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「また来たよ!」天満敦子さんによるコンサートを東北と東京で開催しました

2014年04月11日  日本緊急支援
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震災から3年を迎えたこの3月、AAR Japan[難民を助ける会]はバイオリニスト天満敦子さんとピアニスト吉武雅子さんを迎え、東北の4会場で入場無料のコンサートを開催しました。『明日に繋ぐ祈り2014』と題したこのコンサートには合わせて約2,600名のお客様が集まり、天満さんの音楽とトークを楽しむひと時を過ごしました。昨年開催した同様の東北ツアーが大変な好評をいただき、再びの開催となりました。ツアーに同行した東京事務局の杉澤芳隆の報告です。

天満敦子ヴァイオリンリサイタル「明日に繋ぐ祈り2014」

  • 2014年3月17日 南相馬市民文化会館(ゆめはっと)大ホール(福島県南相馬市)
  • 2014年3月18日 福島市音楽堂 大ホール(福島県福島市)
  • 2014年3月20日 リアスホール(岩手県大船渡市)
  • 2014年3月21日 郡山市民文化センター中ホール(福島県郡山市)
  • 2014年3月25日 紀尾井ホール(東京都千代田区)

1年ぶりの被災地、その変化は

南相馬のステージでの演奏

南相馬市民文化センターで演奏する天満敦子さん(バイオリン)と吉武雅子さん(ピアノ)(2014年3月17日)

今回の東北ツアーの皮切りは、福島県南相馬市でのコンサートとなりました。天満さんはお母さまが相馬市の出身で、この地域には特に深い思い入れがあります。バッハの無伴奏曲から始まったコンサート、前半はクラシックの名曲が続きます。ツィゴイネルワイゼンのあと、天満さんはマイクを手にしてお客さまに語り掛けました。

「また来たいという思いが叶いました。公演前に南相馬の市長さまがお話に来てくださいました。最近はいかがですかとお尋ねしたら、『子どもたちが元気で明るくなりました。それが逆に大人への励ましになっています』とのこと。とってもうれしいお言葉でした。みんなで頑張りましょう。私も頑張ってバイオリンを弾きます」。

アンコールは「ジュピター」と「チャルダーシュ」。終演後のサイン会にはたくさんのお客さまが列を作り、興奮冷めやらぬ様子で天満さん、吉武さんと話していらっしゃいました。

音楽が人と人をつなぐ

3月20日は岩手県大船渡市での公演です。お昼頃から降り始めた雨は次第に雪に変わりましたが、悪天候のなか多くのお客さまがご来場くださいました。演奏中に一時停電するハプニングが発生。しかし天満さんと吉武さんは暗闇の中で演奏を続けました。マイクを手に天満さんがステージに戻ってきたところで照明が復旧し、一段と大きな拍手が沸き起こりました。

大学でピアノを教える吉武さんもマイクを持ちました。「昨年伺ったとき、(AARが楽器を支援したピアノ教室の)田村先生の姿に指導者としての神髄を感じました。ピアノ教室の生徒さんたちが歌ってくれた歌が、逆に私に元気をくれました。これからも音楽を通じて、皆さんと心でつながっていけたらいいなという思いを込めて、『エリーゼのために』を弾かせていただきます」。聴き慣れたはずの曲が、新鮮な音楽となって流れていきます。この公演も満場の拍手で終演となりました。

大船渡のステージ

拍手に応える天満さんと吉武さん(大船渡リアスホール、2014年3月20日)

郡山のロビーでのサイン会

終演後のサイン会では多くのお客さまが出演者に感謝を伝えていました(郡山市民文化センター、2014年3月21日)

雪が残る大船渡の街を走るバス

大船渡の街にはBRT(中央赤いバス)専用道路ができていました(2014年3月21日)

