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東日本大震災:自然に囲まれ笑顔が溢れる「ワクワク子ども塾」開催しています

2015年12月25日  日本緊急支援
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放射線量を気にせずのびのびと

AAR Japan[難民を助ける会]は、高い放射線量の影響により、屋外で遊ぶ機会が減ってしまった福島県の子どもたちと保護者を対象に、「西会津ワクワク子ども塾」を開催しています。このイベントは、狭い仮設住宅などの環境から離れ、放射線量の低い地域でのびのび過ごしてもらおうとAARが独自に企画し、2012年7月より継続して行っている1泊2日の合宿です。親子一緒に楽しめるイベントとして何度も参加したいと言われるほど人気があります。2015年度は第15回を6月6・7日に、第16回目を10月17・18日に開催しました。

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ワークショップに参加した子どもたちと保護者の皆さま(右手前がAARの浅野武治 2015年10月17日)

「わくわく子ども塾」の開催場所

イベント開催地の福島県西会津町は、会津若松市から西へ約30キロ、福島県と新潟県の県境にある人口約7000人の自然豊かな町です。空間放射線量も毎時0.08マイクロシーベルト前後と、関東地方とほぼ変わらない低水準を維持しています。宿泊場所でもある西会津町唯一のホテル「ロータスイン」は、コテージやバーベキューハウスが併設されており、館内には温泉施設、目の前には温水プールや体育館などの運動公園があります。またワークショップは町内にある「国際芸術村」や「こらんしょ村」といった施設を使って行います。

蕎麦打ちにかかし作り・・・さまざまな体験に挑戦

10月のワクワク子ども塾には、相馬市、南相馬市、伊達市から子ども15名と大人12名の合計27名が参加。地元の西会津町の親子も参加してくださいました。初日のお昼は、地元の蕎麦打ち名人の木村芳主(よしかず)さんをお招きし、つなぎの小麦粉を使わない十割蕎麦打ち体験に挑戦しました。名人の手ほどきを受けながら親子一緒に生地をのばし、慣れない手つきで蕎麦包丁を握り、緊張の面持ちで蕎麦打ちをする子どもたち。太さや長さはマチマチでしたが、自分で打った蕎麦は格別だったようです。「うどんみたいに太い!」「歯ごたえありすぎー」という声も聞こえ、子どもたちは十割蕎麦の香りと美味しさに魅了されていました。みんなお替わりをいっぱいして、蕎麦はあっという間になくなりました。

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お母さんの見守る中、生地をのばします(2015年10月17日)

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いっぱい食べました(2015年10月17日)

続いては屋外で西会津町国際芸術村のスタッフによる「かかし作りワークショップ」。皆でオリジナルのかかし作りを楽しみました。子ども以上に大人たちが盛り上がり、創造性豊かなかかしの数々が生まれました。

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「のこぎり初めてだからうまく切れない」(2015年10月17日)

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ハロウィン仕様のかかしができました(2015年10月17日)

夕方には親子一緒に夕飯の準備。普段包丁を触ったことがない子どもも、お母さんに教わりながらぎこちない手つきで食材を切ってくれました。調味料を合わせたり食材を漬け込むなど、楽しみながら準備を進めてくれました。

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「よく混ぜてね」右はAARの浅野武治(2015年10月17日)

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お父さんに見守られ、ニンジンの皮むきに挑戦(2015年10月17日)

2日目は、朝食後にAARの活動紹介を行いました。スーダン駐在員の小田佳世が、赴任しているスーダンの様子を紹介しました。地雷の恐ろしさや地雷から身を守る教育の大切さを説明すると、子どもたちは真剣な眼差しで聞き入っていました。

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地雷について説明するAARの小田佳世(左)。小田が駐在するアフリカのスーダンには地雷がたくさん埋まっています(2015年10月18日)

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「スーダンはここだ!」地図で確認します(2015年10月18日)

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2日目のワークショップは国際芸術村で行いました。廃校となった木造校舎を活用した施設です(2015年10月18日)

その後、国際芸術村に移動。廃校となった木造校舎に海外から芸術家を招き、住居を兼ねたアトリエとして活用し、芸術を通した国際交流などの拠点として2004年に開村した施設です。

お昼は芸術村で地元の方々が作った簡易ピザ窯で、ピザ生地に好きな材料を乗せてオリジナルピザを作り、美味しくいただきました。

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素朴なピザ窯でピザを焼きます(2015年10月18日)

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いろいろな具材をのせたオリジナルピザ(2015年10月18日)

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西会津の自然の中で元気に遊ぶ子どもたち。干し草のうえでジャンプ!(2015年10月18日)

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「こんなに走ったのは久しぶり」。鬼ごっこでおおいに盛り上がりました(2015年10月18日)

「本当はもっと自然と触れ合って子育てがしたい」親子のために

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西会津の自然に囲まれ、笑顔がこぼれる子ども(2015年10月18日)

東日本大震災から4年9ヵ月が過ぎました。西会津で元気に遊ぶ子どもたちを見ていると、原発事故などなかったかのように思えます。しかし、子どもたちは自宅に戻れば今も目に見えない放射性物質を気にして土遊びや山登りや海水浴を避けたり、地元の食材を食べられなかったり、日々続く除染の光景を見ながら、こ れからの生活に不安を感じて暮らしています。そして、保護者の方々は、そうした子どもたちの将来の精神的また身体的な影響を心配されています。

「本当はもっと自然と触れ合って子育てをしたい。この合宿に参加したお蔭で、久しぶりに空気を思い切り吸えた気がしました」と語ってくれたお母さんの言葉が、今も胸に残っています。
「高速道路が開通するなど目に見えて復興が進んできたのは良いことだが、もう安全だ、(放射能など)気にするなと言われても、調べてみれば正直安全では無いと分かる。何年か後に(地元に残ったことを)後悔するかもしれない」と語ってくれたお父さんの寂しそうな表情が今でも忘れられません。

最後に、参加者からのアンケートを一部ご紹介させていただきます。
「何度か参加して子ども同士が仲良くなり、地元に戻っても会って遊ぶようになった」
「一人っ子ということもあり、なかなか友達と遊ぶ機会がなく引っ込み思案だったが、西会津ワクワク子ども塾に参加してから社交的になり本当によかった」
「家に帰ってから、まだ西会津にいたかったと泣かれました」

西会津の自然の中で、子どもたちが心を開きのびのびと遊んでいる様子を見ると、このイベントの意義を実感します。来年は2016年2月20・21日に第17回目を開催予定です。雪の西会津を子どもたちに思いきり堪能してもらいます。次回のレポートもどうぞお楽しみに!

※この活動は、公益財団法人住友財団からの助成と、キッコーマン株式会社のご協力により実現しました。また、地元西会津町の皆さまにもイベントの企画から会場の手配や設営など、さまざまな面でご尽力いただきました。ご協力くださった皆さまに心より御礼申し上げます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

AAR東京事務局 浅野 武治

2011年11月より国内事業担当として、東日本大震災被災地支援や、国内でのイベントの企画・運営に携わる。調理師やステージマネージャーなどを経て、東日本大震災緊急支援のためのチャリティコンサート「故郷」(2011年5月)の運営に携わったことをきっかけにAARへ(東京都出身)

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