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タジキスタン:障がいがあってもなくても一緒に学ぼう

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障がい児を隔離せず、ともに学ぶ場を作るために

タジキスタンでは、障がいのある子どもは、親元を離れ障がい児のための寄宿学校で学ぶか、学校に行かずに家で過ごすのが一般的です。しかし、隔離されると社会との接点を失うばかりか、障がい者への偏見も消えません。そこでAARは障がいの有無にかかわらず、すべての子どもたちが同じ学校で学べるよう、現地の障がい者団体「ルシュディ・インクルージヤ」および「イローダ」と協力して、2014年1月より首都ドゥシャンベの第28番学校と第72番学校を拠点に活動しています。

障がい児の母親らによる直談判により、第28番学校では9年前から障がい児の受け入れを始めていましたが、バリアフリーにはほど遠い校舎でした。そこで、身体が不自由な児童が学校に通いやすいよう、2校の校舎入口にスロープを設置して段差をなくし、トイレの改修も行いました。またこの2校の教職員や保護者と児童が、さまざまな障がいのある子どもたちをスムーズに受け入れられるよう、障がいについて理解を深めるためのイベントや、教職員向けの研修も実施しています。

スロープが取り付けられた学校の玄関

第28番学校にスロープを設置しました(2014年7月30日)

手すりと引き戸のついた新しいトイレ

仕切りのないトイレが車いす対応の個室に(第28番学校、2014年5月13日)

障がい児を自然に受け入れる子どもたち

AARの貝澤に絵を見せるサブリナちゃん

サブリナちゃん(左)は車いすで第28番学校に通学しています。AARの貝澤麻衣(右)に絵を見せてくれました(2014年10月2日)

サブリナちゃん(11歳、4年生)はポリオと脳性まひにより右半身が動きませんが、母と兄に車いすを押してもらい、5年前から第28番学校に通学しています。AARが学校にスロープを設置してからは、校舎に入るのに車いすを持ち上げなくて済むようになり、トイレは一人で利用できるようになりました。「クラスメートとはボール遊びをしたり、物語を一緒に読むの。うまく読めないとき、友達がいつも助けてくれるんだ」というサブリナちゃん。明るくて、友達を作るのが上手。そんな彼女の周囲には、自然と皆が集まってきます。

学校で皆に愛され自信に

エバンゲリーナちゃんと貝澤

学校が大好きなエバンゲリーナちゃん。右はAARの貝澤麻衣(2014年10月2日)

エバンゲリーナちゃん(8歳、2年生)は脳腫瘍を患い、記憶力が弱く、落ち着きがありません。母親のタチアナさんは、娘をどこの学校に入れようか悩んでいたところ、協力団体のパンフレットで第28番学校を知り、2013年9月から通わせています。「初めはほかの子たちがどうエバに接するか、とても不安でした。でもすぐにたくさんの友達ができ、今は何も心配していません。毎日学校に通い、皆に愛されていることがエバの自信になっています。地域では障がい者に対する理解が進んでおらず、家の近所の子どもたちは未だにエバとは遊んでくれません。だからこそ、学校の友達が仲良くしてくれるのが嬉しいのだと思います」。お母さんの言葉からは、娘が学校で受け入れられ、楽しく過ごしていることへの感謝と安心感が強く伝わってきました。

先生も試行錯誤しながら

貝澤と話す先生たち

カリモバ先生(左)は障がい児の担任となり1ヵ月。試行錯誤の日々です(2014年10月2日)

一方の第72番学校は、AARの事業開始に合わせて障がい児の受け入れを始めました。カリモバ先生(1年生担当)は、2014年9月から知的障がいと発達障がいのある男児の担任です。「彼は喋ることが難しく、授業中私が教えたことをうまく発音できず、時間がかかることもあります。でも最近は、毎日上手に挨拶をしてくれるようになりとても嬉しいです」と話してくれました。最初は先生も、障がい児は障がい児だけで学ぶ方が良いと思っていたそうですが、子どもたちが彼を受け入れている様子や、彼自身の変化を見てからは、ほかの子どもたちと一緒に学ぶことが良いのかもしれないと思い始めたそうです。

ほかの学校でも障がい児の受け入れを

教職員向けの研修には、この2校以外の学校からも、これまで56校から77名が参加しました。研修後は個別の相談にも応じています。AARは、2校での前向きな変化がほかの学校にも広がるよう、今後も活動を続けていきます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

タジキスタン事務所 貝澤 麻衣

2012年12月よりAAR勤務。英国大学院修了。NGO職員としてカンボジアに駐在後、AARへ。「子どもたちから学校での様子を聞くのがいつも楽しみです」。神奈川県出身

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