誰もが暮らしやすい社会のために:ラオスでバリアフリーを進めています
最近は日本の駅や図書館などで、引き戸式の「バリアフリートイレ」を見かけることが多くなりましたね。体に障害のある方が外出したとき、トイレが使えなかったり、段差のために行きたいところに行けないのでは困ってしまいます。AARはラオスの首都ビエンチャンで、障害のある人もない人も、大人も子どもも暮らしやすい社会をつくるために、活動を続けています。2012年3月から2013年4月にかけて、ビエンチャン近郊の郡病院8ヵ所とハンセン病患者が多く暮らす村の病院1ヵ所、そしてラオス障害者協会事務所で、スロープ設置などのバリアフリー化工事を進めています。
9つの病院にスロープとバリアフリーのトイレを設置
ビエンチャン市内の大病院にくらべて整備の遅れている郊外の8つの郡病院で、階段しかなかった入口や段差のある通路に、スロープや手すりを設置しました。また、病院のトイレを車いすでも入れるよう広くし、洋式の便器に改装しました。1歳4ヵ月の娘を連れて病院に来ていたお母さんに話を聞くと、「段差があると、子どもを抱えているときや子どもが一人で歩いているとき、つまづいてしまいそうで心配です。このようなスロープがあると歩きやすいですね」とのことでした。
ビエンチャン郊外のバン・ソムサヌーク村は、ハンセン病患者が多く暮らしています。ハンセン病は手足の変形を引き起こすため、歩行に杖を必要とする人が多くいます。AARは階段になっていた村病院入口をスロープに改装し、院内のトイレをバリアフリー化しました。村に住むワーローさん(男性、70歳前後)は治療のため定期的にこの病院に通っています。「以前は手をついて階段を登っていました。スロープができて、病院への出入りがずいぶん楽になりました」。
「障害者の状況がすこしずつ良くなってきているのがうれしい」
ラオス障害者協会(LDPA)は、ラオスの障害者の権利向上のために首都ビエンチャンを拠点に意欲的に活動しています。2012年11月にAARの支援で完成したLDPA本部には、バリアフリーに関する展示コーナーや障害者が働くレストランも併設されています。障害当事者が多く働くこの建物も、トイレを含めてバリアフリーに配慮して設計しました。
LDPA職員の一人、ペレーさん(男性、54歳)は左脚が不自由で、普段から杖を使っています。ラオス式のトイレ(日本の和式便器のような作り)では、壁で体を支えるか、それができなければ便器に直接腰を下ろさなくてはいけませんでした。「ここのトイレはすごく使いやすくて助かっている。手すりがあるから楽でいいね。」
「まだラオスの障害者に関しては多くの問題が残っているのも事実だけど、LDPAの建物ができて、障害者の状況が少しずつ良くなってきているのがうれしいね」。ペレーさんの言葉です。公共の場所がバリアフリー化されることは、そこを訪れる障害のない人々が、誰もが暮らしやすい社会について考えるきっかけにもなります。ラオスの障害のある人々がもっと積極的に社会に関わっていけるよう、AARは今後も活動を進めてまいります。
※この事業は皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ラオス・ビエンチャン事務所 岡山 典靖
2004年6月よりラオス駐在。大学卒業後、青年海外協力隊としてバングラデシュへ。その後水産庁の外郭団体で水産分野でのODA事業を担当。その後農村開発NGOの駐在員としてネパールで4年勤務後、AARへ。