ミャンマー:コロナ禍の障がい児家庭をサポート
AAR Japan[難民を助ける会]は、ミャンマーで20年にわたって障がい児のいる家庭の支援を行っています。新型コロナウイルスの感染拡大が同国でも続く中、そうした家庭の多くで収入が大幅に減少し、日々の食事にさえ困っていることが分かりました。そこで、AARは今年5月以降、困窮する障がい児家庭30世帯にコメや豆類、ツナ缶などの食料のほか、マスクや消毒液などの衛生キットを毎月配付するとともに、自宅にこもりがちな障がい児のために家族ができるリハビリ方法の冊子を配っています。
リハビリ支援や食料提供
アウン・チェー・ジン・チョー君(10歳)は、脳性まひのため上体をまっすぐ保つことができません。AARはこれまで理学療法士を自宅に派遣してリハビリを行い、障がい児のデイケアセンターに通えるよう支援してきましたが、同センターはコロナが広がり始めた3月末に一時閉鎖され、再開の目途は立っていません。そのためアウン君は一日のほとんどを自宅で過ごしていますが、障がい児にとって外出や運動の機会を失うことは、関節の硬化や身体機能の低下を引き起こす要因になります。そこで、AARは写真やイラスト付きのリハビリ教本を両親に届けたうえで、週1~2回ビデオ電話を通して教本を見ながら自宅でできるリハビリの方法を指導し、理学療法士が訪問できない現在は、母親が代わりに適切なリハビリを施しています。
アウン君の父親は車の整備工場を運営していましたが、コロナの影響で仕事が減り、9月に工場を一時的に閉めることを余儀なくされました。アウン君は、幼い頃から免疫力が低く病弱なため、コロナにかかると重症化する恐れがあります。父親はできるだけ早く仕事を再開したいと願っていますが、整備工場にはタクシー運転手など不特定多数の客が来るため、「感染拡大が収まるまでは再開できない」と話しています。完全に収入が途絶えた一家は、わずかな貯蓄を切り崩しながら日々をしのいでおり、AARは緊急支援として家族が約1ヵ月生活するのに必要な食材を提供しました。
アウン君の母親からは「いつになったらコロナが収束して元の生活を取り戻せられるのかと考えると、不安で押しつぶされてしまいそうです。そうした状況下で、AARには家族の食料に加え、息子のリハビリも手伝っていただき、本当にありがたく思っています」との言葉をもらいました。
AARが支援する他の障がい児の家庭も、コロナ禍で苦しんでいます。ピョー・テインギ・チョーさん(15歳)は脳性まひのため、知的障がいと身体障がいがあります。ピョーさんの父親は、ヤンゴンの公共バスの運転手として働いていましたが、政府による外出禁止令が9月に出て以降、バスの利用者は大幅に減り、出勤の頻度も半分以下になりました。公共バスでありながら、運転手の給料は定額ではなく売り上げによって決まるため、給与は9月以降支払われていません。
プー・ピェ・ゾンさん(10歳)も脳性まひのため、思うように言葉を発したり指先を動かしたりすることができません。プーさんの父親は電気技師として働いていますが、コロナの影響で建築プロジェクトが軒並み中断され、電気の配線工事の仕事がなくなってしまいました。家族を支えるべく、プーさんの母親は家から2時間も離れた場所にある小さな工場で働き始めましたが、工場が休業になる日もあり、手元に残る収入はごくわずかです。
ミャンマーでは今も毎日1,000人前後の新型コロナウイルスの新規感染が報告されており、収束する兆しは未だ見えていません。障がい児を抱える多くの家庭が、先の見えない不安にさいなまれながら、何とかその日の生活を送っています。AARでは、こうした家庭の負担を少しでも緩和するために、今後も食料配布を継続する予定です。皆さまの温かいご支援をよろしくお願い申し上げます。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ミャンマー事務所 大城 洋作
民間企業で勤務後、世界一周の旅へ。帰国後2014年4月にAARに入職し、2015年2月より約3年間、ラオス駐在員として障がい者支援に携わる。2018年4月よりミャンマー・ヤンゴン事務所駐在員。「新たな人生を切り拓こうと励む障がい者の方々の姿に、元気をもらっています」。沖縄県出身
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