福島県:子どもたちのための自然体験ワークショップを行いました
外で自由に遊べない福島の子どもたちのために
福島県では、福島第一原子力発電所の事故の影響で、子どもたちが屋外で遊べる機会が減っています。さらに、仮設住宅には子どもたちが遊べるような場所はほとんどありません。外で遊べないことは子どもにとって精神的なストレスとなるだけでなく、慢性的な運動不足により、肥満や抵抗力の低下につながることも懸念されています。
福島県中央部に位置する須賀川市も、例外ではありません。須賀川市の調べによると、同市は東日本大震災により、全壊約1,000戸と半壊約3,400戸を含め、14,500戸を超える住宅が被災するという大きな被害を受けました(2012年1月4日時点)。いまも1,800人を超える方々が同市内の仮設住宅や借り上げアパート、雇用促進住宅で長期にわたる避難生活を送っています。
そこでAAR Japan[難民を助ける会]は、子どもたちが避難生活によるストレスや運動不足を解消し、また、ひと夏の思い出づくりができるよう、「西会津ワクワク子ども塾」を開催しました。2012年7月22・23日の2日間にわたり、福島県耶麻郡西会津町の宿泊施設ロータスインと国際芸術村に、須賀川市にお住まいのご家族20名をご招待。自然体験ワークショップを行いました。会場となった西会津町は、福島県西部にある人口約7千人の自然豊かな町で、見事な田園風景が広がります。空間放射線量も毎時0.08マイクロシーベルト前後と、関東地方とほぼ変わらない低水準を維持しています。
家族で蕎麦打ちや火おこしにチャレンジ
初日のお昼には、地元西会津町の蕎麦打ち名人、長谷川正さんを招き、蕎麦打ち体験にチャレンジ。名人の手ほどきを受けながら、親子一緒に蕎麦の生地をこねたりのばしたり。形はふぞろいながらも、香り豊かなつやつやの蕎麦ができ上がりました。「ちょっとかたいかも。噛みごたえがあって、あごが疲れるね」そんな声も聞こえましたが、たくさんの人が「おいしい!」とおかわり。みんなで一生懸命つくった蕎麦は、あっという間になくなりました。
続いて、福島県石川郡出身で古代技術・民族技術研究者の関根秀樹さんを講師にお招きし、竹細工と火おこしのワークショップを開催しました。関根さんは和光大学、桑沢デザイン研究所、多摩美術大学などで教鞭を取るかたわら、なんと、「火おこし世界チャンピオン」の肩書きもお持ちです。
まずは、竹を使って工作を行いました。竹を切ったり穴をくり抜いたりして、オリジナルの打楽器や笛、コップや水鉄砲を作りました。続いて、関根さんの丁寧な指導のもと、原始時代の火おこしに挑戦。簡単な木の棒とひもを使い、板の上で摩擦熱を利用して火をおこしました。子どもたちだけではなく、お父さんやお母さんにとっても初めての体験です。失敗してもあきらめず、何度もチャレンジ。火がついたときには歓声が上がりました。
「外でこんなに自由に遊ばせたのは、本当に久しぶり」
ワークショップの合間には、子どもたちが屋外で思う存分遊べるよう、自由時間もたっぷり設けました。「ねえ、大きいバッタいたよ。あ~、逃げちゃった。どこいったの?」「ブランコ乗る。ブランコ!」。虫取りをしたり、ロータスインにあるツリーハウスで遊んだり。夜にはバーベキューやスイカ割り、花火も楽しみました。
「外でこんなに自由に遊ばせたのは、本当に久しぶり」。3人のお子さんとともに、ご家族そろってご参加いただいた小林ひろみさん(37歳)は言います。
2人のお孫さんとともに参加された岩崎洋海さん(66歳)は、仮設住宅にお住まいで、お孫さんのご家族と離れて暮らしています。「普段はなかなか外に連れて行けないので、今回のツアーで思いっきり遊ばせてあげられることができてよかった」と、笑顔で話してくださいました。
西会津ワクワク子ども塾はGlobalGiving、株式会社リコー社会貢献クラブ・FreeWill、PEACE PROJECT、キッコーマン株式会社、株式会社岡田金属工業所からのご支援とご協力で実現しました。AARは今後も、福島県での支援活動を継続していきます。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 直江 篤志
企業に勤務した後、アメリカの大学に留学。その後、青年海外協力隊隊員として、2年間ザンビアに赴任。ザンビア滞在中に東日本大震災が起き、帰国後、被災者支援に携わりたいとAARへ。2011年10月より東京事務局にて国内・海外事業を担当