活動ニュース

パキスタン:衛生設備の引き渡し式典ー子どもたちが、毎日元気に登校できるようにー

2018年12月19日  パキスタン感染症対策
RSS

2018年11月20日、AAR Japan[難民を助ける会]が支援するパキスタンの小学校で、当会が設置した井戸や水道タンク、トイレを同校へ引き渡すにあたり、式典を開きました。東京事務局の紺野誠二からの報告です。

巨大なテントの下で

引き渡し式典が行われるハイバル・パフトゥンハー州ハリプール郡ハッタールの小学校まで車で1時間半。幹線道路から外れ、舗装されていないでこぼこ道を3分も走行すると学校に到着。式典に政府関係者も出席するため、会場を含め30名ほどの警察官が警備をし、周辺の高い建物の上では銃を持った警察官が一帯の状況を確認するなどしていました。会場には、サーカスのような巨大テントが、学校の建物に合わせて器用に設営されていました。

数十名の地元の男女が横に並べられた椅子に着席している 頭上に白い大きなテントの屋根部分が見える

当日は素晴らしい天候に恵まれました(会場の小学校、写真の撮影日はすべて2018年11月20日)


午後2時、予定の時刻に式典を開始。警備を除いて参加者は70人ほどです。まず、駐在員の大泉泰が参加者の皆さまへのご挨拶と、来賓の紹介をしました。日本大使館の倉井高志特命全権大使や、ハイバル・パフトゥンハー州の教育局初等中等教育局長、ハリプールの郡長がお忙しい中、来賓としてご列席くださいました。

演台には、日本とパキスタンの国旗が飾られています

基礎教育の意義などを話される日本大使館の倉井特命全権大使

倉井大使は、基礎教育の意義や女子教育の重要性についてスピーチし、参加している子どもたちはおとなしく聞いていました。大使がスピーチの最後に「Pakistan ! Zindabad!」と発すると、参加している保護者や子どもたちは拍手喝采。この言葉は同国のスローガンで、英語では "Long Live Pakistan"、日本語では「頑張れ!日本!」や「万歳!日本」といった意味です。
パキスタン側の来賓の方々は、スピーチの中でAARの活動に触れてくださいました。「2005年の地震の際に被災した人たちのために駆けつけてくれたこと、2010年の洪水のときにも支援してくれたことに感謝申し上げたい」との言葉に胸が熱くなると同時に「2005年に地震の被災地に入ってからもう13年が過ぎたのか」と、懐かしくなりました。

会話から感じる、活動の成果

女の子8名ほどが白いドレスを着て踊っている 胸元に手作りしたWやE、Lなどwelcomeの文字1を付けている

白いドレスに、色鮮やかな「WELCOME」の文字をつけたり、玉房を手にして踊る子どもたち

今日の日のために子どもたちが出し物を準備してくれていました。「WELCOME(歓迎)」の文字が一文字ずつ入った服を着てダンスを披露してくれたり、「ゴミはゴミ箱に捨てましょう」と伝える寸劇を演じてくれたり、「手を洗いましょう」というパフォーマンスや歌を見せてくれたりしました。
以前学校を訪問した際にも、先生たちから「実は子どもたちには歌を使って手洗いの大切さを教えているんです」と聞いていたため、特別なパフォーマンスではないのかもしれません。
大切なのは、パフォーマンスをすることだけでなく、実際に毎日手を洗って清潔にすること。それが風邪予防に、そして、学校を休まないことにつながります。また、先生は「ときどき、子どもたちの爪が伸びすぎていないかチェックするのよ」と教えてくださいました。こうして細かいところまで気を配られていることを知り、AARが教員向けに衛生教育の研修を行った成果を感じました。それにしても、360人以上の生徒に対して9人しか先生がいないのだから、先生たちも本当に大変でしょう。

女の子5名が、両手を前にだし、身振り手振りをしながらパフォーマンスをしている

「手を洗いましょう」の詩を朗唱しながら、手洗いの手順をパフォーマンスで示す子どもたち

ごみ箱役の女の子は鮮やかな黄色の被り物をしている その周りを7、8名の子どもたちが囲んでいる

「ゴミはゴミ箱に捨てましょう」の寸劇の様子。真ん中の黄色い被り物をしているのはゴミ箱役の子ども。「Use me!(ゴミ箱を使って!)」と伝えています

式典の最後は、倉井大使をはじめとする来賓の皆さまによるテープカットと、子どもたちによる手洗いのデモンストレーションでした。そのそばでは、地元のメディアなど写真を撮りたい人がごった返し。メディアを通じて少しでもこのような手洗いや衛生面での活動の重要性が伝われば、と願うばかりです。
式典が終わり、AARが提供した浄水フィルターなどをお見せした後はお茶と歓談の時間。大使をはじめ来賓の皆さんは校長室へ向かいました。すると保護者の方々が私に寄ってきて「子どもの写真を撮って!」と迫りました。

カラフルで煌びやかな装飾の伝統衣装を着る女の子と、民族模様をあしらった帽子をかぶる男の子が真剣な目で見つめている

写真撮影に緊張したのか、少し表情の硬い子どもたち。ハイバル・パフトゥンハー州の結婚式やお祭りなどで着る民族衣装を着用しています

子どもたちの未来を支える人々

6つの山々が連なる絵や、機微などが描かれている 相当大きな壁画で圧倒される

後方に見えるのが先生たちが制作した壁画。この地域にある山やダムを描き、「美しい風景を守りましょう」と環境保全のメッセージを込めているようです

歓談が終わり、来賓の方々が帰り始めました。私は、式典の最中にずっと気になっていたことを現地スタッフに聞きました。「あのWELCOMEと描かれた綺麗な壁画は、作ることになっていたっけ?予算に入っていたかな?」すると横で聞いていた校長先生が、「あれは2日間かけて私たち教員が描いたの。学校の中の飾りも私たちがやったの」と教えてくれました。こうやって協力してくれる人たちが沢山いるからこそ、私たちの事業は成り立つし、子どもたちの健康も保たれるのだと、頭が下がる思いでした。

その後、大勢いた警察官も全員引き上げていき、すべて終了。翌日は祝日(イスラム教の創始者、マホメットの誕生日)のため学校はお休みです。先生方の明後日からの奮闘を心から願いました。

20名ほどで記念撮影 かしこまった表情の人もいれば、微笑んでいる方もいる

記念撮影。ハリプール郡の教育事務所長(右から2人目)、同郡の郡長(右から4番目)、中央は倉井大使ご夫妻、左側の女性たちはAARの現地スタッフ

この活動は皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 紺野 誠二

2000年4月から約10ヵ月イギリスの地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向、不発弾・地雷除去作業に従事。その後2008年3月までAARにて地雷対策、啓発、緊急支援を担当。AAR離職後に社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得。海外の障がい者支援、国内の社会福祉、子ども支援の国際協力NGOでの勤務を経て2018年2月に復帰。茨城県出身

< 活動ニューストップに戻る

ページの先頭へ