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パキスタン:机もいすもトイレもない!学校の環境を整える

2015年03月06日  パキスタン緊急支援
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アフガニスタンと国境を接する、パキスタン北西部のハイバル・ パフトゥンハー州。ここには、30年以上にわたって政情不安が続く隣国アフガニスタンから逃れてきた150万人もの難民が、50ヵ所以上のキャンプで暮らしています。AAR Japan[難民を助ける会]は2011年5月から、同州ノウシェラ郡の3つの難民キャンプとその近隣の村落で「小学校の増改築」と「衛生啓発活動」を続けてきました。東京事務局の柿澤福郎からの報告です。

町から離れた、ないないづくしの小学校

ハイラバードに通じる川のあと

ハイラバード地区の村に通じる川のあと。AAR事務所のある首都イスラマバードから、車で2時間半ほどの道です(2014年6月)

ノウシェラ郡のハイラバード地区の村々は、町の中心部から離れた丘陵地帯にあります。村までは道らしい道もなく、干上がった川の河床を車で辿って行きます。

床に座る子どもたち

廊下に布を敷いて座り、授業開始を待つ子どもたち(2014年2月20日)

この地区は州のはずれにあるため、州中央政府からの支援が届きづらく、小学校にも充分な教育設備がありません。教室も机・いすも足りておらず、子どもたちは廊下や校庭の地面に座って授業を受けています。また、トイレがない小学校も多く、子どもたちは学校の敷地内や周辺で排泄しています。女子児童の場合は、トイレがないために両親が学校に行かせるのを嫌がったり、早めに下校しなくてはなりませんでした。

AARはこうした教育環境を改善するため、2014年はハイラバード地区の公立小学校7校において、2教室を増築、トイレ8個を増設・新設し、図書室2室を設置したほか、既存の教室およびトイレの修繕を行いました。また、各学校の給水施設の整備も行い、3校にモーターポンプ式井戸を新設、ほかの3校では既存の井戸・給水施設の修繕を行いました。

「村の大切な水を守るため」

修繕前の井戸

修繕する前の井戸。野ざらしで衛生的ではありませんが、村人にとってはとても貴重な水源です(2014年2月11日)

一番大変だったのは、トイレや手洗い、洗面、飲用に必要な水を学校に届けることです。ハイラバード地区では、まとまった雨が降るのは夏期の約1ヵ月だけ。年間を通して乾燥している地域です。丘陵地帯に点在する村々では、まれに山の中で湧き出している貴重な水源が見つかると、村人たちがお金を出し合って井戸を建設し、村の共有財産として管理しています。この共同の井戸から村までは給水パイプが引かれていますが、村の小学校までは水が来ていない場合が多く、今回モト・パティ村でAARが支援した学校にはトイレも手洗い場もありませんでした。

私たちはまず、学校のための水をどのように手に入れるのがいいか、村の長老たちに相談しました。すると、地下水すら乏しい乾燥地域であるため、新たに井戸を掘削することには反対されてしまいました。村人たちは、村のための水を守りたいという気持ちと、子どもたちにより良い学習環境を与えてあげたいという気持ちの間で揺れていました。私たちは学校の先生とともに長老たちと話し合いを重ね、まずは村の井戸を整備して水源を確保したうえで、そこから学校に水を分けてもらうことにしました。長老たちは、当初は村の水を学校に分けることにも不安な顔をしていましたが、「子どもたちが学校で過ごしやすいように」と、賛成してくれました。

村の共同の井戸は野ざらしで、雨水やゴミが入ってしまう不衛生な状態でした。AARは金属製のカバーを取り付けて雨や砂から守り、傷んでいた側壁の石積みはコンクリートで補強しました。また修理や管理が簡単にできるように、井戸内部に入れる扉も設置しました。

2014年9月、工事は無事に完了し、村人が共有する井戸は新しい形でよみがえり、小学校にはトイレと水飲み場が作られました。修繕された井戸を前にして、村の人たちは、「子どもたちのためにも、この井戸をしっかりと維持管理していきたい」と力強く話してくれました。

修繕後の井戸

修繕された井戸。金属製のカバーをつけ、雨や泥が入らないようにしました(2014年10月15日)

井戸のメンテナンス用の扉

メンテナンスができるよう、井戸の内部に入れる扉を設置(2014年10月15日)

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 柿澤 福郎

中学時代に旧ユーゴ紛争をテレビで見たのをきっかけに、大学院で世界各地の紛争問題について学ぶ。2013年5月よりAARへ。アフガニスタン、パキスタン事業などを担当。趣味は山登り。

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