日本の高校生とシリア難民の子どもたちとの心の交流
「日本から私たちの幸せを祈ってくれているの? ありがとう!」
今年2月、頌栄女子学院高等学校(東京都港区)1年生の皆さんからAAR Japan[難民を助ける会]に、「シリア難民の子どもたちへ」とメッセージボードが届きました。当会職員の穂積武寛が同校で、トルコで避難生活を送っているシリア難民のことや、AARの支援活動のことをお話させていただいたのがきっかけです。AARがトルコのシャンルウルファで運営しているコミュニティセンターでは、シリア難民の子どもたちにトルコ語やアラビア語の講座や、絵画、音楽などのイベントを開催しています。センターに通う子どもたちに贈りたいと、生徒の皆さんで話し合って作ってくれたそうです。
ボードには、「避難生活は大変だと思いますが、健康に気を付けて頑張って下さい」「日本から皆さんのことを応援しています」「いつも皆さんのことを考えています」といったメッセージが、同校生徒さんの写真や、かわいいイラストと一緒に貼り付けられていました。
今年3月のトルコ出張の際、メッセージの英訳をつけて、このボードをコミュニティセンターに持っていきました。自身もシリア難民である当会のシリア人スタッフは、奉仕委員会の皆さんの思いがこもったボードに大感激。すぐにアラビア語に翻訳し、センターに通う子どもたちに見せました。
すると、「日本から私たちの幸せを祈ってくれているの?なんていい人たちなの!」とみんな大喜び。お礼をしたい!と、今度は子どもたちがメッセージボードを作ることに。「遠い日本から、私たちの幸せを祈ってくれてありがとう」「日本の皆さんも元気でいてください」などの寄せ書きに、先生がイラストや写真もつけてくれました。なかには、紛争のせいで学校に行けず、文字がまだ書けない子もいました。その子のメッセージは、シリア人スタッフが代筆しました。
「シリア難民のことが身近に感じられます」
そして7月。トルコから持ち帰った子どもたちからのメッセージボードを持って、再び頌栄女子学院へ。ボードをお渡しするとともに、このメッセージを寄せてくれた子どもたちひとりひとりの、シリア時代の思い出、紛争の記憶、トルコでの難民としての生活を報告しました。「シリア難民の子どもたちにもひとりひとりの生活があり、私たち日本人と何も違いがないということが分かりました。シリア難民の方々を身近に感じることができるようになりました」と先生は語ってくださいました。
後日、生徒の皆さんから感想文をいただきました。一部ですが、ご紹介させていただきます。
●自分たちのつくったメッセージカードが現地の人にとってこんなに支えになるとは思いませんでした。小さな力が現地の人にとって大きな力となるなら、このような企画を何回でも続けてほしいと思いました。
●遠い国からの支援となると食料や物資の配付しか思いつかなかったけど、このような精神的な支援もできると知りました。シリアの子たちからのメッセージのお返しにたくさんの上手な絵と、がんばって日本語で書いてくれた「ありがとう」の文字、そして「日本にいつか行きたい」「日本語を学びたい」と書いてくれて嬉しくなりました。
●受け入れ国でかんげいされなかったりして、不安を感じている中、どれほど多くの人が難民を助ける会の方々にすくわれただろうと考えると、私たちも少しでも自分たちのできることをしたいと思いました。
私は年数回のトルコ出張で、多くのシリア難民の方々と接します。大勢のシリア難民の方々と接してきましたが、多くの方が「私たちのこと、シリアで起きていることをどうか忘れないで」と訴えます。遠く離れた日本とのメッセージの交換は、シリアの人たちにとって大きな励ましにもなります。日本の高校生の温かい思いやりは、厳しい避難生活を送るシリア難民の子どもたちの心の奥深くまで届いていることでしょう。この絆を深めていけるよう、これからも交流をサポートしてまいります。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 柳田純子
2013年5月より東京事務局で、シリア難民支援の中でも特に障がい者支援の事業を担当。年数回はトルコに長期滞在し、障がいのあるシリア難民の方たちと触れ合う。7年間、トルコでピアノ教師を務めた経歴も。