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東日本大震災:上海でチャリティコンサートが開催されました

2012年01月11日  日本緊急支援
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東北の被災者のために収益2,984,873円をご寄付

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コンサートの出演者全員が舞台に立ち、拍手喝采を受けました

2011年10月20日、中国上海の蘭心大劇院にて、東日本大震災復興支援コンサート「希望」が開催されました。上海在住の日本人によるボランティア団体「互人多(フレンド)」(代表:進士薫氏)が中心となり、コンサート実行委員会(実行委員長:上海マイツ咨詢有限会社董事長 池田博義氏)を結成し、主催。難民を助ける会は共催し、当会副理事長の加藤タキが司会を務めました。8名の音楽家が無償で出演してくださり、コンサートは会場の680席がほぼ満席となるほど大盛況のうちに終了しました。収益2,984,873円は、当会が支援を行う福島県相馬市の仮設住宅に住む子どもたちへの遊具の設置費用などに充てさせていただきます。ご来場、ご出演、ご協力いただいたすべての皆さまに心より御礼申し上げます。

以下は、実行委員会のメンバーとしてコンサートに携わった、難民を助ける会理事で上海在住の菅沼真理子からの報告です。

8名の音楽家が無償で出演

歴史と伝統のある蘭心大劇院

1930年に建てられた歴史と伝統のある蘭心大劇院の680席はほぼ満席となりました

来場者全員による黙祷から始まったコンサート。8名の演奏家が情熱的な演奏を披露してくださいました。第1部「祈り」では、中国人の若手ビオラ奏者・劉念(リウ・ニエン)さんと陳力(チェン・リー)さんが共演。続いて中国内外で活躍する小川真由美さんがピアノを、カナダの交響楽団でコンサートマスターを務めたジョージ・マキシムさんがバイオリンを演奏しました。続く第2部「希望」では、日本で活躍するジャズシンガーの中溝ひろみさんと、上海で音楽活動を行う若手の実力派ピアニスト熊倉暁子さんの演奏に続き、上海交響楽団の首席コンサートマスターで中国バイオリン協会副会長のバイオリニスト潘寅林(パン・インリン)さんと、夫人でピアニストの雷敬蓉(レイ・ジンロン)さんが共演しました。
フィナーレは、上海の合唱サークル「コールプラタナス」とゴスペルグループ「J.Voice」の皆さんがステージで「見上げてごらん夜の星を」を熱唱。そして、いつも私たちの心にある懐かしい曲「故郷」を、会場の皆さんと一緒に復興への願いを込めて合唱しました。

被災地の小学校の先生をゲストに迎え、生の声を聞くコーナーも

宮城県石巻市立飯野川第一小学校の日野峻教頭先生からお話を伺う加藤タキ

宮城県石巻市立飯野川第一小学校の日野峻教頭先生が、被災地の現状などについてお話されました(左は難民を助ける会副理事長の加藤タキ)

コンサート第2部では、お客さまに被災地とのつながりを感じていただけたらと、宮城県石巻市立飯野川第一小学校の日野峻教頭先生をゲストにお招きしました。震災から7ヵ月も過ぎ、人々の関心も薄れているこの時期に、被災地の生の声を聞いていただくことが大切だと思ったからです。日野先生は、被災地の現状や子どもたちの様子などについてお話しくださいました。また、上海の皆さんに感謝の意を述べるとともに、人々が助け合って生きる社会の大切さを強調されました。

様々なハードルを乗り越えコンサートの実現へ

潘寅林(パン・インリン)さんと夫人でピアニストの雷敬蓉(レイ・ジン ロン)さん

上海交響楽団の首席コンサートマスターの潘寅林(パン・インリン)さんが、夫人でピアニストの雷敬蓉(レイ・ジン ロン)さんと共演

このコンサートは、上海市が初めて正式に許可した日本人ボランティア団体による東日本大震災復興支援のためのチャリティコンサートで、その収益を民間のNPO団体に寄付することを初めて可能にした画期的なコンサートでした。しかし、その実現までにはたくさんのハードルがありました。

