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コンゴ難民の子どもたちに教育を:難民居住地で支援開始

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アフリカ中部のコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)では1990年代以降、不安定な情勢が続いていましたが、2018 年末の大統領選をきっかけに緊張がさらに高まり、2019年には東部地域の武力衝突によって数多くの民間人が犠牲になりました。隣国ウガンダに逃れる難民も急増し、現在ウガンダに居住するコンゴ難民は約41万人に上ります。このような中、難民居住地に住む子どもたちの3割以上が学校に通えずにいます。

このためAAR Japan[難民を助ける会]は今年4月に、コンゴ難民の子どもと難民を受け入れている地域に住む子どもたちに対する教育支援を開始しました。ウガンダ・ホイマ事務所の樋口正康が報告します。

光の入る教室に子どもたちが沢山座って勉強している。

狭い机に並びながらも熱心に勉強するコンゴ難民の子どもたち(ウガンダ、チャングワリ難民居住地)

支援開始の矢先に...

AARは2016年からウガンダ北部の南スーダン難民居住地で教育支援を実施していますが、コンゴ難民の急増を受けて、2019年6月と2020年2月にウガンダ西部にあるコンゴ難民居住地で教育に関する調査を行いました。その結果、難民居住地のひとつであるチャングワリ難民居住地では難民の数が増加する一方、教育の支援が十分に行きわたっていないことがわかりました。

チャングワリ難民居住地には公立小学校が9校ありますが、児童715人に対して教室がひとつしかない学校もあり、午前と午後の二部制授業や校庭での青空教室でしのいでいる状況です。教科書も一人に一冊はなく、複数の児童が教科書を共有して授業を受けており、子どもたちが集中して勉強できる環境にはありません。過酷な環境から学校に通うことに意味を見いだせずに退学するなど、非就学の子どもたちが多くいるのも現実です。

このような状況を改善するために、2020年4月、AARはチャングワリ難民居住地で、コンゴ難民の子どもと難民を受け入れている地域に住む子どもたちを対象に教育支援を開始しました。しかし、支援開始と同時期に新型コロナウイルス感染症が拡大し始め、ウガンダのすべての学校が休校となってしまいました。また、駐在員は安全上の理由からウガンダからの退避を余儀なくされました。

現在もチャングワリ難民居住地の学校では休校が続いていますが、AARは現地に残るウガンダ人のスタッフと密接に連携を取りながら活動を継続しています。8月には教室9室の建設を開始しました。教室の整備だけでなく、保護者や地域の人々が主体となり、教員と協力して学校を運営できるように、保護者や地域住民、学校関係者を対象とした学校運営のための研修も実施しています。また、学校に教科書や教員用の指導書を配付することで、教育の質の改善にも取り組む予定です。

マスクをした男性4人が机を囲み話し合っている

保護者や地域住民、教員を対象とした研修で参加者が学校施設の維持管理について話し合っている様子(チャングワリ難民居住地、2020年8月24日)

「なんとかして、子どもたちを学校に通学させてやりたい。」

新型コロナウイルス感染症については、ウガンダでは厳しい移動制限などの措置によって爆発的な拡大は抑えられているものの、2020年9月11日現在、全国で感染者3,900人、死者44人が確認されており(ウガンダ保健省)、8月21日現在、難民72人にも感染が確認されています(国連難民高等弁務官事務所(UNHCR))。8月にはチャングワリ難民居住地で新型コロナウイルス感染症に罹患し、亡くなられる難民の方がでました。ウガンダでは国内の医療体制が脆弱であるため、いかに感染を予防するかが鍵になっています。多くの難民の方は衛生用品を購入する経済的な余裕がないため、AARは9月よりチャングワリ難民居住地で、石鹸やアルコール消毒液などの衛生用品の配付、手洗いなどを呼び掛ける衛生啓発活動を実施していく予定です。

ウガンダ政府が新型コロナウイルス感染症拡大防止のためにとった経済活動の制限により、家庭の収入が減り、難民居住地に住む子どもたちへの影響も出ています。チャングワリ難民居住地の学校に通う、小学2年生のグラディス・ネエマちゃん(9歳)は、「ノートやペンが買えなくなって、いつものように学校に行けなくなるんじゃないかと思うと、とても悲しい。友達にも早く会いたい。」と話します。グラディス・ネエマちゃんのお父さんのウチャマ・サムウェルさん(41歳)は、「収入が減ってしまったので、このままでは学校が再開された後、子どもたちの学費の支払いや学用品の購入ができないかもしれない。でもなんとかして、子どもたちを学校に通学させてやりたい。」と現在の苦しい状況や今後の不安を打ち明けました。

難民キャンプ内で舗装されてない道を多くの人があるいている様子

チャングワリ難民居住地内をでマスクを着用している人は少ない。新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減った住民は衛生用品を購入することが難しい。(チャングワリ難民居住地、2020年7月31日)

コンゴ難民の方々が少しでもより希望のある未来を描けるように

隣国に逃れ難民になり保護されるべきはずの人々が新型コロナウイルス感染症の影響で教育の機会を失ってしまうこと、また、難民の人々の日々の暮らしや命が新型コロナウイルス感染症により失われてしまうことを危惧しています。現時点では駐在員として現地で直接支援を届けることができないことが心苦しいですが、支援を必要とする難民の方々の切実な声や思いに応えるために、現地に残るウガンダ人のスタッフと協力して日本からできる限りの支援を届けてまいります。

この危機を乗り越え、コンゴ難民の方々が少しでもより希望のある未来を描けるよう、新型コロナウイルス感染症対策と両立を図りながら教育支援を継続してまいります。

引き続き、皆さまの温かいご支援・ご協力をお願い申し上げます。

※この活動はJPFの助成により実施しています

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ウガンダ・ホイマ事務所 樋口正康

9 月よりウガンダ事務所駐在。世界で活躍するサッカー選手を目指し高校時代にブラジルと英国にサッカー留学したが、プロの道は断念。「世界を相手にする仕事という意味では同じ」と国際協力に方向転換し、大学で国際協力コースを選択した後、米国の大学院で国際開発学を専攻。日本の NGO や財団の駐在員としてカンボジアに 5 年、ウガンダに 3 年滞在した後AAR へ。趣味はサッカーとバイク。岐阜県出身

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