東日本大震災:リコーラグビー部新入社員の皆さんが釜石でボランティア
「NGOって?」「地雷って?」AARの活動を初体験
AARでは、2013年より株式会社リコーの新入社員向けの社会貢献活動実習に協力しています。3年目となる今年は4月20日(月)から24(金)の5日間、同社ラグビー部の新入社員5名を受け入れました。NGOの概要や、AARが各国で行う地雷対策や障がい者支援、感染症対策などについて学んだほか、4月22日(水)~23日(木)にはAARが活動する岩手県釜石市の被災地でボランティア活動を行ったり地元の方々と交流しました。
ラグビーの街「釜石」へ
初日と2日目はAARの活動や東日本大震災の被災状況などについて学び、3日目の4月22日、いよいよ東北の被災地へ。朝の新幹線に乗り、新花巻で乗り換え、お昼過ぎに岩手県釜石市へ到着。まずはラグビーカフェ・クレスト鵜住居(うのすまい)を訪問しました。
釜石市は2019年に日本で初めて行われるラグビーワールドカップの開催都市のひとつに選ばれましたが、このカフェはそのための誘致活動の拠点となった場所です。スタジアム建設予定地のすぐそばの旅館「宝来館」の1階にあり、ラグビーワールドカップ2019を成功させるための取り組みについて知ってもらう場ともなっています。東日本大震災で大きな被害を受けた釜石市の方々がラグビーを通じて復興しようという姿に、新入社員の皆さんもおおいに感銘を受けた様子。釜石でのワールドカップをいかに盛り上げるか、ラグビーカフェ・クレスト鵜住居の代表・廣田一樹さんと熱心に議論を重ねていました。
「何より自分の命を守ること」
その後、東日本大震災の発生直後から被災者の救助活動に関わった釜石市鵜住居地区の消防団員・前川智克さんからお話を伺いました。震災直後の、死と隣り合わせの救命活動や生々しい現場の様子を、新入社員の皆さんは熱心に聞いていました。前川さんの、「他人よりもまず自分の命を守ること。自分の命を守らなければ他人の命も守れない」という言葉に、深くうなずいていました。
未来のラグビー選手を育てるぞ
同日午後6時からは、釜石のラグビークラブ「釜石シーウェイブスRFC」のジュニアチームのナイター練習に参加しました。出迎えてくれたのは、幼稚園児から高校1年生までの約30名の子どもたち。震災で家族や友人を失った子どもたちもいます。震災後はグラウンドも避難所となり、なかなか練習を再開できませんでしたが、2年前からやっと現在のグラウンドで練習できるようになりました。
事前に考えてきたメニューを中心に、グループに分かれて練習を行いました。釜石シーウェイブスRFCの新人ダラス・タタナ選手も助っ人としてご参加くださいました。東京からはるばるやってきたトップリーグのラグビー選手たちの前で、最初は緊張気味の子どもたちでしたが、「いいよ!」「よし、うまいぞ」などの新入社員の皆さんの上手な声がけにすぐ笑顔になり、元気いっぱいグラウンドを走り回っていました。ジュニアチーム・キャプテンで小学6年生の及川勝陽くんは、「とっても楽しかった。基本的な動きを普段からしっかり練習することが大事なんだとわかった」と嬉しそうに話してくれました。
福祉施設の畑でボランティア
翌23日は朝からAARが支援する福祉作業所、NPO法人「かだっぺし」と「まりん」が所有する畑作業をお手伝いしました。「かだっぺし」と「まりん」は、障がいのある方々や、震災をきっかけに引きこもってしまった方々などへ、活動や働く場を提供しています。
同団体は、釜石シーウェイブスRFCの応援商品を製作したり、畑で「からむし」※という野菜を育てるなどの活動を行っていますが、今回は畑の土壌作りにと、石をどかしたり雑草を抜くなど手間と力の要る作業を行いました。リコーの皆さんは、得意の力仕事を手分けしながら行ってくださいました。
お昼には施設利用者の皆さんも参加し、施設の方々による手作りのまつも汁とおにぎりで楽しいひとときを過ごしました。釜石の方々に歓待を受けた新入社員の皆さんは感激していました。
※イラクサ科の多年草。茎からは丈夫な靭皮繊維が取れ、葉は機能性食品などの材料となります。
実習の感想を皆さんに伺うと、「あっという間の一週間でしたが、多くを学ぶことができました」「普段自分が何気なく過ごしているときでも世界はこんなにも動いているんだと感じました」「これから自分に何ができるかを考え行動したい」と嬉しいお言葉をいただきました。今後の社会人生活の中で、今回の実習が役立つことを願っています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 伊藤 美洋
1996年よりAARで広報を担当。大学を卒業後、4年半の企業勤務を経て1996年よりAARへ。3児の母。