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危険な土地に住み続けざるを得ない人々のために ―スーダン・南コルドファン州での地雷回避教育―

2009年07月31日  スーダン地雷対策
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危険な土地に今も住む人々

紅白に塗られた石が地雷の有無を示します

紅白に塗られた石。赤く塗られた側は地雷原、白い側は安全な場所であることを示します

20年もの長い内戦の続いたスーダンでは、国土の広い範囲が地雷・不発弾に汚染されていて、今もなお、その影響下での生活を余儀なくされている人々がたくさんいます。この地雷原では既に、地雷除去を行う国連PKOのチームやNGOが活動しており、地雷が除去されていることを示す白い石で挟まれた道は、安全が確保されています。

とはいえ、日本で生まれ育ち、その間ずっと地雷を見たこともなかった私にとっては、白い石で挟まれた道を歩くのも、塗料の物々しい雰囲気から、何となく不安な気持ちにさせられます。

驚いたことに、この地雷原に今も住んでいる村人がいるのです。「なぜそんな危険なことを」と思いながら、その中の一人の男性に話を聞いてみると、「引越しをしようにも新しい家を建てる余裕がなく、今はしかたなく地雷原の中に住んでいる」との答えでした。「確かに、そう簡単に自分の家からは離れられないなあ」と、自分の浅はかな考えを反省しつつ、小さな子どものいる家庭だったので、その子が遊んでいるときに事故が起きてしまうことなどがないように、地雷の危険性をしっかり伝えていくことの重要性を改めて実感しました。

そのような地域が今も残る、スーダン北部の南コルドファン州で、「難民を助ける会」は2007年5月以来、村々を巡回し、人々が地雷の被害から身を守るための教育「地雷回避教育」を実施しています。その様子をご紹介します。

子どもたちにも楽しく学んでもらうために

子どもたちに紙芝居を読んで聞かせる難民を助ける会のスタッフ

上:難民を助ける会のスタッフが子どもたちに地雷の危険性を教える紙芝居を読んで聞かせます。下:村中、約40人の子どもたちが集まって見つめます

「地雷回避教育」というと、その言葉からはとても硬い内容を想像されるかもしれません。確かに、内容はとても深刻なものですが、伝え方が硬くなってしまうと、村の人々の記憶に残りにくく、結果的に内容がうまく伝わりません。

そこで難民を助ける会では、村の人々にとって親しみやすい伝え方を工夫するべく、スタッフ一同頑張っています。特に子どもたちに対しては、日本での交通安全教室のように、教育内容を楽しみながら学んでもらいたいと考えています。

今年は新しい教材として「紙芝居」を導入しました。この紙芝居では子どもが二人登場し、学校に遅れそうな状況の中、間に合うために近道をしようか、というところから話が始まります。安全が確保されていない道だということを知っているにもかかわらず、「早く着けるから近道を通ろう」と主張するヤシール君はどうなってしまうのだろう、というスリリングな展開に、子どもたちは食い入るように紙芝居を見つめていました。

難民を助ける会のスーダン人スタッフも、この教材に大きな手ごたえを感じており、どうすれば子どもたちの注意をより引きつけられるか、今も日々研究を重ねています。

村人や地雷除去団体と一体となって

村長や村人に話を聞くスタッフ

上:村長(右)との打ち合わせ。左は山浦駐在員。下:村人から不発弾の場所を聞く当会スタッフ

地雷回避教育には、村人の協力が欠かせません。最初に村を訪れる際は、まず村長に会い、回避教育を行う許可をもらいます。村長は、それを村のみんなに伝達してくれて、難民を助ける会が活動を行いやすいような準備をしてくれます。

村長の村での発言力はとても強く、人望もあるので、村長の協力のおかげで人が集まり、スムーズに教育が行えるようになります。多くの場合、村長たちは私たちを、「遠いところ、よくきたね。まあまあ座って」というような感じで歓迎してくれます。そんな時にはアフリカの人たちの寛大さを感じます。

また、村の人々は、村に落ちている不発弾や、地雷が過去に埋められたのではないかと疑われる場所の貴重な情報を持っています。彼らとの話し合いの中からその情報を聞き、地雷除去を行う団体に伝えていくのも、私たち地雷回避教育員の大切な役割です。

地雷除去を行う団体とは密接に連絡を取り、危険地域の情報などを交換しながら、それを村の人々への教育内容に反映するようにしています。地雷除去は、照りつける太陽の中で重い防具をつけて行う、危険と隣り合わせの作業で、彼らの働きには本当に頭の下がる思いです。

このように、「地雷の被害をなくす」という共通の目標の下、村人たちや地雷除去団体と協力しながら、地雷回避教育は行われます。

現地スタッフを運営の中心に

ミーティングではスタッフから活発な意見があります

ミーティングではいつもスタッフから活発な意見があり、頼もしく思っています

「難民を助ける会」がスーダン北部の南コルドファンで行う事業は、支援者の皆さまに支えられて、三年目に入りました。今後は、将来的に日本人スタッフがいなくても現地のスタッフが中心となって事業を進められるように、彼らに任せる分野を広げていきたいと考えています。

教育員として活動する村々ではもちろんのこと、事務所においても、関係機関である国連スーダンミッション内の地雷対策事務所(UNMAO)との協議、助成を頂いている国連地雷対策サービス(UNMAS)に提出する報告書の作成などに、より深く関わってもらい、事務所の運営の方向性に彼らの意見を反映させていきたいと思います。

そのために、月に一度はテーマを決めて議論をしたり、時々外部から講師を招いてトレーニングを行ったりしています。これからも、彼らを最大限にサポートしながら活動していきたいと思います。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

スーダン・カドグリ事務所 山浦 遼

2009年1月よりスーダン北部のカドグリ事務所駐在。教育大学で教員免許を取得。卒業後、青年海外協力隊の小学校教諭としてウガンダに赴任。帰国後難民を助ける会へ。趣味は野球。(宮城県出身)

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