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地中海密航船調査報告:命を懸けて渡った先に

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シリア、アフガニスタンなどの政情が不安定な国々から、2015年前半だけでおよそ10万人がイタリアやギリシャなどの地中海沿岸諸国に密航の形で逃れ、今年に入ってすでに2,000人近くが死亡または行方不明となっています。2015年末までに20万人が密航すると予測され、犠牲者のさらなる増加も懸念されています。そこでAAR Japan[難民を助ける会]は姉妹団体の社会福祉法人さぽうと21と合同で、6月21日から30日までイタリアとギリシャに、元読売新聞アメリカ総局長の山田寛さぽうと21理事、元在英国日本大使館公使の水鳥真美AAR理事と筆者から成る調査団を派遣。同時期に柳瀬房子AAR会長と吹浦忠正さぽうと21理事長がベルギーで調査を行いました。

イタリアから、経済危機のギリシャへ

トルコ沿岸に位置するレスボス島

トルコ沿岸に位置するレスボス島(2015年6月27日)

まずイタリアのローマやシシリー島で、国連機関や赤十字、現地NGOを訪問。そこでイタリアに密航してくる人々の現状と支援体制について聞き取りました。イタリアでは政府機関やNGO、市民ボランティアなどが懸命に受け入れ支援をしていますが、近年急増しているため支援が足りないということでした。次いで、イタリア以上に支援が不足していると聞いたギリシャの中でも、特に密航者が多く上陸するレスボス島に向かいました。

1日に200~300人が押し寄せる島

窮状を見かねた町の人たちは、密航者のためにテントを張るなどしていますが、とても足りません

窮状を見かねた町の人たちは、密航者のためにテントを張るなどしていますが、とても足りません(2015年6月27日、モリボス)

現地入りして、ギリシャの状況がイタリアとは非常に異なる状況にあるのは一目でわかりました。空港から街への道中にも、街の中にも密航者が溢れていたのです。以前からこの島はトルコからの密航ルートであったため、月に100人ほどがたどり着いていましたが、最近は1日に200〜300人が押し寄せ、5月だけでも7,300人に上っていました。

海上警備隊に保護された密航者の多くは、トルコとの距離が約6キロと最も近い、島北部にあるモリボスに連れてこられますが、水も食料も受け取ることはできません。窮状を見かねた町の人たちが、雨をしのげる場所や水などを自費で提供していますが、とても追いつかない状況です。さらに密航者たちは上陸許可を取ることができる南東部ミティリニ近郊の登録所まで、約70キロを徒歩で移動しなければなりません。公共交通機関は密航者を乗せると違法になるため、利用することができないのです。高齢者も障がいのある人も、峠を越えていかねばなりません。地元の人によれば、なかには子どもや妊婦もいるということでしたが、道中も食料や水、宿泊施設などの支援はほとんど受けられません。

密航者のなかには障がいのある方もいます

密航者のなかには障がいのある方もいます(2015年6月28日)

さらにやっと登録所にたどり着いても、一時保護施設は定員オーバー。敷地内を外からのぞくと、簡易テントが建てられていました。このテントにすら入れず、野宿する人の姿も。食料の配布もほとんどなく、どこかから調達してこなければならないとのことでした。

こうした密航者のなかには豊かな暮らしを求めている経済難民もいますが、多くがシリアやアフガニスタンの紛争から逃れてきた人たちです。経済危機の影響もあり、今後も公的支援を受けられるかどうかは不透明です。AARとして、こうした苦境にある人たちを支援するため、準備を進めています。

70キロの道のりをひたすら歩く密航者たち

70キロの道のりをひたすら歩く密航者たち(2015年6月28日)

緊急募金にご協力ください

AARは、保護者のいない子どもたちに食事の提供などを行っている現地NGO・メタアクションを通じて、支援を開始します。募金の受付を開始しました。どうぞご協力をお願いいたします。

郵便振替: 00100-9-600 加入者名: 難民を助ける会
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【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 五十嵐 豪

2009年8月より東京事務局で支援事業を担当。ハイチ大地震、東日本大震災、フィリピン台風などで緊急支援活動に従事。東京都出身

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