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東日本大震災10年:取り戻した笑顔、前に進むチカラ(1)

2021年02月22日  日本緊急支援
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東日本大震災から10年

東日本大震災(2011年3月11日)から間もなく10年を迎えます。AAR Japan[難民を助ける会]は震災発生直後に支援活動を開始し、今日に至るまで被災地の多くの方々とともに復興に向けて歩んできました。岩手・宮城・福島3県の皆さんの今の声を4回に分けてご紹介します。

メロンパンや食パンなど10個近くのパンを載せたトレイを手に、笑顔の竹下さんと障子上さん

ハックの家の施設長 竹下 敦子さん(左)、パン製造販売担当 障子紙 喜一さん(岩手県田野畑村)

「かっこよく働く」場所を創出

岩手県田野畑村 ハックの家 施設長 竹下 敦子さん パン製造販売担当 障子上(しょうじがみ) 喜一さん

 太平洋に面した田野畑村は津波で壊滅的な被害を受けました。障がい者の皆さんが働く水産加工場も流されましたが、その日たまたま早仕舞いしていて全員無事だったのは不幸中の幸いでした。帰宅できなくなった利用者と職員、近所の方々など約40人が高台に残った施設でしばらくの間過ごしました。障子上君をはじめ水産加工メンバーを含む約20人の就労場所を再建する必要に迫られていた時、AARから支援があって、年末にパン工場と野菜加工場が完成しました。この先どうなるのか不安に押しつぶされそうになっていた私たち職員と利用者、家族の皆さんにとって、それは未来が見えた瞬間でした。
 現在は障がい児の放課後デイサービスを含む約40人が通っていますが、10年経った今もあの時のトラウマで家に引きこもったままの利用者もいて、震災は続いていると感じます。その一方、2021年春にオープンする地元の道の駅で、うちのパンが販売されるなど新たな可能性も広がっています。多くの方々にご支援いただきながら、障がい者がかっこよく働き、かっこよく生きる場所として、ハックの家を発展させていきたいですね。(竹下さん)

手を前に組んでほんわかした笑顔をみせる小山さん

ひまわり会すてっぷ施設長の小山 貴さん(岩手県奥州市)

地域で生きる障がい者を支える

岩手県奥州市 ひまわり会すてっぷ施設長 小山 貴さん

 知的・精神障がいがある20人余りが菓子製造、機械部品の受託加工、紙資源の回収・リサイクルなどに取り組んでいます。震災直後は食料やガソリンの流通が止まり、一部の利用者さんと施設に住み込んで8日間過ごしました。本震・余震で外壁が壊れて困っていた時、迅速に改修してくれたのがAARです。原発事故の風評被害が岩手県にも広がり、地元産米で作る餅菓子の安全性の証明が必要になった際には、放射線測定器を提供してもらいました。今、何を必要としているのか話を聞いて一緒に考え、こちらが求めた以上の答えを示してくれるので、AARは安心して何でも相談できるパートナーのような存在ですね。
 被災地の復興と言っても、障がい福祉の視点で見ると、この10年間で何かが変わったわけではなく、大震災をきっかけとして社会的に弱い立場にある障がい者の問題が顕在化したという気がします。障がいのある方々が地域で生きるという当たり前の営みを支えるために、まだまだ多くの課題に向き合っていかなければならないと考えています。

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