活動ニュース

ザンビア:HIV/エイズ対策「1人で抱え込まないで」ボランティアと協力して服薬を支援します

2013年11月13日  ザンビア感染症対策
RSS

AARはザンビアで2000年より、HIV/エイズの感染を予防するための啓発活動、両親をエイズで亡くした子どもたちへの就学支援、HIV陽性者やエイズ患者へのケアなどを行ってきました。現在、首都ルサカ近郊で実施している服薬支援についてご報告します。

1人でも多くの方の命を繋ぎとめたい

1日に200人以上がエイズによって命を落としているザンビアでは、国をあげてHIV/エイズ対策に取り組んでいます。近年では、HIVに感染しても毎日欠かすことなく生涯飲み続ければ、エイズの発症や進行を抑えることができる「抗レトロウイルス(ARV)薬」による治療も普及しています。しかし、HIV陽性者やエイズ患者のなかには、自分の感染を周囲に知られることを恐れ、クリニックで薬を受け取ることをためらったり、「今はまだ元気だから」と来院を先延ばしにしてしまうなど、さまざまな理由で服薬を止めてしまう方が多くいます。

そこでAARは、2013年1月より、ARV薬の服用を支援する地元ボランティアを育成しています。クリニックのある地域から選出された21名を対象に、計23日間の研修を実施。ボランティアは、HIV/エイズやARV薬の基礎知識に加え、相手が話しやすい雰囲気を作る方法などのカウンセリングの技術も学びました。

研修中のボランティア

研修中のボランティアたち。明るい笑顔と丁寧なカウンセリングで患者を支えます(2013年4月10日)

ナンゴングウェクリニックに建設中のセンター

5月からはルサカ州にある2ヵ所のクリニック内に、プライバシーの守られた環境で診察を受けられるセンターを建設しています。建設中のナンゴングウェクリニック(2013年9月18日)

1人ひとりの声をじっくり聞いてアドバイス

ボランティアへの自転車供与式

ボランティアへの自転車贈与式では、簡単な故障はボランティア自身で直せるように、修理の方法も教えました(2013年8月13日)

研修を終えたボランティアは、クリニックの患者リストを元に、予約日に受診しなかったHIV陽性者の家庭を訪問しています。服薬状況を聞き、健康状態を確認しながら来院を促します。ボランティアが語りかけると、今まで誰にも言えず抱えていた疑問や不安を話し始める方も少なくありません。家庭環境や現在の生活などの相談に、ボランティアはじっくりと耳を傾け、状況の改善に向けてアドバイスします。なかにはエイズが進行し衰弱して自宅で動けなくなっているところをボランティアに発見され、郡病院へ搬送された方もいました。支援が手遅れにならないよう、AARは各ボランティアに自転車を提供し、できるだけ多くの方を訪れてもらうようにしています。

「母娘の関係を気遣いながら、アドバイスしました」ボランティアのベリータさん
クリスティンさんとボランティアのベリータ

クリスティンさん(右)とボランティアのベリータさん(2013年5月31日)

しばらく来院していないHIV陽性者のクリスティンさん(仮名・15歳)の服薬状況を確認しようと、彼女の家を訪問しました。話を聞いてみると、「どうして私が感染したんだろう?」と、彼女は感染の事実に戸惑い、混乱している様子でした。彼女の母親からはそっと、「娘から責められそうで、HIVに感染したのは母子感染による可能性が高いということを、娘に告げられない」と相談を受けました。母親もHIV陽性者で、ARV薬を服用していました。

 私は、「母娘の関係を壊すことなくクリスティンさんに納得してもらうには、経験を積んだ専門家の力が必要」と考え、母娘にクリニックの社会心理カウンセリングの受診を勧めました。専門家によるカウンセリングを受診後、クリスティンさんは、自身の状況を受け入れて、ARV薬の服用を継続するようになりました。

 私たちボランティアは、家族や友人など大切な人をエイズで失った経験がありますし、自身がHIV陽性者という人もいます。だからこそ、HIV陽性者やエイズ患者、そのご家族は、私たちボランティアを信頼し、相談をもちかけてくれるのだと思います。

待合室での「ヘルストーク」

ヘルストークの様子

ヘルストークの講師を務めるボランティアのスティーブンさん(前)。患者から出る質問に合わせて、話す内容を変えているそうです(2013年9月17日)

また、クリニックでは週一回、「ヘルストーク」と呼ばれる患者向けの講義をボランティアが行っています。ルサカ市街地より車で40分くらいの場所にあるマウントマクルクリニックでは、ARV薬を服用している患者が来院する毎週火曜日、患者が診療を待つ朝8時から9時の時間を利用して開催しています。9月17日に行われたヘルストークでは、ボランティアのスティーブンさんが講師となり、服薬を継続することの大切さや、自宅での薬の保存方法について18人の患者にお話ししました。皆熱心に聞いている様子で、「なぜ薬を飲み続けないといけないのか」「すでに陽性と分かっていてもコンドームを使用する必要があるのか」など、色々な質問が飛び交いました。講師を務めたスティーブンさん自身もHIV陽性で、服薬を続けています。講義の最後には「服薬を続ければ長生きもできるし、孫の成長も見守ることができます。悲観的にならないで」と語りかけていました。

服薬を継続するためには、患者の家族やパートナーの協力も大切です。AAR職員とボランティアは、家族に対しても、本人がきちんと服薬できているか確認し、服薬していないようなら来院を勧めてほしいことなどを伝えています。治療を必要としている人がARV薬の服用を継続できるように、ボランティアや家族、地域の人と協力しながら、これからも支援を続けてまいります。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ザンビア事務所駐在 永井 萌子(ながい もえこ)

大学卒業後、看護師として総合病院の小児科などで勤務。アメリカへの語学留学を経て帰国後、保育園で看護師として従事。その後、AARへ。東日本大震災被災地での支援活動などを経て、2012年5月よりザンビア駐在

< 活動ニューストップに戻る

ページの先頭へ