東日本大震災:笑顔になる美味しいお弁当を 障がい者施設の挑戦
AARは、経営コンサルティングサービスなどを行うアクセンチュア株式会社と、東日本大震災で被災した障がい者福祉事業所の収益向上のための支援を行ってきました。今回は「売れるお弁当作り」についてご報告します。
平均1万2千円の月額工賃を上げたい
障がい者福祉事業所では、商品販売などさまざまな仕事を通して障がい者の就労を支援しています。障がい者へ支払われる賃金(工賃)は、震災前も月額平均1万2千円と不十分でしたが、震災後は商品の販売先や発注元企業も被災し、さらに少なくなりました。
そこでAARは、工賃向上につながる商品開発支援の一環として、飲食業やお弁当の製造・販売を行う事業所を対象に、人気料理研究家・浜内千波先生による料理教室を開催。2014年1月から2月に、岩手、宮城、福島の3県で行ったところ、34の事業所から職員と利用者合わせて63名が参加しました。参加者は、浜内先生から直接指導を受け、プロの調理技術に刺激を受けていました。
ついにお弁当が完成。ここからが出発
4月からは、浜内先生に学んだレシピで作ったお弁当を販売したいという、(特活)三の丸ひまわり「町家の食べ処・福わらし」 (岩手県)、(社福)ぽっけコミュニティーネットワーク「ポッケの森」(宮城県)、(社福)ほっと福祉記念会「CAFE Sweet hot(カフェ スイート ホット)」(福島県)の各事業所で、浜内先生とともに商品化に向けた取り組みが始まりました。
各事業所では、塩分や食材の計量に苦労しながらも、調理の訓練を重ねました。そして7月末、浜内先生から合格点をもらい、販売開始の準備が整いました。浜内先生は、「作り手が笑顔であることが料理の美味しさにつながります。自信を持ってやってほしい。ここからがスタートです」と、各事業所にエールを送られました。
お弁当作りを通じて得たこと
「町家の食べ処・福わらし」サービス管理責任者・阿部歩さん
「職員のみならず、メンバー(施設利用者)の方々にも浜内先生が直接ご指導くださり、一同喜んでいます。先生から美味しさの根拠を学ぶことができました。今後の調理活動に活かしていきたいです」
「ポッケの森」法人事務局・星野幸さん
「震災が起こり、機材を入れていた倉庫も津波で流され、もう弁当は作れないのではと思ったこともありました。しかし、機材も仲間も奇跡的に無事で、ここまで続けることができました。今後は、浜内先生と一緒に作ったお弁当の売り上げを伸ばし、メンバーの皆さんの工賃向上に繋げたいです」。
「CAFE Sweet hot」所長・岡部早苗さん
「震災で失ったものも多いけれど、浜内先生のように、震災がなければ一生縁のなかった方にも 沢山出会えました。先生のお人柄が親しみやすく、職員や利用者は、もっと話したい、吸収したいという気持ちでいっぱいでした。今後はこのお弁当の販売を通 じて、福島県でがんばっている事業所があることを伝えていきたいです」。
AARは、今後も障がいのある方々の工賃向上のための支援を続けます。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 山根 利江 (やまね りえ)
大学卒業後、英国の大学院で保健システム管理と政策を学んだ後、日本で看護師として勤務し、2013年5月よりAARへ。現在は東北事業とザンビア事業を担当。「障がいのある方々の声に耳を傾け、夢を実現できるよう力になりたい」。(静岡県出身)