ハイチ:子どもたちが安心して生活できるよう、被災した施設の再建を支援
2010年1月にハイチで発生した地震から3年以上が経過し、復興に向けてともに歩んできたAARのハイチでの活動も4年目に入りました。ハイチでは今も、震災で被災した建物やインフラの復興がなかなか進まないため、依然として劣悪な環境での生活を強いられている子どもたちが多くいます。AARは、そうした子どもたちが安心して生活し、教育を受けられるように、2012年8月から2013年1月までに、被災した3つの施設の再建を支援しました。
地べたで食事をしなくてはなりませんでした
その1つ、首都ポルトープランスにある「女子活動センター」は、虐待を受けた女の子や路上で生活をしていた子どもの保護を中心に、特に弱い立場に置かれている子どもへの識字教育や職業訓練を行っている施設です。宿舎では22名の女の子が暮らし、350名の地域の子どもたち(男女)が教育や訓練を受けるために通っています。地震で施設が倒壊したため、別の建物を借りて活動を続けていました。しかし、宿舎は非常に狭く、1つのベッドに2~3人が寝なければならなかったり、食事用のテーブルなどもないため、床で食事をしなくてはならない状況が続いていました。また、子どもたちが学ぶために十分な机やいす、文房具なども不足していました。
そこでAARは宿舎となる建物と教育施設の建設を支援し、学習机やいす、鞄や学用品などを提供しました。その結果、これまで生活していた22名の女の子に加え、さらに約20名が新たにセンターで生活ができる広さが確保されました。また、識字教育や職業訓練のための教材を提供したことで、子どもたちは、より充実した環境で勉強ができるようになりました。
自分たちだけの力で施設の運営を続けていくことを目指して
宿舎や教室の再建に加え、施設が適切に維持され子どもたちが長期的に安心して過ごすことができるよう、施設の代表者や教職員を対象に能力強化研修を実施しました。この研修は、今回再建支援を行った3施設に加え、2010年以降AARが支援を行った障がい児施設や学校からも職員を招き、合計13施設を対象に行われました。まず、教職員に感染症などの蔓延を防ぐため衛生管理の方法や、虐待を受けたり親を失ったりした子どもたちへの心理サポート、障がいのある子どもたちへの指導方法などを学んでもらいました。さらに、施設の代表者には帳簿の付け方や資金調達などの運営管理に関する研修を実施。今後、会計報告や事業計画を自ら作成できるようになり、各施設が自立して持続的に運営していけることを目指しました。
「子どもたちが安心して生活できるようになりました」研修に参加した女子活動センターの代表者ナディーン・フランソワさんは、「AARの支援のおかげで、以前より良好な環境で子どもたちが安心して生活できるようになり、より多くの子どもたちを保護できるようになりました。しかし、震災から3年が経過する間、貧困から児童労働を強いられている子どもの数も増え、復興にも多くの時間が必要です」と言います。そんな彼女は、AARの運営管理研修で学んだことを活かし、地元のNGO職員に向けて子どもたちの権利に関する啓発活動を行うための企画書を作成したり、資金獲得のためさまざまな助成団体に申請書を提出したりしています。今後はさらに多くの子どもたちを保護できるように、大きな保護施設を設立したいという目標も語ってくれました。 |
「きれいな家で勉強ができるようになったよ」フィドニー・フランソワさん(15歳)は震災後、路上で生活をしていたところを、代表者のナディーンさんに保護されて女子活動センターにやってきました。 |
2013年2月からは、小学校8校を対象に衛生教育事業を開始しました。ハイチでは、震災前から衛生設備の普及が遅れていることに加え、震災で多くの設備が被害を受けました。施設だけでなく、衛生に関する知識の普及も遅れており、コレラや腸チフスなどの感染症にかかり、命を落とす子どもも少なくありません。感染症にかかる子どもを減らすため、小学校にトイレ・手洗い設備を整備するとともに、手洗いなどの衛生習慣の定着を目指してまいります。
※この活動は、皆さまからのあたたかいご寄付に加え、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成を受けて実施しています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ハイチ事務所 豊井彰一
2012年8月よりハイチ事務所駐在。大学卒業後、民間企業に勤務。その後青年海外協力隊員としてウガンダでの村落開発に携わり、帰国後AARへ。南スーダン駐在を経て現職(兵庫県出身)