スーダン:住民とともに取り組んだ 水、トイレ、ゴミ問題
AAR Japan[難民を助ける会]は、スーダンの首都ハルツームから東に500キロに位置するカッサラ州のリーフィーアロマ郡で2016年2月から2019年3月まで、給水設備の設置やトイレの普及、ごみ対策活動を実施しました。これまでの活動とその成果について東京事務局でスーダン事業を担当する北朱美が報告します。
水汲みにかかる時間が激減
カッサラ州では2014年時点、安全な水の普及率が13.1%と、スーダン全体の68%と比較しても著しく低い状況でした。AARは同州リーフィーアロマ郡の6村7ヵ所に給水タンクと送水パイプ、給水所などからなる給水設備を整備しました。
その結果、安全な水が入手できるようになっただけでなく、川や隣村の井戸まで歩いて平均2時間半かけていた住民(6村計約 5,900人)の水汲み時間が、平均40分以下になりま した。建設した給水設備が長期にわたって使われていくように、地域住民で構成される水管理委員会をつくり、修繕の方法や設備の使用料を適切に管理するための研 修を実施。また、井戸水の汚染を防ぐため、設備周辺 に住む住民を対象に衛生に関する研修も行いました。
住民全員がトイレを使い始める村も
この地域では、トイレのある家が1軒もない、という村もあるほど、トイレの使用率が低く、住民の多くが屋外での排泄を習慣にしていました。AARは住民に「トイレを使いたい」と思ってもらうため、ワークショップなどを開催して働きかけを行った後、希望する住民とともにそれぞれの家庭にトイレを建設しました。トイレは身近にある材木やビニールシートを使った簡易なものでしたが、簡単にできるからこそ、住民のトイレ建設の意 欲が高まり、2019年3月までに260以上の世帯でトイレが建設されました。なかには、住民全員がトイレを使用するようになった村もあり、大きな成果が出ました。
またリーフィ―アロマ郡の郡都アロマタウンではゴミ収集車が故障し、街中でゴミが放置されるという状 況が続いていたため、AARはゴミ収集のトレーラーを街の行政に提供。行政の担当者とともにスケジュールをつくり、ゴミ収集を開始しました。同時に、ゴミを放 置することの衛生上の問題点やゴミの正しい捨て方につ いての啓発イベントを住民を対象に繰り返し行ったところ、住民自身が驚くほど、町がきれいになりました。現在は衛生活動を推進する女性グループも立ち上がり、彼女らが住民に対して啓発活動を続けています。
活動の継続を目指して
3年にわたる活動を通して、多くの住民が安全な水を手に入れられる環境が整い、地域の衛生状態も改善しました。地域を管轄する行政担当者へは衛生活動に関する計画の立て方や実施のプロセス、結果の確認方法などを6ヵ月間にわたる実務研修で教えるなど、AARが活動を終えても住民が自ら衛生活動を実践していけるような工夫も取り入れました。AARのカッサラ州での活動は終了しましたが、今後は、水管理委員会のメンバー や衛生活動を推進する女性グループと協力しながら、行政の担当者が中心となって、衛生環境改善に向けて取り組んで行きます。
2019年10月をもってカッサラ事務所を閉じました。これまで活動を支えてくださった 皆さまに、心より御礼申し上げます。
AARは引き続き、ハルツ―ム事務所で活動を実施してまいります。
この活動は、皆さまからのご寄付に加え、外務省 日本 NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しました。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 北朱美(きた あけみ)
臨床検査技師として病院に勤務した後、タイで公衆衛生を学ぶ。帰国後、AARへ。ザンビア事務所、ミャンマー事務所、パキスタン事務所駐在を経て、2017年5月より東京事務局勤務。長崎県出身