ラオス:新規事業スタート! キノコ栽培を通じて障害者の収入向上を応援します
障害者の生活環境の改善を目指して
AAR Japan [難民を助ける会] では、2012年3月より首都ビエンチャンで新たな事業を開始しました。この事業では、ラオス障害者協会(Lao Disabled People's Association:LDPA)と連携し、バリアフリーの促進を通じた障害者の生活環境の改善と、障害者の収入向上のための小規模起業支援を主な柱としています。
バリアフリーの考えを多機能センターから広げよう
ビエンチャンでは、大病院や一部の高級ホテル、国際会議場などにはスロープやユニバーサルデザインのトイレが取り付けられていますが、市内の歩道や市場、個人の住居や道路の幅などにおいては、障害者への配慮は皆無に近い状態です。地方にいたっては、建物や道路など随所に段差があるのはもちろん、道路も赤土の泥道が多く、雨季になるとぬかるむため、障害がない人でさえ通行困難になってしまいます。一般市民の間には、バリアフリーの考え方はほとんど普及していません。
そこでAARでは、バリアフリーの考え方をラオスに広げる拠点として、2012年4月より障害者のための多機能センターの建設を進めています。同センター内にはバリアフリー生活環境の展示室を設置し、スロープ、トイレ、引き戸といった設備の見本を展示します。また、障害者とその家族、そして行政関係者や一般市民の方を対象にしたワークショップを行うことにより、バリアフリーの考え方を広げていく計画です。多機能センターは今秋に完成の予定です。
キノコ栽培のノウハウを障害者の方々へ
事業のもう一つの柱は、障害者向けの小規模起業支援です。キノコ栽培とレストラン経営の研修を行い、研修後は受講生たちの起業を支援します。多機能センターにレストランを併設し、実践を通してレストラン経営について学べる環境を整える予定です。自身での開業を希望する修了生には、開業に際して調理器具などを提供します。
5月には初めてのキノコ栽培研修を4日間行い、7名の障害のある方々が参加しました。定職をもち、収入を得ることが困難な障害者たちにとって、小さなスペースで、少ない投資で始められ、それほどの重労働を必要としないキノコ栽培は、うってつけの職業です。
専門家から栽培過程の説明を受けた受講者たちは、早速、実際の作業に取りかかりました。培地となるオガクズに、米糠、砂糖、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどを肥料として混ぜ、均一になるようかき混ぜます。その後、袋に培地を詰めて蓋をします。袋をドラム缶に入 れて密封し、6時間加熱殺菌した後、キノコの菌を植え付けます(植菌)。今回植えつけたのはヒラタケですが、今後は栽培する時期によって異なる種類のキノ コを使います。植菌して1ヵ月ほど保管するとキノコが生え出し、その後3ヵ月の間、収穫することができます。1袋から1回で採れる量は100-150gです。同じ袋から3ヵ月にわたり3、4回は収穫できます。
収穫したキノコは「安くて新鮮」と地元で評判、すぐ完売に
研修で作ったキノコは260袋分。その収穫を7月4日から販売したところ、すぐに地元の人が買いに来ました。1kg当たり20,000キープ(約200円) で完売という好調なスタートです。購入者によると、市場で買うより新鮮で、値段も安いところが良いとのことです(市場では場所代もかかるので、1kg当たり24,000キープが相場)。7月4日から半月経った現在、収穫量は14kg、売り上げは280,000キープ(約3,000円)になりました。このグループでは現在本格的な栽培を開始し、別途2,500袋を準備中です。
キノコ栽培研修の受講者、カンタリーさん(女性、42歳)は32歳のときに事故に遭い、左半身を自由に動かすことができません。現在は母親と息子、弟夫婦と同居しています。タマネギやニンニクの皮をむく内職をしていますが、右手だけで作業をすることが難しく、1日50円程度の収入しかないとのこと。けれどもキノコ栽培が軌道に乗れば、最低でも月に約3,000円の収入を見込むことができます。今回の研修を受けたカンタリーさんは、「キノ コ栽培という新しい技術を学ぶことはとても面白かったです。右手だけでも作業ができるし、一人では難しくても、仲間で起業できれば心強く思います」と語ってくれました。
AARは、これからもラオスの障害者の方々の生活環境の改善と収入向上のお手伝いを続けてまいります。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ラオス・ビエンチャン事務所 岡山 典靖
2004年6月よりラオス駐在。大学卒業後、青年海外協力隊としてバングラデシュへ。その後水産庁の外郭団体で水産分野でのODA事業を担当。その後農村開発NGOの駐在員としてネパールで5年勤務後、AAR Japanへ。趣味は魚釣り