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ラオス:障害者の社会参加を促進する施設が完成

2013年01月08日  ラオス障がい者支援
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みんなが暮らしやすい社会を目指して

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2012年11月14日に行われた開所式の様子。ラオス労働社会福祉大臣のオンチャン・タマヴォン氏(前列右から2人目)、在ラオス日本大使の横田順子氏(前列中央)なども参加し、盛大に執り行われました(前列左から2人目はビエンチャン事務所の岡山典靖)

ラオスでは、都市部の大病院や国際会議場にはスロープやバリアフリーのトイレが設置されているところもありますが、それ以外の場所ではバリアフリー化はほとんど進んでいません。そのため、車いす利用者など、障害者にとって街中を移動するのはとても困難です。また、障害があるために仕事に就くことができない方も多くいらっしゃいます。

そこでAAR Japan[難民を助ける会]は、ラオス障害者協会(Lao Disabled People's Association:LDPA)と協力し、バリアフリー化と障害者の就労を促進するための施設を首都ビエンチャンに建設しました。この施設には、障害のある方や高齢者にとっての暮らしやすさを考える展示室と、職業訓練用の各施設、研修やワークショップを行う講義室、LDPAの事務所スペースが備えられています。

障害者にとって暮らしやすい環境を分かりやすく展示

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開所式の日には、関係省庁や障害関連のNGOなど多くの方々が展示室を見学しました(2012年11月14日)

バリアフリーの住居と、バリアフリー化されていないラオス都市部の一般的な住居が再現されている展示室では、ラオスの生活に合わせたバリアフリーについて体験しながら学ぶことができます。

バリアフリーの住居を再現した部屋では、車いす利用者の方が使いやすい洋式トイレや引き戸を例として設置しているほか、机やベッド、電気スイッチも負担のない高さに設定するなど、様々な配慮がされています。この施設の各所では実際にこうした配慮がされており、障害当事者であるLDPAの職員達からも好評です。AARは今後、障害当事者グループや、ラオス政府関係省庁、開発援助機関、学校、病院の関係者などを対象とした見学会とワークショップを行っていく予定です。

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バリアフリーの部屋。ベッドは車いすの座面と同じ高さに設定されているので、乗り移るときに車いす利用者と介護者に大きな負担がかかりません(2012年11月19日)

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ラオス都市部の一般的な部屋。見た目はあまり変わりませんが、車いすに乗ると机やベッドの高さや小さな段差による使いづらさを体感できます(2012年11月19日)

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バリアフリーの部屋の机の高さは、車いすの肘あてが当たらないよう、一般的なものより少し高く設定されています(2012年11月16日)

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ラオスの一般的なトイレの例。洋式トイレに改修する資金がない場合は、簡単な手すりをつけるだけでも使いやすくなります(2012年11月19日)

職業訓練を兼ねたレストランも併設

AARはLDPAと協力し、2012年4月より、障害者向けの職業訓練を行っています。キノコ栽培と調理・食堂経営の研修を行い、研修後は受講生達の起業を支援しています。今回完成した施設には、キノコ栽培のモデル場と、調理・食堂経営研修を受けた生徒達が働くレストランが備えられています。

施設内のレストランでは、現在9名の生徒が働いています。彼らはオープン前に10日間研修を受け、料理の作り方、接客の仕方、調理場の衛生環境について集中的に学びました。

研修の講師をつとめたドッケオさんは、「生徒達は、身体障害があるためにこれまで職探しに苦労していました。彼らが楽しそうに働いているのを見ると私も嬉しいです。現在の利用者はLDPAの職員が中心ですが、将来は近所の人や、近くに勤めている人達も来てくれるように宣伝していきたい」と話してくれました。

AARはレストラン経営が軌道に乗るよう、研修生や講師と一緒に、経営・会計の指導や集客のための宣伝を行っていきます。

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講師のドッケオさん(左)と、LDPAセンターの職員で調理・食堂経営研修の生徒でもあるニットさん。ニットさんはレストランの会計を担当しています(2012年11月19日)

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お昼時には、LDPAの職員達でにぎわいます。麺料理カオピヤックは6,000キープ(約60円)。とても美味しく、今後に期待できます(2012年11月19日)

LDPA理事長 ブンビエン・ルアンニョート氏

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障害者の社会参加を促進するこのような施設は、これまでラオスにはひとつもありませんでした。このたび無事に開所式を迎えることができ、AARにとても感謝しています。

ラオスでは、障害者自身やその家族が、障害があるというだけで、様々なことをあきらめてしまうことがあります。とくに地方では、道が悪く車いすでも移動できない、障害者がコミュニティに受け入れられないなどの問題がいまだにあります。

私自身、ベトナム戦争で片脚を失ったあとは、就職や結婚にも希望を持てずにいました。しかし今は妻子もおり、LDPAの理事長としての仕事もあります。まずは障害者自身に自分たちが持つ権利や可能性を知ってもらいたい、そしてラオスのすべての人に「すべての人は平等である」ということを知ってほしいです。今後はこの施設が、障害者自身だけでなく、彼らの家族や市民にとっても、障害に関する様々な情報共有の場となるよう運営していきます。

※この活動は皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ラオス・ビエンチャン事務所駐在 岡山 典靖

2004年6月よりラオス駐在。大学卒業後、青年海外協力隊としてバングラデシュへ。その後水産庁の外郭団体で水産分野でのODA事業を担当。その後農村開発NGOの駐在員としてネパールで4年勤務後、AARへ。趣味は魚釣り

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