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パキスタン:僕らは衛生キッズリーダー!

2014年10月17日  パキスタン感染症対策
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パキスタンは隣国アフガニスタンからの難民を世界で最も多く受け入れており、その数は約160万人にのぼります。難民の多くが暮らす、北西部の難民キャンプやその周辺地域は、安全な水を手に入れるためのインフラが整備されていません。トイレも不足し、屋外排せつは当たり前。大腸菌が浸み込んだ不衛生な井戸水を飲み、手洗いの習慣もないため、子どもたちは下痢や感染症で苦しんでいました。AARは2011年から現在までに、そうした地域のひとつ、ハイバル・パフトゥンハー州ノウシェラ郡の54の小学校で井戸・トイレの整備を行うとともに、感染症を防ぐための衛生教育を行っています。

「お母さんが病気にならないように、役に立てた」

ある小学校の4年生の男の子はAARの衛生教育を受けた児童のひとり。5人兄弟の末っ子です。衛生教育を受けてからは手洗いや歯磨きが習慣になり、家族にも清潔にすることの大切さを教えています。「学校で衛生教育を受けたときに先生が言ったんだ。家に帰ったら、家族のみんなに今習ったことを教えてあげなさいって」。家に帰り、さっそくお母さんに、朝起きたら毎日歯をみがくこと、そしてご飯を作る前とトイレに行った後には必ず手を洗うことを教えました。お母さんが手を洗うまではご飯を食べない、という作戦まで使ったそうです。それまでは、石けんを使って手を洗うこと、飲み水が安全でないと病気になることを知りませんでした。「ぼくはお母さんにそれを教えてあげて、お母さんが病気にならないようにした。とても役立てたと思う」。嬉しそうに言います。

コンテストの実施でやる気倍増

衛生教育を受けた児童は、学校で開催されるコンテストで、授業で学んだ成果を披露。出場した子どもたちは「衛生キッズリーダー」として低学年の子どもたちにも知識を伝えます。コンテスト形式にすることで子どもたちのやる気も倍増します。彼は今や、一緒に住む兄弟やいとこだけでなく、遊びに来たほかの村人にも衛生的な習慣について教えるようになりました。説明がわかりやすかったというお兄さん。「今はぼくも定期的に爪を切っているよ」。お父さんもそんな息子を誇らしげに見守ります。

「以前に比べて子どもたちの下痢が減った」

話を聞いて、毎週、道路の排水溝の掃除をするようになったというお父さん。お母さんにも台所を清潔にするように言っているそうです。「昔は子どもたちがよく下痢になっていたのに、以前に比べて減ったように思う」。一家は親戚もあわせて20人以上が同じ敷地に住んでいますが、トイレは3つしかありませんでした。でも今は新たに3つ作って、みんながちゃんとトイレを使えるようになりました。「私は日本の人たちにお礼を言わなきゃいけない。きみたちが来てくれたおかげで、私たち自身、そして生活もこんなに変わった。本当に感謝している」。学校で子どもたちに教えたことが、家族へ、そして地域へと広がっていく。AARは今後も衛生習慣が根づくよう、支援を続けます。

※この活動は、皆さまからのご寄付に加え、JPF (ジャパン・プラットフォーム) の助成を受けて実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

パキスタン事務所駐在 原口 珠代

日本で看護師として働いた後、青年海外協力隊に参加し、マーシャル諸島で医療支援に従事。その後、当会や他のNGOで、旧ユーゴスラビアやアフリカ・アジア諸国での医療支援や母子保健事業などに携わる。2012年2月より現職。鹿児島県出身

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