ハイチ:子どもたちが平等に教育を受けられる社会を目指して
カリブ海に浮かぶ北海道の3分の1程の面積を持つ国、ハイチ共和国。ハイチ教育省特別教育・社会的支援委員会によると、ハイチでは約1千万人の人口のうち、12万人以上が障がい児であると言われており、そのうち約2%しか適切な教育を受けられていません。AAR Japan[難民を助ける会]はハイチの首都ポルトープランス市で、2015年3月から障がい児のためのインクルーシブ教育(障がいの有無、人種や言語の違いなどにかかわらず、すべての子どもたちがそれぞれの能力やニーズに合わせて受けられる教育)を推進してきました。2016年4月からは日本人の駐在員は常駐せず、ハイチの障がい者支援団体を通じ、支援を続けています。
昨年から、AARはハイチで40年以上知的障がい児支援を実施している現地団体「特別教育センター(Centre d'Education Speciale)」と協力し、ポルトープランス市内の小学校4校の教員に対し、インクルーシブ教育や障がい児支援の基礎を学ぶ研修を実施してきました。2016年8月には、さらに実践的な内容を含んだ3日間の研修を同じ教員を対象に実施しました。参加者した教員たちは、障がいの種類に合わせた指導方法や障がい児の保護者との連携の仕方など、障がいがあってもなくても、ともに学べるような教育環境づくりの具体的な方法を学びました。
研修に参加したダニエル・アン先生は、「ハイチでは障がい児が教育を受けられる機会が限られています。私たち教員も障がい児がクラスにいてもどうしていいかわかりませんでした。AARのおかげで障がい児を指導することに自信を持つことができました」と話してくれました。また、支援校4校に通う障がい児の保護者8名を研修に招待し、実際に障がいがある子の保護者はどのような不安や課題を抱えているのかを話してもらい、教員たちと共有しました。
AARの支援校の一つ、リシェルシュ・デュ・サボワール校に通い始めた軽度の知的障がいのあるマーヴェンス君(7歳)には嬉しい変化が現れました。マーヴェンスくんは、通い始めた当初、学校に馴染めませんでした。でも、今ではたくさんの友達ができ、元気に学校に通っています。
マーヴェンスくんのお母さんは「リシェルシュ校に通い始めてから、学校の先生や近所の人にきちんと挨拶できるようになり、算数やフランス語も少しずつできるようになってきました。以前には考えられなかったマーヴェンスの変化にとても驚いています」と嬉しそうに語ってくれました。
AARはこれからも障がいの有無に関わらず、子どもたちがともに学べる環境作りに努めていきます。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 池上亜沙子
2013年8月から2015年11月までAARハイチ事務所駐在。英国の大学院で教育政策と国際開発を研究し、AARへ。現在は東京事務局でハイチ事業などを担当。宮城県出身