東日本大震災:防ごう!エコノミークラス症候群
仮設住宅にお住まいの方の中には、仕事を失い、趣味も近所づきあいもなくし、ひきこもった生活を送っている方が多くいらっしゃいます。体を動かす機会が極端に減り、その結果、足腰が弱ったり、脚の血管に血栓ができる方が増えています。血栓症は、放置すると壊死や突然死なども引き起こす危険な疾患です。
AARでは、盛岡市立病院と協働し、避難生活で起こりがちなエコノミークラス症候群(避難者血栓症)や生活不活発病の予防検診・早期治療活動を、2013年4月より行っています。
治療が必要な方が1割
6月29日には、岩手県大船渡市の3ヵ所の仮設住宅で集団検診を実施しました。盛岡市立病院の医師や看護師をはじめ、福井大学や医療機器メーカーからもボランティアが参加し、総勢39名の医療スタッフが集まりました。各会場および近隣の仮設住宅に住む計124名が受診。血圧測定、血液検査や血管のエコー検査、運動指導、生活指導などを受けました。さらに、一人ひとりが医師との面談を受けました。また、参加者全員に血行を良くする弾性ストッキングを配付し、その使い方の指導も行いました。
盛岡市立病院の佐々木一裕医師は、「こうした検診で診断し、必要な人に紹介状を書いて、近くの病院で治療を受けてもらいます。平均1割の方が治療を必要としており、約3割が注意をする必要がある方です」と話しています。盛岡市内の高齢者と仮設の高齢者を比較すると、仮設にお住まいの方々の数値が著しく悪いそうです。
福井大学の山村修医師は、「深部静脈血栓症は環境の問題です。避難生活を送る方々は、狭い仮設住宅での生活、仕事に行けない、運動量が減る、病院に行くことを控えるといった傾向があり、血栓ができやすい。町全体が復興し、仕事も再開できるようにならないと改善は難しく、こうした支援はまだまだ必要とされています。ボランティアなどによる運動指導やイベントが定期的に開かれている仮設住宅では、血栓ができる方は少ない傾向があります」と、話してくださいました。
「お医者さんに大丈夫だよと言ってもらい安心しました」
検診を受けた60代の男性は、「血圧が高いため、検診は本当にありがたい。我々が元気に生活することが、支援くださる方たちの気持ちに応えることだと思っています」と話してくれました。また、『サポートセンターとみおか』でお話を伺った女性は妊娠8ヵ月。「足がひどくむくんでいますが、妊婦検診では血栓は見てもらえません。今日はお医者さんに"大丈夫!"と言ってもらい良かったです」と安心した様子でした。
これまでに、岩手県内の35ヵ所で1,043名に検診を実施しました。今後は、宮城、福島でも開催し、2014年6月まで継続する予定です。
この活動は、皆さまからのあたたかいご寄付に加え、カタール フレンド基金の助成を受けて実施しています。
カタール フレンド基金とは? |
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カタール フレンド基金は、2012年1月に設立された、東日本大震災の被災地復興を支援するカタール国の基金です。カタール国の前首長シェイク・ハマド・ビン・ハリーファ・アール・サーニ殿下の指揮の下、ハリッド・ビン・モハメド・アルアティーヤ カタール国務大臣の主導で活動しています。ヨセフ・モハメド・ビラール駐日カタール国特命全権大使が議長を務め、親善大使には俳優の別所哲也さんが就任しています。復興が本格化する2012年1月から2014年12月の3年間にわたり、「子どもたちの教育」「健康」「水産業」の3分野を支援するプロジェクトを対象に、総額で約1億ドルの活動資金の助成を行う予定です。東日本大震災の復興に向けた歩みを、被災地と共に手を携えながら進めてゆく友でありたい、というカタール国の願いと意志が込められています。 |
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 山田かおり
2007年11月より東京事務局で広報・支援者担当。国内のNGOに約8年勤務後、AARへ。静岡県出身