チャリティイベントを開催すること自体、制限の多い中国。ボランティア団体の名ではホールを借りることもできません。また、寄付先にも制約があり、自由に海外へお金を送ることは認められていませんでした。高いハードルを前に立ち往生していたところ、互人多がともに活動をしてきた上海青少年発展基金会(以下基金会)がコンサートの後援を快く引き受けてくれたのです。「互人多は今まで中国の子どもたちを支援してきてくれたのだから、今度は私たちたちが日本の子どもたちを支援しましょう」。この一言によって、私たちはコンサート開催に向け大きな一歩を踏み出すことができました。
基金会は共産党青年団が運営する社会公益組織です。基金会の後援をもらったことで、上海市での手続きや難民を助ける会への送金なども実にスムーズに進めることができました。さらに基金会は、企業からの協賛金・寄付に関して、税の控除を受けられる正式な領収書を発行する手続きにも協力してくださり、開催に向け次々と問題が解決されていきました。

みんなの協力でチケットを販売し、協賛企業を開拓

バイオリニストのジョージ・マキシムさんと小川真弓さん(ピアノ)

「演奏することで被災者の方々へ心の癒しと安らぎを送りたい」と、出演を快諾してくださったバイオリニストのジョージ・マキシムさん。右は小川真弓さん(ピアノ)

もちろんすべてがとんとん拍子に進んだわけではありません。実際は失敗の連続でした。また、開催の正式許可が下りるまでチケットを受け取れないので(中国では自分たちで印刷できないのです)、広報をしても9月半ばまでチケットを販売できず、やきもきしながら許可が下りるのを待ちました。
企業へは、池田博義コンサート実行委員長が中心になって働きかけてくれ、企業からさまざまな形の協賛・協力をいただくことができました。コンサート費用の負担を申し出てくれた林内有限公司、会社をあげて協賛企業を開拓しチケット販売を協力してくれた上海マイツ有限公司、来賓の宿泊先を提供してくれた花園飯店、チケット販売代行を引き受けてくれたヤマト国際物流有限公司、コンサートピアノを貸し出してくれたヤマハ楽器、舞台の花の用意、スタッフの食事の提供・・・挙げたらきりがないほど、たくさんのご支援をいただきました。

演奏家と観客の心がひとつに

ジャズシンガーの中溝ひろみさん

日本で活躍するジャズシンガーの中溝ひろみさんは、心に響く美声で「アメージング・グレイス」を披露

演奏会後、大勢の方々から「素晴らしいコンサートを企画してくれてありがとう」「涙があふれて止まりませんでした」とのお声をいただいたほか、「私たちの気持ちはきっと被災地に届くと思います」「中国人もまだ日本のことを応援しますよ」「まだ支援が必要なことがわかりました」などの感想もお寄せいただきました。一人ひとりの思いは異なりますが、皆が同時に被災地に思いを馳せたひとときとなったのではないでしょうか。

これからも被災地とつながろう

上海の合唱サークル「コールプラタナス」とゴスペルグループ「J.Voice」の皆さん

上海の合唱サークル「コールプラタナス」とゴスペルグループ「J.Voice」の皆さんが、会場の皆さんと一緒に「故郷」を合唱しました

上海でのコンサートは終わりました。けれど被災地の現実は続いています。被災地にはまだまだ胸の詰まるような状況がたくさんあると聞きます。
今回音楽を通じ、被災地との「絆」が少しでも強まったのであれば、大変幸いに存じます。
最後になりますが、震災で天に召された尊い魂のご冥福と、今なお復興のために歩む方々の平安を、心よりお祈り申し上げます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

難民を助ける会理事 菅沼 真理子

大学卒業後、民間企業を経て、91年~93年まで難民を助ける会ザンビア駐在代表。在職中に編集を担当した『アフリカ大好き!』(日本教育新聞社出版局)は、日本図書館協定選定図書となる。2009年6月より当会理事。現在は上海に在住し、中国の経済困難区の子どもたちがより良い環境の中で教育を受けられることを目的としたチャリティグループ『互人多(フレンド)』をサポート。2児の母。

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