バヌアツ:サイクロンから3ヵ月 離島の村に医療を届ける
今年3月13日から14日にかけて大型サイクロンに襲われた南太平洋の島国・バヌアツ。人口の半数以上の16万6千人が被災するという大きな被害を受けました。AARは被災4日後から現地に入り、首都ポートビラのあるエファテ島東部の村々で、306世帯(約1,530人)に衣類や生活用品などを配付しました。現在は現地協力団体「VFHA(Vanuatu Family Health Association)」を通じて、医療支援を行っています。5月にバヌアツに出張した角谷亮の報告です。
病院のない村々を医療スタッフが巡回
私がサイクロンの直後にバヌアツに入ったときには、屋根や壁が吹き飛ばされた家がまだたくさんありました。被災から2ヵ月後に再訪すると、家の修繕は住民自身の手でほぼ完了しており、畑の緑も復活しつつありました。しかし、医療へのアクセスや衛生面ではまだたくさんの課題があることもわかりました。
AARは現在、現地の医療団体VFHAの協力を得て、サイクロンで大きな被害を受けた6つの島で巡回健診を行っています。
そのうちの一つであるエピ島は、83の島からなるバヌアツの中では比較的大きな島で、首都ポートビラから定期船も出ています。しかし、人々が暮らす集落から島内の医療施設までは車で1時間以上もかかるという課題がありました。急病や出産の際は、命取りになることもあります。また、病院が遠いので普段はなかなか行けないという方も、看護師が自分たちの村まで来てくれれば、健康に関する相談をすることができます。VFHAの医療チームはエピ島に5月15日から1週間滞在し、妊婦健診やHIV検査のほか、マラリア、下痢、腹痛の診療を行いました。
安全な出産のために
5月17日には、VFHAが派遣した看護師が、ポンゴビオ村に住むマルタさんの出産に立ち会いました。この村では病院が遠いため、ほとんどの場合、出産は自宅で行われてきました。衛生的とは言えない環境で出産しなければならず、お母さんたちの不安は大きかったそうです。「今回は看護師さんがいてくれてよかった」と、家族はほっとした様子で笑顔を見せてくれました。
AARは4月~7月にかけて、エピ島のほか、被害の大きかった5つの島での巡回健診を行っています。タンナ島では、「看護師さんがこうして私たちの島まで来てくれたのは、イギリスとフランスの共同統治から独立(1980年)して以来初めて」と大変喜ばれました。AARは今後もVFHAと協力しながら、こうした離島での巡回健診を続けるほか、水の入手が難しい地域でのタンクの設置などの支援を検討しています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 角谷 亮
大学卒業後、在外公館派遣員として2年半勤務。2007年9月にAARに入職し、タジキスタン、南スーダン、ハイチ、トルコでの駐在を経て、現在は東京事務局でバヌアツ事業などを担当。