2014年4月5日、三陸鉄道の南リアス線が全線で運行を再開しニュースになりました。しかし、大船渡市の中心部を通る、JR大船渡線の気仙沼駅―盛駅間は、線路が失われ、鉄道は走っていません。代替交通手段として、BRTと呼ばれるバス輸送が行われています。大船渡市内の戸友―盛間では2013年9月から、大船渡線の線路が敷かれていた土地を利用したBRT専用道路が使われています。バス停に姿を変えた大船渡駅では、高校生がバスを待っていました。

隣の陸前高田市では、津波の被害を受け更地となった海沿いの市街地をかさ上げするために近くの山から土砂を運ぶ巨大ベルトコンベアが完成し、3月24日から稼働を始めました。昨年の天満さん東北ツアーから1年ぶりにこの地域を訪れて、大きな復興計画が動き出す息づかいを感じました。

来場者のアンケートから一部をご紹介します

  • 最近ようやく、前向きに生きると決め、4月からは若い頃に行きたかった大学の通信講座を受け始めます。次にどこかで震災があった時にとんでいけるよう準備を始めたところです。(南相馬、50代女性)
  • 震災後、何をするのも身が入らずです。こういう機会があると少しは明るくなれます。希望まではいかないが気持ちが良くなりました。自宅でひっそり不安や悩みをかかえて暮らしている人間もいること忘れないでください。仮設の人はいいなーと思う時があります。(南相馬、60代女性)
  • ありがとう本当にありがとう。すばらしかったよ。激しさ、やさしさ、悲しみ、いろいろ詰まっていた。心が明るくなりました。力がみなぎってきます。胸にあふれる感動がそうさせるのでしょう。涙と共によろこびが。また聞かせてください。きっと南相馬をいい町にします。(南相馬、70代女性)
  • 現状をどうとらえるかは自分次第で、ならば、前向きに、よい面希望を持てる面を認識して、とりあえず歩んで行くしかないと思っている。(福島市音楽堂、60代女性)
  • 大変感動致しました。お二人のお人柄が演奏に表われ、日頃の押さえた生活と感情が一気に吹き出したような気持で、後にすっきりとした不思議な気持です。ありがとうございました。(福島公演、60代女性)
  • 復興の槌音というのでしょうか、せわしなく行き交う車両の騒音のかたわらで、忙しく仕事に追われる毎日です。生かされた命、皆の楽しく和やかな生活のために使いたいと思います。(大船渡公演、60代女性)
  • 本当にすばらしく感動しました。なじみのある曲たちが、こんなにすばらしい音楽だったのか、こんな形で生まれかわるのかと思いました。津波で亡くなった姉などに聴かせたかったと今頃になって思いました。(大船渡公演、50代男性)
  • 元気が出ました。心に響きました。一見平穏そうですが、心の奥は常にざわついております。でも、天満さんの応援を頂き、また、少し歩みがしっかりした様です。(郡山公演、女性)

東京公演で東北の今を報告

東京公演のステージ

東北ツアーの印象を語る天満さんと吉武さん。左はAAR会長の柳瀬房子(紀尾井ホール、2014年3月25日 ©遠藤宏)

3月25日に紀尾井ホール(東京都千代田区)で開催されたチャリティコンサートには、約600名のお客さまがお越しくださいました。演奏の間に天満さんから東北ツアーについて報告があり、ご来場の方々それぞれが、この3年で変わったこと、変らないことに思いをはせました。当日のご寄付は191,527円、コンサートの純益は1,046,386円となりました。東北復興支援のために大切に使わせていただきます。東北ツアーおよび東京公演にご来場くださった皆さまと、開催にご協力くださった方々に心より御礼申し上げます。

※東北公演は、皆さまのご寄付に加え、カタールフレンド基金の助成を受けて行いました。また、東京公演には日本ロレックス株式会社の特別協賛をいただきました。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 杉澤芳隆

AAR Japan主任。2010年5月より東京事務局勤務。主に国内事業を担当。大学卒業後、民間会社に勤務した後、AARへ。パキスタン洪水(2010)、東日本大震災(2011)、フィリピン台風(2013)で緊急支援活動に従事。(茨城県出身)

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