ラオス:ナマズ養殖で障がい者の自立を後押し
自宅の庭で小規模起業
障がい者が仕事をし、収入を得て自立して生活することは一般的に困難ですが、ラオスも例外ではありません。この状況を変えようと、AARは現地の市民団体・ラオス障がい者協会(LDPA)と連携し、小規模な起業を支援しています。今年7月からは新たに、軽度の障がい者に比べ働く機会に恵まれることのより少ない、中程度以上の障がいがある人のために、自宅やその近くでできる事業(キノコの栽培、裁縫、ナマズの養殖)の支援を始めました。今回はナマズの養殖について報告します。
なぜナマズ?
ナマズはラオスでは日常的に食べられています。コメや肉と比べれば比較的市場の競争もゆるやかで、養殖したら近隣の住民に直接販売することが可能です。重労働も必要なく、障がいのある人にとっても取り組みやすい事業です。とはいえ、成功するには起業する本人の「やる気」が一番大切です。そこで、事業を始めるにあたって必要な経費の一部(日本円で約2,000円)は負担してもらうことにしました。事業を継続する覚悟を持ってもらうためです。
対象は概ね20代から50代の37名。まず自宅に設置する養殖用の池の作り方を指導しました。セメント製で、障がいがあっても作業がしやすいよう、縦2×横3×高さ0.8メートルの小さな池です。餌のやり方など管理の方法について講義を行った後、研修生の自宅を回って400匹ずつ稚魚を配付し、養殖を開始しました。ナマズの大きさが30センチ前後に達したら販売していく予定です。
売り上げは家計の大きな助けに
研修生の一人、ビエンチャン県に住むケオさん(42歳)は生まれつき足が不自由で、100メートルほどしか歩けません。高齢の母親と暮らし、籐や竹のかごを編んで売っていますが、毎月の食費にこと欠いてお寺で施しを受けることもしばしば。池を観察するケオさんの表情は真剣です。「ナマズが順調に育って売ることができれば、家計の大きな助けになります」。
「初めての自分のお金で、好きな服を買いたい」
知的障がいがあるウンフアンさん(40歳)は記憶力が弱いそうですが、毎日欠かさず餌をやっています。「ナマズを売って人生で初て自分のお金が得られたら、まず自分の好きな服を買いたい」。ふだん無口だというウンフアンさんは、顔を輝かせて語りました。
AARは2年半の間に、首都・ビエンチャン市、ビエンチャン県およびサヤブリー県で、このような研修を合計120人に行う予定です。今まで家に閉じこもっていた障がいのある方たちが、社会の一員として普通に暮らせる日を目指し、小さな一歩を積み重ねていきたいと思っています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ラオス・ビエンチャン事務所 岡山 典靖
2004年6月よりラオス駐在。大学卒業後、青年海外協力隊員としてバングラデシュへ。水産庁の外郭団体を経て農村開発NGOの駐在員としてネパールで勤務後、AARへ。