シリア難民支援:人生を切り拓く手助けを
AARはトルコ南東部のシャンルウルファ県で、シリアから逃れてきた障がいのある難民の人たちへの支援を行っています。現地でこうした支援をしている団体はAARのほかには一つしかなく、いまだ多くのシリア難民が車いすなどの補助具やリハビリテーションを必要としているからです。
アビンさん(21歳・仮名、右写真)は、シリア北部のアレッポ出身。両親を幼いころに失い、15歳から兄弟姉妹を養うため、農場で働いていました。しかし今年4月、アレッポ市内を歩いていたときに戦闘に巻き込まれて流れ弾に当たり、左足を負傷しました。現地で手術を受けましたが、完治しないままシリアから逃げざるを得なくなり、9月末、兄に背負われて国境を越えました。6カ月が経った今も、足は腫れていて痛みがあり、歩くためには松葉杖が必要な状態です。AARスタッフで理学療法士の大室和也(右写真・左)は最低でも6カ月のリハビリが必要とみて、アビンさんに自宅でもできるトレーニングの方法を教えました。アビンさんは、「けがをする前と同じように歩けるようになりたい」と日々のリハビリに意欲を見せていました。
ガリアさん(30歳・仮名、左写真)は、生まれつきの脳性まひのため、筋肉が萎縮しています。シリア北東部の都市、デリゾールから10カ月前に逃れてきました。ガリアさん一家は故郷では高級食器店を経営していましたが、いまは外国にいる親戚から送られてくる、わずかなお金で生活しています。ガリアさんの足となる車いすも、シリアから持ってくることはできませんでした。そこでAARは、ガリアさんの体の大きさに合う車いすとトイレ用のいすを提供するとともに、車いすの正しい座り方を指導。ガリアさんの母親は「この車いすで、娘を歯医者に連れていくことができる」と喜んでくれました。シリアでは障がいがあるために学校に受け入れられず、社会から閉ざされた生活を送っていたというガリアさん。AARが現地で運営しているコミュニティセンターはバリアフリーで、今後は障がいのある人も一緒に参加できる活動を計画しており、ガリアさんはこの車いすを利用して参加したいと考えています。
AARはこれまでにシャンルウルファ県、ハタイ県、キリス県で、369人に車いす、歩行器などの補助具を提供。そのうち73人を対象にリハビリテーションや補助具の使用方法を指導しました。戦闘に巻き込まれた人、生まれつき病気を患っている人、障がいのある人たちの事情はさまざまです。困難な状況で生活するシリア難民のなかでも、障がいがあるために、さらに過酷な生活を強いられている人たち。脆弱な立場にありながら、補助具やリハビリを助けとして、自分の人生を切り拓いていこうとする方々と接していると、今後も継続してAARが支援していくことによって、少しでも新たな生活へのサポートができればと強く感じます。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 栁田 純子
2013年5月よりシリア難民支援事業を担当。7年間、トルコでピアノ教師として働いた後、AARへ。東京都出身