどの事務用品と並んでどうしても必要になったのが、車でした。
難民を助ける会では、各地の施設からこのような状況を聞き、緊急性の高いところから順次車両の提供を進めています。10月31日までに、宮城県と岩手県の施設に計13台(うちJTI財団の支援により7台)の車両を提供し、今後さらに8台(うちJTI財団の支援により5台)を送る準備を進めています。
「ご高齢の利用者の方々のために、また車で活動できることがありがたい」
10月14日は高齢者施設「ささえ愛山元」を訪問し、車両の贈呈式を行いました。この車両の購入を支援してくださったJTI財団の方々もスイスから来日し、同行されました。「ささえ愛山元」は、津波の被害の大きかった宮城県山元町の、海から約1kmの所に位置しています。地震当日は津波が押し寄せ、建物の1階部分はほぼ浸水し、車や事務用品がほとんど流されてしまいました。幸い地震保険や各方面からの支援を受けて建物の修理を行うことができ、9月20日からもとの場所で活動を再開しました。難民を助ける会も震災直後からこの施設を何度も訪問し、必要な物資の支援などを続けてきました。
贈呈式に伺うと、所長の中村怜子さんが迎えてくれました。贈呈した車2台は9月末にすでに届いており、さっそく利用者の送迎に使われているとのことでした。震災当日は、津波が押し寄せ、お年寄りの利用者の方々を誘導して全員で2階に逃げたそうです。「翌日自衛隊に救助されるまで、寒い中、本当に心細い思いをしました。この津波で職員の車を含め、すべての車両を失いました。今こうして車があって、利用者の方々のために活動できることが本当にありがたいです。」中村さんの言葉に、一同が涙する場面もありました。
「離れた場所に住む障害を持つ方の送迎が、はるかに便利になりました」
「すずらんとかたつむり」は、震災後に設立された組織です。被災地では各地の障害者施設が被害を受け、利用者の方々は以前とは別の施設に通うことを余儀なくされています。そんな中、なかなか受け入れ先が見つからない方々を助けたいと、早くも5月ごろから動き出したグループが「すずらんとかたつむり」なのです。現在は岩手県陸前高田市で、障害のある人やひきこもりの若者を受け入れるオープンな施設として、ソフトクリームの販売や「がんばろう陸前高田」のお守りの製作などの活動を行っています。
10月16日、この施設に難民を助ける会の提供した車1台が届きました。これまでは離れた場所に住む利用者が施設に来たいと思っても、移動手段がないため別の利用者の保護者に送迎をしてもらわなくてはならず、遠慮しがちでした。今回、施設の車がようやく使えるようになったので送迎が便利になり、これまで以上に気軽に活動に参加できると、皆さんが喜んでくださいました。
難民を助ける会では、今後も障害のある方々やご高齢の方々が落ち着いた生活を取り戻せるよう、活動を続けてまいります。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 生子 なつ帆
2011年6月より海外・国内事業を担当。カナダの大学を卒業後、青年海外協力隊員として2年間コスタリカで児童の更生プロジェクトに携わる。その後難民を助ける会へ(静岡県出身)