ザンビア事務所
芦田 崇
ビクトリアの滝だけじゃない!ザンビアのオススメ観光「クンボカ祭り」
2005年3月よりザンビア駐在。大学卒業後、国家公務員として社会保障政策の実務に携わり、その後大学院で社会開発学を学ぶ。NGOの一員としてジンバブエやタイでエイズ問題に取り組んだ後、難民を助ける会へ。(大阪府出身)
記事掲載時のプロフィールです
難民を助ける会では、ザンビアの首都ルサカでエイズ対策事業を行っています。今回は、日本ではあまり知られていない「クンボカ祭り」についてご紹介します。
ザンビア西部の伝統的なお祭り「クンボカ祭り」
ザンビアの観光名所と言えば「世界三大瀑布」の一つとして知られるビクトリアの滝、野生動物が数多く生息する国立公園でのサファリが有名ですね。
しかし、ここは73もの部族が暮らしているザンビア。部族によってお祭りがあり、中には非常に有名なものもあります。今回は、ザンビアを代表する祭りの一つに数えられている、「クンボカ祭り」をご紹介します。
クンボカ祭りは、西部州の州都モングで行なわれます。この地には、今も王制を維持するロジ族が暮らしています。ロジ族の王様が暮らす宮殿(夏の宮殿)は雨季の大雨で水没してしまうため、王様一族は雨季の始まる前に高い場所にある別の宮殿(冬の宮殿)にボートに乗って移動します。この大移動が「クンボカ祭り」として毎年盛大に行われているのです。
「夏の宮殿へのお引越」が「クンボカ祭り」
ルサカからバスで7時間半、地元の女性の歌と踊りに迎えられ、王様が現在暮らしている夏の宮殿に着いてからどれくらい待ったでしょう。えびす様を思い出させる赤い帽子にチテンゲ(地元の女性が腰巻として使う布)で作ったフレアスカート、猛獣の皮で作った腰巻きという出立ちのロジ族の男性が整列し、ボートを漕ぐオールで花道を作っています。
花道は夏の宮殿につながり、そこから木琴のような楽器を演奏しながら一人の男性が出てきました。水の中で聞いているような、なんとも不思議な音色に先導されて、赤い帽子を被ったロジ族の男性が続々と出てきます。面白いのは、それぞれが大事そうに抱えている物。槍、スーツケース、クーラーボックス・・・。これらは全て王様の引越し荷物なのです。
荷物に続いて、一頭の象が描かれた赤いベレー帽を被って王様が現れました。隣はロジ族の正装を身に着けたムワナワサ大統領。もっとよく見ようと先回りして王様の御通りを待っていると、隣にいたロジ族の男性にひざまずくように言われました。片膝をついて拍手をするのがロジ族の正式な挨拶の仕方なのです。
移動用のボートの到着は圧巻!
名誉ある漕ぎ手に選ばれた総勢100名ほどの男たちがスタンバイする中、王様と大統領が作り物の大きな黒い象を飾った移動用のボートに到着しました。岸のかなり先の方まで見送りの人で一杯です。大歓声に見送られながら、ボートは引越先である冬の宮殿目指して漕ぎ出しました。
バスで冬の宮殿に先回りした私は、船着場で王様の到着を今か今かと待ち構えていました。船着場は、出発の時とは比べ物にならないほどの人出です。
身の危険を感じて王様は見られず…(泣)
さあ、王様御一行が到着したようです!
赤い帽子に付けた羽飾りがチラッと見えた途端、さっきまで待ちくたびれムードだった会場は一瞬にして異常な興奮に包まれました。座っていた人々は一斉に立ち上がり、女性は腰を細かく振って踊りまわっています。警備にあたる警察官が必死に座らせようとしますが誰も聞きません。
大歓声に迎えられたのは王様ではなく、先導役の2隻のカヌーでした。カヌーに立ち乗りした6人のロジ族の男性はまるでハリウッドスター。よく見ると普通のザンビア人なのですが、王様を先導して冬の宮殿まで無事辿り着いた彼らは、とてもかっこよく見えました。
そして、とうとう待ちに待った王様の到着です。王様を一目見ようと身を乗り出したその時、私の後方から群集がドッと押し寄せてきました。王様見たさ一心で、我も我もと人が流れ込んで来て押し合いへし合い状態です。将棋倒しになりそうな危険を感じた私は、すかさず列の後方へと避難しました。すると次の瞬間、関を切ったようにその群集が一斉に王様の後を追って走り出したのです。
結局、冬の宮殿に着いた王様を見ることはできませんでした…(泣)
ザンビア観光は、3月末から4月がオススメ!
後で聞いた話ですが、今年は例年にないほどの人出で会場を囲っていたフェンスが破れ、フェンスの後ろで見ていた大勢の人たちが会場に入り込んで来たそうです。最後は予想外の展開でしたが、ザンビアにいる間に一度は見ておきたかった「クンボカ祭り」は、色々な意味で迫力満点でした。
「クンボカ祭り」は毎年3月末か4月初めの週末に行われます。ちょうどその頃はビクトリアの滝の水量も多い時期なので、ザンビアを訪問される方にはその時期をお薦めします!