キラーロボットの規制に向けて、今後の戦略を議論
2/19(火)に立教大学でキラーロボットのシンポジウムを開催します。 |
2018年12月7、8日にアメリカの首都ワシントンD.C. で、国際的なキャンペーン(運動)、「キラーロボット反対キャンペーン(Campaign to stop killer robots)」の運営委員会が開催され、AAR Japan[難民を助ける会]はアジアから唯一の運営委員として参加しました。通常の運営委員会はインターネットを介したオンラインでの会議ですが、2年に1度、直接顔を合わせる運営委員会が開催されます。
同キャンペーンは、2019年に特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons:CCW、過度に障がいを与えたり無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用を禁止または制限する条約)の枠組みで、自律型致死兵器システム(人間の介入・操作なしに攻撃目標を定め人を殺傷する兵器、キラーロボットとも呼ばれる)を規制することを目標として各国政府に働きかけてきましたが、現在まで締約国間の規制に関する合意は進んでいません。こうした状況を受けて、今後キャンペーンとしてどのように規制への動きを後押しするのか、その戦略について議論しました。
その結果、2年後の2021年までにCCWの枠組みでキラーロボットを規制することを新たな目標とし、CCW締約国会合や政府専門家会合に出席しながら、引き続き国際社会に禁止条約の策定の必要性を呼びかけ、関係国連機関や禁止に前向きな締約国へ協働を呼びかけることを確認しました。
また、新たな動きとして、世界全体の機運を盛り上げる地域レベルでの会合の開催をいくつか予定しています。AARでは、2019年2月19、20日にキラーロボット反対キャンペーンとともに立教大学で東京会議(アジア・パシフィック地域会合)を開催します。さらに、4月にカザフスタンで実施するアスタナ会議(CIS地域※1会合)などを通じて地域のNGOの結束を促すことなどが運営委員会で合意されました。
※1. ソ連を構成していた15ヵ国のうちバルト3国を除く12ヵ国によって結成された緩やかな国家連合体
また、同キャンペーンに参加する国際人権団体がキラーロボットに関する調査※を先進国を中心に実施したところ、「戦争でキラーロボットが使用されることについてどう思いますか?」という質問に対して日本では35%が「わからない」と答えています(1. 強く支持する、2. やや支持する、3. 強く反対する、4. やや反対する、5. 分からないの5つから選択)。この数値は、調査をした26ヵ国のなかで最も高く、日本でのキラーロボットの規制に向けた啓発の必要性が再認識されました。
一方で、「強く反対する」「やや反対する」を合わせた50%の人に向けた「自律型致死兵器システムの使用に対して、あなたの問題意識は次のうちどれに当てはまりますか?」という質問に対して、60%の人が「機械による殺人は許されるべきではなく、道徳的な一線を越えている」を選んでいます(1. 違法である、2. 責任の所在が不明瞭、3. 機械による殺人は許されるべきではなく、道徳的一線を越えている、4. 高額すぎる、5. 技術的欠陥が起きやすい、5. その他、6. 分からない、の6つから選択)。この回答から、機械が人を殺傷することに抵抗を覚える人が一定数おり、日本にはキラーロボットの規制に関する理解の土壌があることも感じました。
こうした現状を踏まえつつ、当会は今後もキラーロボットの規制に向けて引き続き日本での啓発活動を務めてまいります。
※2. 世界89ヵ国で各種市場調査や世論調査などのリサーチ・サービスを提供している、Ipsos Group(イプソスグループ)による調査
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 櫻井 佑樹
大学卒業後、民間財団に勤務したのちイギリスの大学院で平和学を学ぶ。パキスタンでのNGO勤務を経て2012年8月よりAARへ。東京事務局でタジキスタン事業などを担当し、ザンビア駐在後、2016年8月までタジキスタン駐在。現在は東京事務局で福島事業やキラーロボット反対キャンペーンなどを担当。三児の父(千葉県出身)