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アフガニスタン:地雷・不発弾から子どもたちの命を守る

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カナダ・オタワで1997年12月3日に行われた対人地雷禁止条約の署名式から23年が経ちました。AAR Japan[難民を助ける会]は20年以上地雷対策に取り組み、主に地雷や不発弾の危険から身を守る教育活動や被害者の自立支援などを行っています。アフガニスタンでの最新の活動について、現地事業責任者の鶴岡友美が報告します。

AARアフガニスタン事務所は2017年以降、カブール県とパルワーン県で、地雷被害のリスクの高い村の住民を対象に、地雷を回避するための講習会(地雷回避教育)を実施しています。住民自らが主体的に関わり、地域に根差した活動となるよう、AARは志願者を募り、講習会の講師を担う「地域指導員」を育成しています。2020年9月までの1年間だけでも、59の村で1,859回の講習会を開き、のべ63,851人に地雷回避教育を行いました。

地雷回避教育の成果

2019年6月に開始した今年度の活動では、2020年2月以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、移動の制限や集会活動の禁止措置など大きな制約を受けました。一方、地域指導員への聞き取り調査の結果、確実に活動の成果が出ていることを確認しました。実際に住民が地雷を回避した例を紹介します。

地域住民「一カ月前、飼っている羊がいなくなり、息子と探しに出かけました。その途中で、突然あやしい物体があるのを見付けました。地雷回避教育で危険物として教えられた物と一致することに気がつき、触れないようにしました。その後村の長老たちの協力を得て地雷除去要員に知らせました」

地域住民「娘が学校に行く途中に不発弾らしきものを発見しました。彼女はAARの地雷回避教育に参加していたので、その恐ろしさをよく理解したようで、帰宅後に私に話してくれました。夫に電話して村の長老に知らせ、その後地雷除去要員に伝えることができました」

地域指導員「村の7歳と9歳の女の子が庭で遊んでいる時、庭に不発弾らしき物を発見しましたが、AARがモスクで行った地雷回避教育に参加していたため、その物体には触れませんでした。二人は両親に知らせ、村の長老を通して地雷除去要員に伝えられたそうです」

このように、比較的幼い子どもも地雷・不発弾などの危険性を理解し、回避する行動を取れるようになりました。また、危険物に近づかない・触れないだけでなく、周囲の大人に伝えて、地雷・不発弾の除去作業につながっています。大人が地雷除去の専門家に伝達することで、地雷回避から除去までに取るべき行動が身に付きつつあります。

女性も地域指導員として活躍

アフガニスタンでは文化的な背景によって、女性の就業に厳しい目が向けられがちです。地域指導員を志願する女性の多くが当初は周囲から反対されますが、実際に講師として活躍し始めると、男性からも活動の意義を認められることが多いようです。
イナスさん(仮名)は、地域指導員として2年前から活動しています。「地雷回避の知識を得た村の人々は、その意義を理解して、今では私の活動を心からサポートしてくれるようになりました。多くの住民がより安心して暮らせるように頑張ります」と話します。彼女自身、7年前に村の近くで兄が地雷によって亡くなりました。家族全員にとってつらい経験でしたが、この出来事がきっかけになって、父と3人の兄弟も彼女が地域指導員になることを応援してくれたといいます。地域指導員の中には、家族を地雷被害で失い、その悲しい経験をばねに、強い使命感に突き動かされながら活動している人が少なくありません。

AARアフガニスタン事務所は、現在活動しているカブール県、パルワーン県に近隣するカピサ県、ラグマン県に地雷回避教育の対象地域を拡大するとともに、地雷・不発弾に加えて、同国で広く使用されている即席爆発物などの回避教育を実施します。また、村のモスクだけでなく、公立学校、診療所にも活動拠点を広げ、より地域に根差した取り組みを目指します。

アフガニスタンの人々の安全で安心できる暮らしを実現するために 、引き続き、皆さまの温かいご支援をお願い申し上げます。

*この活動は、皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しました。

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【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

アフガニスタン事業責任者 鶴岡 友美

大学卒業後、証券会社に勤務後、青年海外協力隊員としてザンビアで結核やエイズの衛生教育に取り組む。その後アメリカの大学院へ進学。修了後、保健事業の管理や開発コンサルタント、NGO勤務を経て、2019年にAARへ。神奈川県出身

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