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「地雷回避教育」って何をするの?スーダンの場合...

2008年08月22日  スーダン地雷対策
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地雷が全て取り除かれるその日まで安全に暮らすために

無造作に地面に転がっている不発弾

このような不発弾や地雷が数多く残り、人々の生活を脅かしています

スーダンでは、1983年以来、南北間の内戦が20年以上続いていました。
その中でも、スーダン中央部に位置する南コルドファン州は激戦地の一つであり、内戦が終結した現在でも、地雷や不発弾による被害が後を絶ちません。
しかし、地雷や不発弾を取り除くには、気の遠くなるような長い時間が必要とされます。除去が完了するまでの長い間、そこに暮らす人たちが、安全に暮らせるようにするために、日常生活でどのようなことに注意しなければならないのか、教育が必要なのです。

難民を助ける会では、2007年5月以来、南コルドファン州で「地雷回避教育(MRE:Mine Risk Education)」を実施。2008年7月までに、16,963人に、地雷の被害にあわないための教育活動を行いました。
スーダンでの「地雷回避教育」とは、具体的にどのようなことをしているのでしょうか。
南コルドファン州のコーヤ村での様子を紹介します。

大切な第一歩「村長の許可」

簡単に作られた小屋で打ち合わせを行います

コーヤ村で村長と打ち合わせを行う宮澤駐在員(写真右から2人目)

地雷回避教育を行う前に、必ず対象となる村を訪問します。地雷回避教育を実施することについて、その村の村長から許可を得なければならないのです。
村長によっては、地雷回避教育の必要性を認識していない場合や、「よそ者」である難民を助ける会のスタッフが入ってくることに難色を示す場合もあります。効果的な地雷回避教育を行なうためには、事前の聞き取り調査で、過去の被害の状況や、「地雷がある」と言われている場所などの情報を村人から得ることが欠かせませんが、これにも村長の協力が不可欠です。
村長の許可と協力を得ることで、実際の地雷回避教育がスムーズ、かつ効果的に行うことが出来るのです。

この日は、事務所から車で約30分の所にあるコーヤ村を訪れ、聞き取り調査をしました。村長は、私たちが地雷回避教育を行うことを快く承諾してくださいました。相談の結果、地雷回避教育を行う日は、5日後に決定。村長は、当日できるだけ多くの村民を参加させることを約束してくれました。

子どもたちに人気のカードゲーム

多くの場合、木陰で地面にカードを広げて行います

子ども達に人気の地雷回避教育カードゲーム

5日後、地雷回避教育を行うため、再びコーヤ村を訪れました。まず、子どもたちが先に集まってきたので、難民を助ける会が制作した「カードゲーム」で遊んでもらうことにしました。
カードには何種類もの地雷や不発弾、標識の写真が載っており、同じ種類のカードを当てる、という記憶ゲームです。子どもたちにとって普段はなじみのない地雷や不発弾について、楽しみながら学べるように工夫してあります。

大人が対象の「地雷講習会」

移動車にポスターを貼って行います

ポスターを使用して分かりやすく説明

しばらくすると、大人達も集まってきたので、大人向けの「地雷講習会」を開始しました。

「地雷や不発弾とはどのようなものか?」
「爆発効果はどの程度か?」
「疑わしい地域はどこか?」
「危険を示す兆候」
「地雷原等を示す標識」
「事故に遭遇した際にとるべき行動」
といった事項に関して、難民を助ける会が制作したポスターやパンフレットを使って分かりやすく説明していきます。

説明の途中で参加者の集中力が途切れないように、劇を取り入れたり、参加者に質問を投げかけたり、様々な工夫もこらして講義を進めていきます。
この日は、村長の協力もあり、参加者は100名を超えました。講習会は1時間に及びましたが、聴衆は最後まで注意深く耳を傾けていました。
パンフレットは参加者全員に配布し、講習会に参加できなかった家族も見られるようにしています。

知識の定着を図る工夫が大切

ノートを見ながら、真剣に説明を聞く子ども達

子どもたちに好評の「地雷回避教育ノートブック」

講習の終了後、難民を助ける会が制作したノートを配布しました。このノートには、地雷や標識などの写真がデザインされており、子どもたちはノートを使って勉強をしながら、同時に地雷についての復習もできるのです。

講義を一度受けただけで、完全に理解し、行動に移すことは難しいことです。知識を定着させるため、その地域の文化や習慣に密着した教材を研究・作製していくことも今後の課題の一つです。

地雷・不発弾被害者削減のために

移動車の前で。チームワークもばっちりです

地雷回避教育チームスタッフ(写真中央上段が宮澤駐在員)

「難民を助ける会」は現在、南コルドファン州都カドグリに事務所を持ち、国連の地雷対策機関(UNMAO:United Nations Mine Action Office)と連携しつつ、南コルドファン州全域において、上記で紹介した地雷回避教育を実施しています。
現在、カドグリ事務所では、1名の日本人駐在員と8名の現地スタッフが勤務しており、2つの地雷回避教育チームを編成して活動しています。
今後も、地雷や不発弾による被害者を一人でも削減できるようチーム一丸となって活動を継続していきます。皆さまの一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

スーダン・カドグリ事務所駐在 宮澤 宗隆

大分県出身。2008年3月よりスーダン・カドグリ事務所駐在。高校時代、国連のPKO活動を通じて国際協力に関心を持つ。大学卒業後に陸上自衛隊に入隊し「イラク人道復興支援活動」にも参加。7年間の勤務後、難民を助ける会へ。一児の父。

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