東日本大震災:福島県相馬市で移動式プラネタリウムを上映しました
移動式プラネタリウムの上映会を開催しました
2011年3月、東日本大震災が起こる前までは、福島県相馬市の子どもたちは近所の遊園地や公園などで遊んでいました。しかし、それらの遊び場は津波で流されてしまったり、放射線量が高い地域にあったりするために、子どもたちはなかなか外で遊ぶことができないのが現状です。
AAR Japan[難民を助ける会]は2012年4月に福島県相馬市に事務所を開設して以来、子どもたちのために仮設住宅に大型遊具を設置するなどの支援を行ってきました。仮設住宅や借り上げ住宅を繰り返し訪れる中、親しくなった子どもたちから「プラネタリウムを観てみたい」という声を多く聞きました。そこでAARは、満天の星空を相馬市の子どもたちに観てもらうことで、天体や星座の勉強になるだけでなく、子どもたちが元気になり、夢を抱くきっかけになればと思い、「移動式プラネタリウム上映会」を開催しました。
今夜、相馬市ではどんな星が見えるんだろう
相馬市には、常設のプラネタリウム施設はありません。相馬市に住む子どもたちがプラネタリウムを観るには、車で片道1時間から1時間半ほどかかる仙台か郡山に行く必要があります。今回のイベントに参加した小学校2年生の男の子のお母さまは、「息子が星に興味を持ち始めてから、何回か郡山や仙台のプラネタリウムに足を運びました。しかし震災後は、相馬から郡山に行くには放射線量が高い地域を通らなくてはいけないため、行く機会が減ってしまいました」と、話してくださいました。
移動式プラネタリウム上映会の会場となったのは、福島県相馬市立中村第一小学校です。空色のテントを空気で膨らませて、約40名が入れる半球状のプラネタリウムを体育館に設置しました。9月29日、30日の2日間で計10回上映会を行い、相馬市の小学校に通う子どもたちと保護者の皆さま合計489名もの方々がお越しくださいました。
プラネタリウムの解説を行うのは、今回ご協力をお願いした「横浜モバイルプラネタリウム」代表の遠山御幸さん。子どもたちがテントの中に入って席に着くと、軽やかな音楽が流れ、辺りが徐々に暗くなります。それまで何もなかった天井にだんだんと星が映し出されると、「うわぁー」「きゃー」と歓声が上がります。きれいに輝く星に見惚れているといつの間にか真っ暗になっていて、目に映るのはこれまでに見たことがないほどの、数えきれない星の数々。「あ、天の川だ!」子どもたちが嬉しそうに指差します。
映し出されるのは、「今夜の相馬市の星空」。遠山さんは、北極星や夏の第三角形などの探し方を子どもたちに教えます。「織姫さまは、夏の第三角形のひとつの、こと座のベガです」「今夜、相馬で北の低い位置に見えるのがカシオペア座ですよ」。吸い込まれそうな満天の星空の中で、あっという間に20分の上映時間は過ぎました。
「プラネタリウムを観たのははじめて」「星がすごく近くに感じた」
こうすけくん(8歳)に付き添って観覧したお母さまは、「ちょうど息子が最近星に興味を持ち、星座の図鑑を買っていたところだったので、このイベントはとてもいいタイミングでした。息子は、参加申し込み書を家に持って帰らずに、自分で学校で申し込みをするくらい楽しみにしていたんですよ」と嬉しそうに話してくださいました。同じくお父さまは、「このように、子どもたちが勉強できるイベントはあまりないのでとても良かったです。こういったイベントがもっとあるとありがたいです」と話してくださいました。
参加者の8割以上は子どもたちで、「プラネタリウムを観たのははじめて」という子がほとんどでした。上映時間の合い間には、体育館内に設置したスーパーボールすくいやビンゴゲーム、トランポリンなどを楽しんでもらいました。
あいにく開催した日の夜は曇り空でしたが、晴れた日の夜には相馬市でも満天の星空が見えることでしょう。冬にはオリオン座をはじめ、明るい星が夜空に輝きだします。ふたご座流星群も見られるかもしれません。上映会で学んだことを生かして、子どもたちにこれからも天体観測を楽しんでもらえればと思います。AARは今後も、福島県での支援活動を継続していきます。
※相馬プラネタリウムプロジェクトは、PEACE PROJECT、GlobalGiving、横浜モバイルプラネタリウム、福島県相馬市立中村第一小学校、Nalelu合同会社からのご支援とご協力で実現しました。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 林 曜子
大学卒業後、航空会社、在外公館などで勤務したのち、困っている人に直接届く支援がしたいと、AARへ。ラオス・シェンクワン事務所駐在員を経て、2011年10月より東京事務局で勤務。2012年7月より福島事業担当