ハイチ:大地震で被災した障害者の自立を支援しています
被災した障害者施設の再開を支援
ハイチでは、2010年1月12日に発生した大地震で、4,000人以上が新たに身体的な障害を負ったと推定されています。政府は障害者支援を積極的に進めようとしていますが、西半球の最貧国ともいわれるこの国で、社会福祉制度はまだまだ不十分です。
首都ポルトープランスにある「ハイチ障害者リハビリテーションセンター」(OHRHA)は、地域の障害当事者が集まり、お互いの悩みを共有したり励まし合う機会を提供している地元のNGOです。しかしOHRHAが活動の拠点としていた建物は2010年の地震で全壊し、その活動は震災後停止したままでした。そこでAAR Japan [難民を助ける会]ではOHRHAのために、200人近くが入れる講堂、バリアフリーのトイレ、コンピューター研修を行う教室、車いす用スロープ、宿泊所などの仮設施設を建設することにしました。新しい建物は耐震性やハリケーン対策も考えられています。施設は2012年4月に完成し、折りたたみ椅子100脚、事務所用の書類棚4台、プリンターなど震災で失われた資機材も提供することで、活動の再開を支援しました。
スキルアップを目指すパソコン研修
OHRHAのメンバーには身体障害を持つ方が多く、体を使う仕事に就けず困っていることが多いという訴えを聞きました。そこでAARは、今回建てた教室を使い、OHRHAに集う障害者を対象にパソコン研修を行うことにしました。パソコンを使える人がまだ少ないハイチでは、パソコン技術を身につけることで仕事が見つかりやすくなります。2012年5月から7月の間に、5日間の講座を10回開催し、総計38名の参加者が、文字入力や表計算の基本操作、インターネットの使い方など、基礎的なパソコン技術を学びました。
パソコン研修に参加したアンドレ・ルキネーさん(29歳)は、3歳の女の子と7ヵ月の男の子のお父さんです。震災前はバスの運転手として働いていましたが、震災で片足を失い、同時に仕事も失いました。今は飲食物や日用品などを売って生活費を稼いでいますが、以前と比べ収入が大きく減ってしまい、生活も苦しくなったそうです。技術を身に付けて、家族のためによい収入を得られる仕事に就きたいと、研修に参加しました。
同じく研修に参加したカリーン・ピエールさんは、修了後、パソコンのことで友達から頼りにされるようになったと話してくれました。
ハイチ全体の失業率は4割を超えると推定され、障害の有無に関わらず、仕事を見つけるのは容易ではありません。そんな中、パソコン教室にはルキネーさんのように前向きに努力を重ねる人が大勢集まり、楽しく熱心に学んでいました。修了式では、みな誇らしげに修了証書を手にし、「スキルアップのチャンスをくれてありがとう」と語ってくれました。
※この活動は、皆さまからのあたたかいご寄付に加え、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成を受けて実施しています
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 本多 麻純
2011年9月より東京事務局で主にハイチ事業を担当。米国の大学で文化人類学を専攻し、民間企業勤務を経てAARへ。