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東日本大震災:石巻市雄勝町に歯科診療所を建設しました

2012年08月13日  日本緊急支援
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津波により医療施設が壊滅した石巻市雄勝町

被災した石巻市立雄勝病院

震災前、内科、外科、歯科があった石巻市立雄勝病院。市は病院の閉鎖を決定しましたが、建物は放置されたままです(2012年5月8日)

宮城県石巻市の雄勝町では、全家屋の9割が津波による被害に遭い、消防署や郵便局、学校、ガソリンスタンド、商店など、生活に必要なすべての施設が失われました。

総合病院や歯科診療所などの医療機関も全壊しました。大学病院が震災直後から行っていた巡回歯科診療が昨年9月に終了した後は、地域の方々は1日に数本しかないバスで、約1時間かけて石巻市中心部の歯科医院まで通っていました。入れ歯を使用しているなど、口腔ケアがより必要な高齢者の方々にとっては、大きな負担となっていました。

「町に歯医者さんが戻ってきた!」

仮設歯科診療所の所長を務める河瀬総一郎氏

仮設歯科診療所の所長を務める河瀬総一朗氏(2012年6月4日)

AAR Japan[難民を助ける会]は、石巻市の要請を受け、同地区にプレハブの仮設歯科診療所を建設しました。震災直後から被災地で診療支援を続けていた長野県の歯科医師、河瀬総一朗氏が家族とともに宮城県に移り住み、所長を務めています。

6月4日、石巻市長らが出席して開所式が行われました。河瀬氏は「必要な治療を受けていない、または中断している人が多くいらっしゃいます。気軽に治療を受けに来てもらえる診療所にしたい」と決意を話しました。診療を開始して以来、町外から通院する方もおり、連日多くの患者が来院されています。

開所式で石巻市長へ歯科診療所の譲渡書を渡すAARの野際紗綾子

開所式で石巻市長(左)へ歯科診療所の譲渡書を渡すAAR東北事務所長の野際紗綾子(右、2012年6月4日)

雄勝町荒地区に住む高橋さんに話を聞くAARの蛯名誠

「歯の詰め物が取れていましたが、治療せずにいました。診療所の開所を期に通い始めました」。雄勝町荒地区に住む高橋さん(76歳、左)に話を聞く仙台事務所の蛯名誠(右、2012年7月6日)

高齢者も安心して暮らせる町になってほしい

歯科診療所の外観

車いすで直接治療室へ出入りできるよう、スロープと直通入口(右側)も設置しました(2012年6月4日)

震災前4,300人だった町の人口は、現在約1,300人。施設がほとんどなくなった上に仮設住宅を建設する土地もないため、人口の4分の3が町外に避難しています。町は高台移転に向けて準備中ですが、元々高齢・過疎化が進んでいた雄勝町へ住民が戻るかどうか、その見通しはまだ立っていません。

今回の支援では、身体が不自由な方も来院できるようにトイレを広く設計したり、通路には手すりを設置するなど、建物をバリアフリーにしました。また、通院が難しい方への訪問治療も行っています。高齢になっても安心して暮らし続けられる地域づくりの一助となればと思います。

AARは2012年7月までに、岩手、宮城、福島の3県で57の被災した障害者・高齢者施設の修繕、再建支援を実施しています。

※この活動は、皆さまからのご寄付に加え、AmeriCaresの助成を受けて実施しました。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

仙台事務所 蛯名 誠

2011年6月から仙台事務所勤務。約5年間勤めたIT企業を退職後、東日本大震災被災地でのボランティア活動を経てAARへ(青森県出身)

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