駐在員・事務局員日記

アフガニスタン:出張者の日常

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執筆者

東京事務局 紺野 誠二

2000年4月から約10ヵ月イギリスの地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向、不発弾・地雷除去作業に従事。その後2008年3月までAARにて地雷対策、啓発、緊急支援を担当。AAR離職後に社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得。海外の障がい者支援、国内の社会福祉、子ども支援の国際協力NGOでの勤務を経て2018年2月に復帰。茨城県出身

記事掲載時のプロフィールです

「国際協力の仕事」について、どのような印象をお持ちですか?華やかに見えたり、スリルに満ちたもののように映ったりすることがあるようです。そういったことがないわけではありませんが、大半は異なります。
アフガニスタンでの地雷対策活動を担当する東京事務局の紺野誠二が、パキスタンの首都イスラマバードに出張した際の日常をお伝えします。

始業前の有意義な時間

部屋にある家具はベッド、クローゼット、机と小さな袖机のみです

寝泊まりしている宿舎の部屋。いたってシンプルです(2018年10月23日)

2:30

起床。こんなに早く起きる必要はまったくありませんが、目が覚めてしまうのです。時差ボケといえば時差ボケかもしれませんが、日本で毎朝3時に起きている私にとっては、いつも通りといえばいつも通りです。起床後は、私用のメールを書いたり、お茶を飲んだり、本を読んだり、少し勉強したり有意義な時間を過ごします。最近は5時45分ごろにアザーンといって、イスラム教徒の礼拝を呼びかける合図が聞こえてきます。イスラマバードでは、6時になってもまだ真っ暗です。朝晩はかなり冷え込み、東京とさほど変わりません。緑の多い町の静かな朝は気持ちが良いです。鳥のさえずりも聞こえてきます。

7:00

シャワーを浴び洗濯をした後、朝食を取りにときどき訪問する、宿舎近くの食堂に向かいました。この食堂にはタクシーの運転手、近所の住民、夜勤明けと思われるガードマンがよく訪れます。警察官が朝食をとる姿を見かけることもあります。注文したのは、パラタ(油で焼いたナンのようなもの)、オムレツ、ミルクティー。あわせて70ルピー(約65円)です。特別に美味しいというわけではありませんが、砂糖たっぷりのミルクティーが病みつきになります。

パラタもオムレツも丸い形に焼かれています

本日の朝食。上がパラタ、左下がオムレツ(2018年10月24日)

アフガニスタンの現地スタッフと連携を取って

8:30 

事務所に出勤した後、メールをチェックします。

9:00

現在、治安の問題でアフガニスタンへの日本人の入国はままなりません。そのため、アフガニスタンで実施している事業に携わる日本人スタッフは、パキスタンから遠隔で業務にあたっています。この日は、アフガニスタンの首都カブールにあるAAR事務所のスタッフと、事業についてスカイプ(インターネット経由のビデオ通話)を用いてミーティングを実施しました 。アフガニスタンのスタッフは、母国での地雷被害を少しでも減らそうと奮闘しており、頭が下がります。何よりも心配なのが彼らの安全です。今日一日の安全を願い、ミーティングを終えました。

11:00

パキスタン人スタッフから、パキスタン・イスラマバード事務所のセキュリティや、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯の治安情勢などについて説明を受けました。アフガニスタンだけでなく、パキスタンでも即席爆発装置(Improvised Explosive Device:IED)による被害は出ており、深刻な問題です。

スタッフとの昼食、そして午後の事務作業

13:00

昼食の時間です。高級フランス料理店で打ち合わせをしながらの昼食、などということはまったくありません。昼食は、事務所に来るお手伝いさんが作ってくれます。今日のメニューはご飯、ナン、ゴーヤのカレー、サラダ、ブドウ。ご飯はいわゆる長粒種で、パラパラしているのが特徴です。残ったご飯は、明日の朝食用にタッパーに入れて持ち帰ることにしました。

大皿に盛られた食事をとり分けて食べます。カレーは赤や緑など彩ゆたかです

カレー料理を食べることが多いです。豆やジャガイモなど、さまざまな食材を使います(2018年10月30日)

14:30

淡々と事務作業をこなします。事業の進捗状況を報告する書類を、助成元の外務省に提出する必要があるため、こちらで作成した書類をアフガニスタン事務所のスタッフに送り、必要な箇所を記入してもらいます。その後、修正などを行い、書類を仕上げていきます。そうこうしていると、パキスタン事業の関係者が建設関連の打ち合わせのため、事務所を訪れました。隣の部屋で、パキスタン事業チームの女性スタッフとの打ち合わせが始まりました。

奥には山々が連なり、近くには木々が生い茂っています

屋上からの風景(2018年10月25日)

15:30

事務作業だけでは太陽の光を浴びない可能性があるので、気分転換を兼ねて屋上へ。今日も晴天で山が近くに見えます。

16:30

勤務時間終了です。月末など忙しい時期であれば、仕事を持ち帰ることもありますが、今は落ち着いている時期なので、これにておしまいです。

 17:00

宿舎に戻ります。ここでは駐在員用の宿舎に寝泊まりしています。個室にバス・トイレが付き、キッチンは共用。洗濯物を取り込んでいると、野良ネコがやって来て餌を催促してきました。終業後に町に繰り出すことは、ほぼありません。

19:00

就寝の時間です。朝早く起きているせいか、自然と眠くなります。今日は、落語家の柳家小三治(こさんじ)の「千早ふる」(在原業平の和歌の意味を娘に聞かれた男が、物知りの旦那のもとに教えを請いに行く話)を聞きながら眠りにつきました。明日も事務作業が続くことを思い浮かべながら...。

がっかりされる方もいらっしゃるかもしれませんが、出張者の日常はこのようなものです。事務作業も、事業を円滑に行うためには欠かせないもので、淡々とした日々の積み重ねで事業は進んでいきます。

パキスタンでよく見られるネコについての記事は、こちらをご覧ください。

この活動は皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

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