フィリピン台風:協力して災害に強いコミュニティ作り
2013年11月に台風30号(現地名ヨランダ)に襲われたフィリピン・レイテ州。被災地の復興はまだその途上にあります。以前の状態に復旧させるだけでなく、今後の台風に強いコミュニティを作るために、AARは現地で支援活動を続けています。2014年8月には、大工と一般住民を対象とした建築講習会を開催し、家屋の修繕資材を配付しました。現地職員ライアン・ラビカニの報告です。
「災害に強い家を作る」講習会を開催
2014年8月5日と6日、レイテ州タクロバン市にある2つの地区(オールド・カワヤン、ニュー・カワヤン)で、災害に強い家の建て方を学ぶ講習会を開催しました。それぞれに約40名(大工約15名、一般住民約25名)が参加しました。
講習会ではまず、フィリピンではどのような自然災害があるか、防災のために一人ひとりはどのような備えができるかについて、参加者同士で意見を交換し、発表しました。
続いて建築の専門家が、災害に強い家を建てるための方法や、資材の適切な使い方について、講義を行いました。また実践編として、参加者全員で災害に強い家の模型を作り、学んだことを確認しました。
災害に強いコミュニティを作るためには、大工が丈夫な家の建て方を知っているだけでなく、住民自身が防災・減災について正しい知識を持っていることが大切です。今回の講習会では、住民の女性が積極的に参加しているのが印象的でした。
正しい技術と新しい材料で安全な家を
2014年8月13日から21日にかけて、AARは講習会を行った2つの地域で合わせて267世帯に建築資材を配付しました。ご近所さん同士が助け合って柱材を運ぶ様子が見られました。
また、2つの地区で、大工たちによる「大工委員会」を組織してもらいました。AARは、この委員会が講習会で学んだ知識を活かして安全な家を再建できるよう、必要な資材を提供し、工賃の一部を支援しました。委員会の大工によって、現在各地区で住宅の再建が進んでいます。
下写真右の一家は、自宅を台風ヨランダで失い、現在はがれきを寄せ集めて建てた家で暮らしています。しかしこの場所は海のすぐそばで、政府からは今後の減災のために建築禁止区域に指定されています。一家は今回のAARの支援で家を建てる材料を受け取り、海からもっと離れた安全な場所にまもなく引っ越すことができます。
フィリピンには「バヤニハン」(お互いを助け合う)という言葉があります。今回の講習会や資材配付を進めるうちに、この言葉をよく思い起こしました。講習会での意見交換や模型の建設、資材を運ぶときなどに、皆が復興と将来の防災に向けてよく協力して行動するのを目にしたからです。日本からの支援への感謝の言葉も多くの人から聞くことができました。災害に強い村作りに役立てたことをうれしく思います。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
フィリピン事務所 ライアン・ラビカニ
フィリピン・タクロバン出身。2014年1月よりAAR現地職員としてヨランダ被災地の復興支援活動に携わる。