ザンビア:訪問看護グループに自転車と救急カートを寄贈しました
地域の妊産婦の元を訪れる産婆の役割
ザンビアでは、HIV陽性者が成人の13.5%(7人に1人)に達しています。難民を助ける会では、2004年よりザンビアで包括的なHIV/エイズ対策を実施しています。首都ルサカ郊外のチパパ地域シマバラ地区で、HIV/エイズに関する正しい知識を伝えて感染を予防する活動や、訪問看護の拡充、検査や相談ができる施設の建設・整備も行っています。
訪問看護を行うグループには地域で活動する「産婆(※)」も所属しています。産婆は、出産介助に加え、妊産婦に対し、妊娠・出産によるHIVの母子感染の危険性を説明したり、HIV検査や医療機関での出産を勧める活動もしています。母親がHIVに感染していても、出産時に適切な薬を服用したり、帝王切開で出産することで、母子感染の危険性を下げることができます。15~24歳の女性のうち8.9%がHIVに感染していると推定(2011年世界人口白書)されているザンビアでは、妊産婦の元を頻繁に訪れる産婆のそうした活動は、HIV対策としても非常に重要です。
「ひとりでも多くの妊婦にHIV検査を勧めたい」
しかし広いシマバラ地区には交通機関もなく、産婆たちは歩いて巡回していました。そこで、難民を助ける会は訪問看護グループに自転車と救急カートを寄贈しました。自転車の後ろに繋げて使う救急カートは、急病人や出産間近の妊婦、様態が急変したHIV陽性者を医療機関に搬送する際に活用されています。また、自分たちで修理できるよう研修会を開き、自転車の仕組みやパンク修理の方法を学んでもらいました。この地域の道路はほとんどが未舗装で、自転車はすぐに故障やパンクをしてしまうためです。産婆の1人は「自転車を使って地域を見回り、ひとりでも多くの妊婦にHIV検査を勧め、母子感染を減らしたい」と話してくれました。
シマバラ地区では、出産のほとんどが産婆の介助によってなされています。難民を助ける会では、今後、産婆が担う妊産婦と医療機関の橋渡しの役割をより強化するため、研修会の開催などを行っていきたいと考えています。
※ここでいう産婆は、地域で出産を手助けする女性のことで、独自の経験や他の産婆に弟子入りすることによって出産介助技術を身につけた人であり、医師や助産師のような医療専門職者とは異なります |
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ザンビア事務所 北 朱美(きた あけみ)
2011年11月よりザンビア事務所駐在。臨床検査技師として病院に勤務した後、国際協力分野で働くためカナダとタイで公衆衛生を学ぶ。帰国後、難民を助ける会へ。