台風19号:障がい者施設で活動再開の後押しを継続しています
2019年10月12日に本州に上陸した台風第19号の被害に対し、AARは翌13日からNPO法人ピースプロジェクトと共同で炊き出しを実施し、14日からは被害規模の大きい長野県、北関東(栃木、茨城)、東北(福島、宮城)の3地域にそれぞれ緊急支援チームを派遣、調査と物資配付を行ってきました。
災害時、自治体のみでなく、国が主体となって緊急・復旧復興支援へ関与する基準や仕組みなどを定めた災害救助法が適用された自治体は、今回14都県390市区町村にのぼり、被害は広域にわたっています。AARでは特に支援が行き届きにくい福祉施設を中心に支援活動を実施しています。
発災直後は12施設に対して飲料水や衛生用品をはじめとした緊急支援物資を配付し、宮城県、福島県、栃木県、長野県の4県36施設で訪問調査を行ってきました。
被災から2ヵ月。緊急期から復旧、復興の段階へ
現在はこれまでの調査をもとに、宮城県、福島県、長野県の7施設に対して、事業所の復旧および活動再開に欠かせない物資の配付を行っています。
物資提供は予定通り進んでおり、これからは特に、福祉施設に通われていた障がい者が一日も早く被災前の活動が再開できるよう、建物の修繕などを本格的に進めていきます。支援対象の7施設のほとんどは1階の天井まで浸水し、特に被害の大きなところでは、2階の床上数十㎝まで水浸しになりました。台所やトイレのみならず建物そのものも修繕工事が必要な状況となっています。
一日も早く安心できる場所が戻るように
AARが支援する施設の一つ、福島県郡山市のグループホーム笑(えみ)は、阿武隈川の越水によって建物が2m近く浸水し、大規模な修繕工事が必要となっています。
笑では被災前8人が生活していましたが、現在は建物が全く使えないため、ホームを運営する社会福祉法人ほっと福祉記念会が借り上げたアパートで、避難生活を余儀なくされています。過ごし慣れた環境から離れ気持ちが不安定になってしまう場合もあり、一日も早い再開が望まれていますが、着工はまだ先です。修繕には災害復旧のための国からの補助金を受けられる見込みですが、それだけではカバーできない部分も多く、施設には大きな負担となっています。
発災から2ヵ月が経過し、被災地では泥かきや災害ごみの搬出まではおおむね終わってきました。そのため、一見するとその建物が被災したように見えないこともあります。特定非営利活動法人すだち福祉会の運営する、地域活動支援センターげんきも、そうした状況です。
げんきでは、障がいのある方々が通って、精密機器の組み立てや廃棄されるお札を利用した植木鉢づくりなどを行っています。今はそうした作業に必要な什器備品が全て使えなくなっており、さらに台所や洗面台なども修繕が必要なため、活動を休止せざるをえない状況です。AARは什器備品の提供と、修繕工事の支援を進めています。
現在支援を実施している7施設以外にも、自力での復旧・復興が容易ではないところが複数確認されています。福祉施設の活動再開を後押しすることで、一人でも多くの障がいのある方に安心した環境を取り戻すためまだまだ支援が必要です。AARではこれからも活動を継続していきます。どうぞ引き続きご協力をいただけますようお願いいたします。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 高木 卓美
2014年4月より東京事務局で緊急支援および国内事業を担当。大学卒業後、音楽活動、民間企業を経て大学で職員として勤務後、AARへ。埼玉県出身