スーダン事務所
小田佳世
スーダンの通勤事情
小学生のころから国際協力に関心を持ち、高校でアメリカに1年間留学、大学時代はカナダで政治学・比較文化学を学ぶ。総合商社に勤務した後、2014年3月よりAARへ。東京事務局でのアフガニスタン事業担当などを経て、2014年10月よりスーダン駐在員。
記事掲載時のプロフィールです
「通勤ラッシュ」という言葉から、皆さんが想像されるのはどこの国でしょうか。満員電車が有名な日本や中国、あるいはタイ、ベトナム、インドなど、アジアの国ではないでしょうか。意外に思われるかもしれませんが、スーダンの通勤も日本に負けず劣らず大変です。駐在員の小田佳世が、スーダンの通勤事情をお伝えします。
ハルツームスタッフの通勤に密着!
スーダンの首都にあるAARハルツーム事務所スタッフの朝の会話は、ほぼ毎日「今日も渋滞が酷かった」「バスが30分つかまらなかった」「事務所に来るだけで疲れた」「またバス代が上がった」など、通勤に関することばかり。実際、ほとんどのスタッフが片道1時間以上かけて出勤しており、渋滞が原因で出勤時間に間に合わないこともしばしばあります。現地スタッフに「出勤時間は守るように」と毎日口を酸っぱくして言うものの、駐在員である私は事務所兼住居内に住んでいるため、その苦労は想像することしかできません。それならば、スーダンの通勤事情を肌で感じてみよう!ということで、会計を担当するエンサフの退勤・出勤に一日同行してみました。
3台のバスを乗り継いで...
17:13 |
就業時間は16:30までですが、就業時間後にお祈りをしたり、グラスを洗ったりしていると、17時頃の出発になることがほとんどです。 事務所を出て、7車線ある大通りを慎重に渡ります。 エンサフは毎日バスを乗り継いで通勤しています。右の写真は1台目のバス。大型バスには、韓国などアジアの中古車が多く使われており、中のつくりは日本のバスとあまり変わりません。バスセンターと呼ばれる大きなターミナル以外にバス停はなく、好きな所で運転手に合図をして、乗車・降車をします。バスに行先の表示はなく、乗務員役を務める少年が開いたドアのところに立ち、指の動きで行先を知らせながら走行しています。降車の際は、指を鳴らすか、「プスーッ、プスーッ」と言って合図をします。(女性は「プスーッ、プスーッ」と合図するのは下品と言われます。もし指の音が小さくてドライバーに聞こえなかったとしても、周りの男性が代わりに「プスーッ、プスーッ」と代弁してくれるので大丈夫です。) |
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17:50 |
バスセンターに到着。バスセンターと市場が同じ場所にあり、常に人でごった返しています。バスの行先を告げる声と、市場で呼び込みをする声が響き、とても賑やかです。 2台目のバスに乗車。 バスと言う名ではありますが、実際はミニバンです。ナイル川を渡って、ハルツームに隣接するオムドゥルマン市に向かいます。日中は30度を超えますが、もちろん空調はついていませんし、女性は宗教上の理由から全身を布で覆っているので、この頃にはもう汗だくです。 |
18:45 |
3台目のバスに乗車。だいぶ、疲れてきました。 |
19:07 |
ようやくエンサフ宅に到着。奥に見える青いドアの家で、両親とお兄さんと暮らしています。この日はエンサフの自宅に泊まらせてもらいました。 |
朝は6時30分に出発
翌朝6時30分、エンサフ宅出発。私はまだまだ眠いですが、エンサフは6時に朝のお祈りを済ませているので、しっかり起きています。
昨日と同じルートを今朝は逆戻り。日本の満員電車さながら、皆、我先にとバスに飛び乗ります(バスに乗ることに必死で、写真が撮れませんでした)。バスセンターを歩く人たちも心なしか足早です。
事務所到着は8:05。帰宅に2時間、出社に1時間半かかりましたが、学校が春休みで学生のバス利用者が少ない時期だったため、「まだ良い方」とのこと。 毎日大変な思いをして通勤している現地スタッフの苦労を体感し、これからは少し思いやりを持って接しようと心に決めた一日でした。