東日本大震災:命に関わる仮設住宅の結露をみんなで解決!
結露が命に関わるほどの問題に
冬には最低気温がマイナス10度にまで下がる宮城県気仙沼市の渡戸地区応急仮設住宅では、結露が非常に深刻な問題になっていました。
自治会長を務める畠山敏雄さんは、「二重サッシや断熱材の追加工事は行われたけど、結露は改善されなかった。各部屋の戸をあけて台所、風呂の換気扇をまわすと寒くて寝られない。閉めると結露が発生して寝ている布団に水滴が落ちてくる。屋根裏の換気扇も小さくて、冷え込みが強いと役に立ちません」と、状況を訴えます。水滴はカビを発生させ、肺炎などの原因ともなっています。特にご高齢の方にとっては命に関わる大問題です。行政からは追加工事の支援はありません。畠山さんは、ボランティアステーションin気仙沼に相談し、ホームセンターで購入できる資材を使って自分たちで簡易対策を行えないかと考えました。その話を伺ったAARでは、資材購入費を支援するとともに、工事をお手伝いすることにしました。
一致団結して手作業で断熱工事
連日厳しい冷え込みが続いていた12月5日、住民の方々、ボランティアステーションin気仙沼の皆さん、NPOアプカスの皆さん、そして酪農学園大学のボランティアの皆さんとともに、対策工事を開始しました。居間、寝室、台所、押し入れの天井や壁に、両面テープとシーリング材で断熱材を隙間なく貼りつけていきます。各世帯、各部屋ごとにサイズを測り、火災報知器や電球などの位置も確認してカットします。実際にはめてみて合っていたら、両面テープで取り付け、厳重にシーリングしていきます。
2人暮らしでも4畳半一間か二間程度しかない上に収納も少なく、布団の上げ下ろしさえひと苦労の狭い仮設住宅では、作業はなかなか捗りません。部屋の中に作業スペースがとれない時は、冷え込む屋外でも作業が行われます。みんなで一致団結し、渡戸地区応急仮設住宅と、同様の問題を抱えていた五右衛門ケ原仮設住宅の計10世帯、20部屋の簡易工事を、1週間かけて行いました。
「今日から結露の心配をしなくてすみます」
五右衛門ケ原仮設住宅の藤川悦郎さんは、「ここはすぐ下の国道より気温が2~3度低く、雪がよく降るんだよ。今年は昨年より寒く雪が降るのが早い。結露がひどくて押し入れの布団が朝には濡れてるんだ。毎朝、壁の結露を拭くのが冬の日課だよ。でも天井は拭けないからカビがでる。時々いすに乗って拭うんだ。歳だからきついよ」とこれまでの苦労を語り、「今日から結露を心配しなくて済む。ありがとう」と笑顔を見せてくださいました。
また同仮設の村上信子さんは、「行政から風呂の追い炊き機能追加工事の連絡があったのだけど、結露の方が悩みだったので、そちらは申し込まなかったんです。税金がもったいないでしょ。お風呂は何とか我慢しているのですが……。今日は本当にありがとうございます。お昼を作ったから食べてね」と、前の夜から仕込みをした筍とホタテの混ぜご飯、サラダ、サンマのツミレ汁、ガンヅキ(宮城や岩手でよく食べられているお菓子)を振る舞ってくれました。
このような厳しい環境でもがまん強く暮らしておられる被災地の皆さん。今回の結露対策で少しでも健康を保ち、この冬を乗り切っていかれることを願ってやみません。
※この活動は皆さまからのご寄付のほか、Caritas Germanyの助成を受けて実施しています。また通信費等の一部にソフトバンクモバイル「かんたん募金」の支援を活用しています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
仙台事務所 大原 真一郎
大学卒業後、民間企業に営業として17年間勤務。東日本大震災の後、2011年7月まで被災地でボランティアに従事。2011年8月からAAR仙台事務所へ。