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ハイチ:川がゴミための危機!人々の衛生に対する意識を高めるために

2014年01月10日  ハイチ感染症対策
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1月17日(金)、ハイチ駐在員の平間亮太がお話しします!活動報告会「朝カフェ de ハイチ・ぼくが国際協力をする理由-西半球の最貧国で」のお申し込みはこちらから

2010年1月に発生したハイチ大地震の直後より現地で支援を開始したAAR Japan[難民を助ける会]は、現在も活動を続けています。2013年2月からは、世界の発症件数の半数がこの国に集中しているといわれるコレラのまん延を防ぐため、学校のトイレや手洗い場の整備、学校の先生への衛生教育講習会などを行っています。長期的には地域住民も巻き込み、地域全体の衛生状況の改善を目指しています。ハイチ駐在員の平間亮太が報告します。

川は地域住民にとって貴重な水源

川岸に集まり洗濯をする人々

ハイチの人々にとって、川は生活の中心です

AARの活動の中心地は、首都ポルトープランスの郊外、カルフール地区のリビエール・フロワール。この「リビエール・フロワール」を直訳すると"冷たい小川"です。その名の通り、この地域の中心には川が流れています。

年中暑いハイチでは、川の水は体を冷やすための大切な場所であったことからこの名前が付けられたとか。この川は住民にとって貴重な水源のーつとなっています。付近を通ると、河岸にはところ狭しと女性たちが集まり、洗濯をしている姿が見えます。また、ある女の子は「これからシャワーを浴びに行く」と言うので、どこに行くのかと思えば、なんと川に向かっていきました。それだけ川は身近な生活の場となっているようです。

川がゴミ捨て場や排せつ場所に

ごみのたまった川辺

洗濯や水浴びに使われている一方で、川にはゴミの山が。家畜や人間の排せつ場所にもなっています

しかし悲しいことに、川はゴミを捨てたり排せつをする場所にもなっているのです。これは大きな問題です。トイレの普及率はこの地域では非常に低く、外で排泄する人も多いのが現状です。戸外で排せつされた汚物は雨が降ると水に溶け、やがては川へ流れ込みます。そのため川が汚染され、コレラの感染源のひとつにもなっています。この地域のコレラ感染率は雨季になると一気に上がります。

地域住民の78%が排せつ物と川の水との関連性を理解していないという調査結果が出ています。実際、先日実施した地域住民へのインタビューでは、川の水を飲み水としている家庭もあるということが分かりました。

その一方で、中には「川の水は汚いとわかっているけれど、 お金がなくて水が買えないから川の水を使わざるをえない」と言う女性もいました。「川の水を飲むのは知識がないから」とは一概には言えないようです。

衛生教育の成果で「私がきれいにする!」ほうきを取り合い掃除する子どもたち

教室で、先生の持つイラストカードを指さす児童

まずは先生に衛生教育を行い、先生から子どもたちへ伝えることで、地域全体の感染症のリスクを減らしていきます

コレラは、きちんとトイレで排せつする、排せつ後や食事前の手洗いを徹底するなど、適切な衛生行動を取れば感染を防げる病気です。AARは学校、家庭、ひいては地域全体で衛生知識や意識を高めていくことを目指しています。

AARでは、カルフール地区にある8つの小学校にトイレを建設および修繕し、手洗い用の雨水を貯めるタンクを設置しました。また、先生たちが子どもたちに対して分かりやすく、効果的な衛生教育を行えるよう、教授法についての講習会を実施しています。ハイチでは、教育省が定めるカリキュラムの中に衛生教育が含まれています。しかし実際には授業が行われていない学校も多くあります。また授業が行われていても、先生が子どもたちに対して一方通行の講義をするだけにとどまり、子どもたちに知識や学びが定着しないなどの問題点があります。こうした理由からAARでは、イラストを使ったり、子どもたちに質問を投げかけたりする「参加型」の衛生教育の手法を先生たちに教えています。これにより、子どもたちが授業に積極的に参加し、主体的に衛生教育について学ぶことができるようになります。

さらに、子どもたちが主体となった衛生活動を促進するため、衛生クラブを組織しています。クラブに所属する子どもたちが中心となり、子どもたち同士で衛生に関する知識を伝え合ったり、校内の清掃をする姿が見られています。

AARの支援が終わったとたん、トイレや手洗い場が掃除もされず、使えない状態になってしまっては意味がありません。事業が終了した後も各校が校内の衛生状況を良好に保っていくには、学校が自力で衛生管理のための予算を確保し、石けんや掃除用具などの衛生用品を購入するといった管理をしていくことが必要です。そのためAARでは、学校の担当者向けに運営管理講習会も実施しています。

プロジェクト開始から10ヵ月。以前は手洗いをほとんどしていなかった子どもたちが、トイレの後に手洗いを積極的にする姿が見られるようになりました。また、校内に衛生クラブを立ち上げたところ、「学校をきれいにしていくのは自分たちなんだ!」という自覚を持ち始めた子どもが、放課後にほうきの取り合いをしてまで教室をきれいにしようとしている学校もでてきています。子どもたちのこうした変化に、こちらが勇気づけられています。

「この地域の川は、以前は飲めるほどキレイだった」とハイチ事務所の現地職員は言います。衛生教育を支援することで、いつの日か、住民自身が生活に身近な川の汚染を防ぎ、以前のようなきれいな川を取り戻してほしいと願っています。

AARが支援をした学校のひとつ、カンディオファノール小学校の子どもたちが、AARのために歌を作って、披露してくれました。「AARのお蔭できれいなトイレが使えるよ~手を洗えて病気にならないよ~ありがとう~」という内容です。
動画の一場面

AARが支援したカンディオファノール小学校の子どもたちが、AARのために作った歌をうたってくれました

カンディオファノール小学校の子どもたちによる歌の動画はこちらから

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ハイチ事務所駐在 平間 亮太

2012年6月よりハイチ駐在。大学在学中に青年海外協力隊に参加し、2年間、西アフリカのベナン共和国でエイズ対策活動に携わる。帰国後、国際協力の分野でさらに専門的な知識を身につけるため大学院で国際保健学を学び、卒業後AARへ。北海道出身

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