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ロヒンギャ難民シンポに国内外から220人参加:大量流入から3年

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AAR Japan[難民を助ける会]は8月22日、オンラインシンポジウム「ロヒンギャ難民100万人は今~大量流入から3年/AARの取り組み」を開催し、全国各地やバングラデシュ、ミャンマーなど海外から参加した約220人の皆さんとともに、ロヒンギャ難民問題の現状と課題を論議しました。

ミャンマー西部ラカイン州で暮らしていたイスラム少数民族ロヒンギャが2017年、治安部隊による激しい武力弾圧を逃れ、隣国バングラデシュ南東部コックスバザール県に大量流入して8月25日で3年。本国帰還の見通しもないまま、累計100万人超の難民のうち、約85万人が過密した難民キャンプでの生活を余儀なくされています。

青空の下、100人近い難民の子どもだちがシートの上に座っている それぞれの手にはテキストがあり勉強している

クトゥパロン難民キャンプのマドラサ(イスラム学校)の青空教室。累計100万人超のロヒンギャ難民は今、新型コロナ感染の危険に直面している

オンライン(zoom)形式で開かれたシンポジウムでは、AARコックスバザール前駐在の中坪央暁の基調報告(武力弾圧の真相、国際的な裁判の動きなど)、現駐在の町村美紗の活動報告(AARの支援事業、新型コロナウイルスの影響など)に続いて、専門家2人がコメンテーターとして登壇しました。
上智大学総合グローバル学部の根本敬教授(ビルマ近現代史)は「ミャンマー国民のロヒンギャに対する差別感情は根深い。しかし、アウンサンスーチー国家顧問は問題解決に向けた取り組みを公約しており、国際社会としてもこれを実現させる必要がある」、国連世界食糧計画(WFP)元アジア地域局長の忍足謙朗AAR常任理事は「昨年3月に現地を視察し、国連機関とNGOが現地政府と連携して巨大なヒューマニタリアン・シティ(人道都市)を機能させていることに驚いた。もちろん課題は多いが、数十万人の難民を保護している事実は高く評価される」と話しました

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オンライン・シンポジウムに登壇した忍足氏(左上)、根本氏(左下)、当会の中坪(右上)、町村(右下)

質疑応答では、参加者から「新型コロナにどのように対応しているか」「今一番必要な支援は何か」「難民の密航が多発しているが有効な対策はあるのか」など活発な質問が寄せられました。
また「日本の私たちにできることは何か」「難民問題への関心を高めるにはどうすれば良いか」という問い掛けも多く、「最も重要な教育分野の支援に協力したり、日本政府の関与について国民が声を上げたりすることが必要ではないか」(根本教授)、「このシンポジウムに大学生、高校生が多数参加しているのは素晴らしい。若い世代に積極的にアピールしていかなければならない」(忍足常任理事)などの問題意識が共有されたほか、メディアの重要性も改めて指摘されました
また、多くの参加者から「国際情勢や歴史的背景を含めて複眼的に理解することができた」「立場が異なる専門家の貴重な話を聞けたのが良かった」などの感想が寄せられ、充実した90分間になりました。

竹材やビニール、板などありあわせの材料で作られた家々が密集している 丘陵地に建てられ、雨季には土砂崩れなども心配される

60万人以上が密集するクトゥパロン難民キャンプ

世界規模で新型コロナ感染拡大が続く中、AARはさまざまな工夫を凝らして、海外の難民や障がい者支援、国内災害の被災者支援を続けています。合わせて、日本各地や海外からも参加できるオンライン形式の報告会やシンポジウムを通じて、情報共有と論議の場をご提供しています。AARオンライン企画への積極的なご参加をお待ちしております。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局/前コックスバザール駐在 中坪 央暁(なかつぼ ひろあき)

全国紙特派員・編集デスクを経て、国際協力機構(JICA)の派遣で南スーダン、ウガンダ北部、フィリピン・ミンダナオ島など紛争復興・平和構築支援の現場を継続取材。新聞社時代にアフガニスタン紛争、東ティモール独立をカバーした。2017年11月AAR入職、2019年9月までバングラデシュ・コックスバザール駐在。著書『ロヒンギャ難民100万人の衝撃』(めこん)を上梓。栃木県出身

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