活動ニュース

障がい者が活躍していける社会の実現に向けて

2017年12月25日  障がい者支援
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2017年11月16日から17日にかけて、障がい者支援に関する国際会議「第2回世界障がいリハビリテーション会議2017」がスリランカのコロンボで開催されました。AAR Japan[難民を助ける会]からは、障がい者支援に取り組んでいるミャンマー・パアン事務所の松島拓と東京事務局でタジキスタンでの障がい児支援を担当する宮澤明音、ミャンマー・パアン事業を担当する生田目充が参加しました。また、それに先立ち、AARが以前支援していたスリランカの障がい者団体を訪問しました。以下、生田目充による報告です。

障がい者の社会参加を促進するために

多くの参加者で賑わう会議場

会議には約60名が参加しました(2017年11月16日)

障がい者支援に取り組む人たちにとってのプラットフォームとして開催された本会議には、各国の研究者やNGO、障がい当事者など約60名が参加し、CBR(Community Based Rehabilitation/地域に根差したリハビリテーション)や障がい者の雇用、障がいの有無に関わらず子どもたちが一緒に 学ぶ「インクルーシブ教育」といった多岐にわたるテーマにおいての取り組みが発表されました。障がい者の権利促進に向けたコミュニティ開発における戦略の一つであるCBRのセッションでは、ヨルダンやインドにおける事例が紹介され、どのようにすれば障がい者の社会参加をより促進することができるかについて意見が交わされました。会議2日目には、AARがタジキスタンで実施しているインクルーシブ教育推進事業についてのポスター発表を行いました。聴衆は研究者が多く、インクルーシブ教育の実践者として地域住民や行政を巻き込んだAARの活動に関心を持ってもらうと同時に、活動を対外的に周知する機会になりました。

ポスターを使ってタジキスタンでの活動について説明するAARの宮澤明音

タジキスタンでの活動について説明するAARの宮澤明音(左)(2017年11月17日)

ステージで贈呈者と握手を交わす宮澤

ポスター発表の表彰を受ける宮澤明音(右端)(2017年11月17日)

障がい者に寄り添う伴走者

車いす工房で車いすの製造を見学するAARの松島拓

車いす工房を見学するAARの松島拓(中央)(2017年11月14日)

本会議に先立ちスリランカの障がい者支援団体を訪問しました。スリランカ障がい者リハビリテーション財団(SLFRD:Srilanka Foundation for the Rehabilitation of the disabled)は、以前AARがスリランカで支援活動を行った際に協働していた障がい当事者団体です。AARは、2011年までスリランカにおいて、スマトラ島沖大地震によるインド洋大津波の被災者支援や内戦後の障がい者・地雷被害者支援などの活動を行っていました。

SLFRDは現在、コロンボ市内で車いす工房の運営や、南東部のモナラーガラ県で障がい者の生計支援を行っています。車いす工房では、車いすをはじめ、障がい者のニーズに即したさまざまな補助具が、障がいのあるスタッフによってオーダーメイドで製造されているなど、長年の活動を通じてスリランカにおける障がい者のエンパワーメントや権利向上に大きく寄与していることが伺われました。

AARは、ミャンマーのカレン州で、障がい者とその家族が日常生活で直面する課題を地域住民とともに解決できるコミュニティ形成を目指して活動しています。今回の出張を通じて、障がい者が役割を持ち活躍していけるインクルーシブな社会を実現するためには、障がい当事者による活動と「伴走者」の存在が重要であることを再認識しました。例えば、日本においてはハンセン病患者・元患者が設立した全国ハンセン病患者協議会(現・全国ハンセン病療養所入所者協議会)の当事者運動により、政府や社会に働きかけることで、ハンセン病に対する差別問題が解決に向けて動き出し、地域コミュニティとの壁を壊していく契機となった歴史があります。未だハンセン病に対する差別は現存しており、地域コミュニティとの壁が完全に取り払われたわけではありませんが、当事者運動によって社会を動かした事例であることを思い起こしました。そして、その横には当事者に寄り添い伴走する人々の存在がありました。
スリランカにおいても、地域に設立された障がい者による自助グループを、SLFRDが伴走者として生計向上の取り組みを行うなど、障がい者が役割を持ち、主体的に生きていける社会づくりが少しずつ進んでいます。SLFRDを見学し、AARは障がい者および障がい当事者団体と伴走するパートナーであると同時に、地域コミュニティに働きかけることで、その他多くの伴走者を形作っていくことを目指していかなければならないと改めて認識する機会となりました。

本出張でできたネットワークと学んだ知見を活かして、今後も、障がいがあってもなくても、ともに支えあうことのできる社会の実現に向けて、引き続き活動に邁進していきたいと思います。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 生田目 充

大学時代、中国のハンセン病の元患者が暮らす隔離された村でワークキャンプを開催するサークルに所属。4年間で10度にわたり同村を訪問し、周囲の理解促進や差別の解消に取り組んだ。物流会社に勤務した後2016年4月、AARへ。趣味はサッカー、読書。茨城県出身

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