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近くて遠い、故郷シリアートルコで避難生活をおくる人々の今

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望むのはただ、平和だけ

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AARの支援物資を受け取りに来たシリア難民の方々。この日は186世帯にお渡ししました(2013年9月25日トルコ・ハタイ県)

トルコ国内での避難生活の長期化と新たな難民の増加を受け、AARは、2013年9月にトルコ南部のハタイ県で600世帯へ小麦粉や豆、パスタ、調味料などの食料と、石けんや洗剤、タオルやおむつなどの衛生用品を配付しました。

このとき支援を受け取ったアブドゥラさん(仮名・42歳)は、「シリアから持ってきたお金は1ヵ月で底をつく。その前に仕事を見つけられなければ家もない危険なシリアに帰るしかありません」。そう言って肩を落とし、「ニュースでは政治や外交の話が繰り広げられていますが、毎日罪のない子どもたちが死んでい るという事実にもっと目を向けて欲しい。私たちは、ただ平和を望んでいるだけなのです」と語りました。

「世界で忘れられていないということが励みになる」

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この物資で家族8人が約2週間暮らすことができます。物資を届けたAARの雨宮知子とアブドゥラさんの子どもたち(2013年9月25日トルコ・ハタイ県)

ヌーラさん(仮名・38歳)はハタイ県の農村で夫と8人の子どもたちと避難生活を始めて7ヵ月になります。シリアでは教師をしていたヌーラさん。避難してからは夫と一緒にオリーブ摘みなどの農作業の仕事をしました。しかし、物価が日本とほとんど変わらないトルコで、2人合わせて1日25トルコリラ(1,300円ほど)の賃金では、8人の子どもを養っていくことができません。農繁期を過ぎれば農園での仕事はほとんど見つからず、わずかに持ち出せた家財道具を売りながら生活を続けざるをえません。家族全員、1日も早く故郷へ帰り、元のように暮らしたいと切望しています。

ヌーラさんは、「収入がない今、AARが届けてくれる食料や衛生用品はとても助かります。でも何よりも嬉しいのは、遠い日本からAARがわざわざ物資を持って来てくれたことです。世界のどこかで私たちシリア人のことを気にかけてくれている人がいると思うと勇気をもらえます。世界から忘れられていないと感じることができます」と語ってくれました。

キャンプの外で暮らす難民への支援

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ムスタファさん(中央)は、1年前に妻と野うに障がいのある息子(左・29歳)を含む5人の子どもたちと一緒にトルコに避難してきました。右は東京事務局の景平義文(2013年10月22日トルコ・シャンルウルファ県)

AARはトルコ南部で2012年10月より、キャンプの外で暮らすシリア難民への支援を実施しています。仕事を得られずに苦しい生活を送るシリア人の家庭に、食料品や生活必需品を配付し、トルコ語のわからないシリアの子どもたちが勉強を続けられるよう、アラビア語の教科書や文具などを提供しています。また、避難の際に車いすや補助具を持って来られなかった障がいのある方々のため、1人ひとりの体に合った車いすや歩行器などを届けてきました。

10月からは、トルコでの拠点を海外からの支援がほとんど行われていないトルコ南東部のシャンルウルファ県に移しました。同県にも経済的に困窮するシリア人がたくさん住んでおり、厳しい冬を越すことができるよう毛布や衣類などを配付する予定です。越冬用物資の配付に加えて、これまで実施してきた教育支援と障がい者への支援を同地でも行います。引き続きご支援をお願い申し上げます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 雨宮知子

2012年11月より東京事務局でシリア緊急支援事業を担当。米国の大学院在学中、ブルガリアとロシアで孤児支援に携わる。企業勤務を経て、青年海外協力隊に参加。ニカラグアでの衛生啓発活動を行った後、AARへ。大阪府出身

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