ウガンダ:ひとりでも多くの子どもが学べるように
2013年12月から続く南スーダン国内の政治的混乱、そして2016年7月の戦闘の激化により、244万人が周辺国に避難しており、うち105万人がウガンダに流入しました。その6割が18歳以下の子どもと言われています。AAR Japan[難民を助ける会]は1人でも多くの子どもが就学できるよう、ウガンダ北西部のビディビディ難民居住地で教育環境の整備を行っています。
3月に完成したばかりの新しい校舎について、ウガンダ駐在員の吉川剛史が報告します。
足りない子どもたちへの教育
ビディビディ難民居住地は、28万人を超える南スーダン難民が暮らしています。祖国でも政治的混乱から学校に通っていなかった子も多く、教育環境の整備が急がれています。
AAR は居住地が開設された2016年秋より教育支援を開始。とにかく1人でも多くの、かつ少しでも早い就学を実現するため、居住地内および難民の子どもも通学する周辺地域の学校で、ウガンダ政府やほかの支援団体と調整しながら工期2 週間ほどで完成する仮設教室42 室とトイレ62基を建設し、机やいすを提供しました。また、2万人を超える子どもたちに通学に必要なかばんを提供したほか、居住地内を1軒1軒訪問し、学校の開設と教育の必要性を保護者に伝えました。
子どもたちは、祖国での戦闘のトラウマや家族との離別といったさまざまな問題を抱えています。そうした生徒を効果的に指導できるよう、「児童の心理社会的サポート」「民族間対立の対処法」などをテーマにした教員研修も実施しました。
避難生活の長期化を受け、耐久性の高い校舎の建設
南スーダンで激しい戦闘が始まった2016 年7月から1年が経過した昨年の夏時点でも、政治的混乱は収まる気配をみせず、難民の帰還の目途も立っていませんでした。仮設校舎の耐久期間は半年ほどであったため、老朽化が激しく、雨風が吹き込むなど子どもたちが学習に集中することが難しくなっていました。そこで、AARはより耐久性の高い校舎の建設に取り掛かりました。
2017年7月に準備を開始し、2018年3 月下旬に最初の2 棟6 教室が完成。3月21日に無事、譲渡式を行いました。副校長先生は、「子どもたちは新しい校舎ができて大変喜んでいる。職員室も教室と一緒に新しく建ててくれて本当に嬉しい。広くて綺麗で教員みんなのやる気が出ています」と話しています。
「勉強へのやる気もあがります」
後日、授業が行われている時間に学校を訪ねてみると、明るい教室で集中して勉強する子どもたちの姿がありました。休み時間には、「新しい教室はとっても素敵。大好き」「新しい教室ができてから、勉強に集中できます」「ほかの学校にも同じような素敵な教室をもっと作って」と多くの子どもたちが話してくれました。
このプロジェクトでは、工事開始直前に、県の建設局から建設規格の変更通達を受け、設計や建材の大幅な変更を余儀なくされました。役所や建設業者と何度も交渉が必要になり、予算不足や工事の大幅な遅れも懸念されましたが、AAR の現地スタッフが休日も作業にあたってくれるなどして、何とか予定通り完成させることができました。
一人でも多くを学校へ
学校では、明るく元気いっぱいの子どもたちですが、一人ひとりに話を聞くと、とても深刻な状況にいることがわかります。目の前で家族を殺された子、両親が行方不明という子、まだ15歳の兄が妹の面倒をみているという世帯もあります。学校から一歩外に出ると、ほんとうに厳しい現実の中に戻っていくのです。
彼らの境遇を変えることはできませんが、せめて学校では楽しい時間を過ごし、傷を癒してほしい。そして、一生懸命勉強して夢を持ち、それを叶えてほしい。そう願わずにはいられません。
まだまだ課題は山積みです。今後も耐久性の高い校舎への建て替えや、校庭に張ったテントで暮らしている教員用の宿舎の建設を進めてまいります。また、1月より先生の給与や学校備品の提供といった学校の運営支援も開始しました。どうか、みなさん、南スーダン難民の子どもたちが学び続けられるよう、これからもご支援を心よりよろしくお願い申し上げます。
子どもたちに文房具を届けるための募金にご協力をお願いします。
1,000 円で2人の子どもに、1年間に必要なノートやペンを届けることができます。どうか、みなさまのご協力をお願い申し上げます。 実施期間: 2018年4月1日~ 5月31日 目標金額: 500 万円 |
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ウガンダ事務所 吉川 剛史
2016年9月よりウガンダ事務所に駐在。中学時代から国際協力を志し、大学で途上国開発・平和構築を専攻。在学中にフィリピンでのボランティア活動やボスニアのNGOでのインターンを経験。卒業後、企業に約3年間勤務した後AARへ。千葉県出身