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タジキスタンで車いす工房の支援を開始しました

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タジキスタンには、車いすを必要とする方が約7万人(人口の1%)いるといわれていますが、国内で車いすはほとんど生産されていません。希望者には政府から輸入品が支給されますが、その数は国全体でも年間40台ほどしかないため、受け取るまで何年も待たなくてはりません。しかも支給される車いすはすべて標準型で、それぞれの障害や生活環境に合ったものではありません。そこで難民を助ける会は、タジキスタンの車いすの普及率を上げ、障害のある方々の社会参加を促進するため、2011年10月より国内で唯一の車いす工房への支援を開始しました。

障害ある方々の生活の質向上のために

パイプを曲げる作業をする南専門家と工房職員

南廣行専門家(左から2人目)から指導を受ける工房の職員。駐在員の中川善雄(右端)が通訳をしています(2012年3月6日)

車いす工房「ディルショッド」は、南西部の都市バクシュにあります。2000年、大工である工場長のサードロ・ファケロブさんは、脚に障害のある8歳の少年「ディルショッド」くんに出会い、「車いすを作ればこの子を幸せにできる」と考えて製造を始めました。一時は海外の団体から支援を受け、まとまった量の車いすを作っていましたが、希望者の事前調査やアフターサービスを行っておらず、徐々に顧客は途絶え、現在はほとんど製造をしていませんでした。

当会は、まず老朽化して雨漏りをしていた工房の建物を修理し、車いすの製造に必要な器具を提供しました。バクシュ市は停電が多いため、製造に支障をきたさないよう発電機も設置しました。

日本から車いす製造の専門家を派遣

車いすを組み立てる南専門家と工房職員

南専門家(右端)が工房職員と一緒になって車いすの改善に取り組んでいます(2012年3月7日)

その後、北海道の鷹栖町で福祉機器の製作会社を経営する南廣行専門家を派遣し、技術的な指導を行っています。南専門家は、車いすの設計から製造までを一人でこなすことができます。昨年12月から1月にかけての派遣では、利用者の生活環境や身体の状態を調査する方法を工房職員に指導。2月から再び現地に滞在し、未舗装路の多いタジキスタンに合った、振動に強い車いすのデザインを工房職員と一緒に検討したり、実践的な製作技術を指導しています。

「障害者の生活の質の向上に役立つような車いす作りを指導したい」と話す南専門家。今年10月までに計4回現地入りし、工房職員の技術力を高め、自力で高品質の車いすを設計・生産し、メンテナンスまでできるようになってもらうことを目標にしています。4月には第一号の車いすが完成する予定です。

床に座って車いすの車輪を組み立てるディルショッドさん

工房の名前の由来となったディルショッドさん(左)も現在は20歳。車いすを利用しながら工房で働いています(2012年2月28日)

工房前で記念撮影

工房の前で、南専門家(左から2人目)と工房職員、駐在員の安田あゆみ(右から2人目、2012年3月1日)

「ディルショッド」職員 アブドホリック・ラフモノフさん
車いすの部品を確認するラフモノフさんと南専門家

南専門家とラフモノフさん(右)

南さんとの作業を通して、日々たくさんのことを学んでいます。今まで工房で製造してきた車いすは、見よう見まねで作ったもので、専門家の方から実際の作業を通じて指導していただくのは今回が初めてです。当たり前のように行ってきた作業のやり方が間違っていたり、根本的な考え方が違ったりするので、日々驚きと発見があり、たくさんのことを吸収しています。

今回デザインしていただいた車いすは、今まで工房で製造してきた車いすに大きな改良が加えられました。一つひとつのパーツを南さんとともに作り上げていく中で、以前のものがどうして乗りにくかったのか、それがどう改良され、乗り手にとってどう使いやすくなったのか、一つひとつ考えながら作業を進めています。

乗り手も作り手も納得のいく車いすを作るため、南さんの指導のもと、これからも努力を重ねていきます。

※この活動は、皆さまからのあたたかいご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

タジキスタン事務所 中川 善雄

2011年3月よりタジキスタン駐在。大学卒業後、国内の人道援助団体で4年間勤務後、海外の現場を志し、難民を助ける会へ。

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