ザンビア:地元ボランティアとともにエイズ対策を進めています
AARのザンビアでの活動については、5月30日(木)に行われるソノダバンド×AAR Japan スペシャルライブ&トーク「ぼくらが旅したアフリカ」でもお話しします。 |
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HIV陽性者が薬の服用を続けられるように
成人の7人に1人がHIV陽性者といわれるザンビアでは、国をあげて対策を進めており、ウイルスの増加を抑えて免疫機能を回復させる抗HIV薬が政府から無償で配付されています。しかし、周囲の目を気にして病院に薬をもらいにいかなかったり、病気や治療に対する理解が足りず服薬をやめてしまう人も多くいます。抗HIV薬を正く服薬できていればウイルスは増殖しませんが、「症状が出ていないから」と服薬を中断してしまうと、薬の血中濃度が低下してしまうだけでなく、ウイルスが薬剤耐性を獲得して、薬が効かなくなるおそれもあります。
そこでAAR Japan[難民を助ける会]は、2013年1月より、ルサカ州にある2ヵ所のクリニックで、抗HIV薬の服薬支援を開始しました。クリニック内にプライバシーの守られた環境で治療を受けられるセンターを建設しているほか、地元のボランティアを育成しながら、HIV陽性者やエイズ患者が通院や服薬を続けられるようサポートしていきます。
熱意のあるボランティアが集まりました
ボランティアは、HIV陽性者への家庭訪問を通じて、エイズの知識や抗HIV薬の重要性を伝えながら、抗HIV薬による治療を続けていけるようサポートします。まず、2月から3月にかけてこの活動に協力してくれるボランティアを選出しました。志望動機を提出してもらったあと、英語での筆記試験を実施。最後に面接で意気込みを語ってもらい、ルサカ州のマウントマクル・クリニックで活動する6名と、ナンゴングウェ・クリニックで活動する15名の計21名を選出しました。この21名とともに、患者とその家族へのきめ細かい支援をしていきます。
現在は、ボランティアの方々に、HIV/エイズやカウンセリングについての正しい知識を身に付けてもらうための研修を行っています。4月8日から13日にかけて行った研修では、HIV/エイズの基礎知識や、ボランティアはどのように服薬を支援していくべきかを学びました。
研修に参加したナンゴングウェ出身のエステレ・バンダさん(53歳)は、9年前に体調を崩し、体重がみるみる減ったため、病院で検査をしたらHIV陽性であることが分かりました。はじめは周囲の目が気になり遠くの病院に通っていましたが、交通費の負担が大きく、通院が難しくなってしまいました。そんなとき近所にもエイズで苦しんでいる人がいることを知り、「苦しんでいるのは自分だけではない」と勇気づけられ、現在は地元ナンゴングウェの病院で治療を受けています。研修の感想を尋ねると「新しい知識を得ることができ、とても勉強になりました」と話してくれました。
「正しい知識が無いためにエイズで亡くなる人を減らしたい」
バンダさんだけでなく、ボランティアの中には自身もHIV陽性者という方が少なくありません。「HIV陽性者として自分が感じてきた差別を地域からなくしたい」「地域や家族の病気に対する理解不足から適切な支援を受けられず、エイズで亡くなるのを防ぎたい」という強い気持ちで、AARの活動に協力してくれています。
AARはボランティア向けの講習とともに、HIV陽性者やその家族にも病気や治療に関する正しい知識を伝える講習会も行っています。ボランティアの家庭訪問は6月から開始する予定です。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ザンビア事務所駐在 河野 洋
東京事務局で南スーダンの水・保健事業やザンビアのHIV/エイズ対策事業などを担当した後、2012年1月よりザンビア駐在。2010年パキスタン洪水や2010年ハイチ大地震の緊急・復興支援、2011年の東アフリカ地域干ばつ緊急支援にも携わる。福岡県出身。「ザンビアではHIV陽性者に対する差別や偏見が根強く、少しずつ丁寧に取り払っていくような、息の長い取り組みが必要だと感じています」