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雪ニモ負ケズ、砂嵐ニモ負ケズ ―移動映画教室がアフガニスタンの学校を回ります―

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2001年のタリバン政権崩壊から8年が経った今もなお、アフガニスタンでは毎月新たに60人近くの人が地雷や不発弾の事故に遭っています。

難民を助ける会は、2001年より地雷対策活動を開始。地雷除去や地雷被害者支援とともに、地雷や不発弾の正しい知識と、地雷の事故から身を守る方法を伝える「地雷回避教育」を実施してきました。独自に開発してきた教材を用いて、アフガニスタン全国の村や学校を訪れて地雷回避教育を行う「モバイルシネマ(移動映画教室)」の様子を報告します。

モバイルシネマの生まれたきっかけ

アフガニスタンでは、道路などの社会基盤が整っていないために、地方に行くほど様々な情報が得にくくなります。地雷や不発弾についても例外ではありません。

少しでも地雷や不発弾の被害に遭う人を減らすため、正しい知識を多くの人に伝えたいという思いから、難民を助ける会はモバイルシネマという移動映画教室を始めました。

娯楽の少ない地方では、映画での知識の伝達がとても効果的です。トレーニングを受けた難民を助ける会のスタッフが全国の村や学校を訪問し、自作の映画やパンフレットなどを使って地雷回避教育を行っています。

子どもたちの被害を減らしたい!

熱心に映画に見入る子どもたち

映画では、内戦中の避難先から故郷に帰る家族が地雷原を通ります

地雷事故被害者の約40%は18歳以下の子どもたち。おもちゃだと思って触れてしまったり、なんとなく危ないと分かっていても、家計を助けるために鉄くずを拾おうとして、地雷や不発弾に近づく子どもが後をたちません。

一人でも多くの子どもを事故から守るため、毎日全国の村を回り、学校や村の集会所などでモバイルシネマを開催します。

この日はカブール近郊の小学校でモバイルシネマを実施しました。訪れるのは、電気も、十分な機材も無い学校や村がほとんど。そこで、発電機や映写機、映像を映すスクリーン代わりの白いシーツ、暗幕なども、教材とともに車に積み込んで持って行きます。

映画は初めてという子どもも多く、皆身を乗り出して見つめます。上映後はスタッフが教材を使って、地雷や不発弾とは何か、見つけたときはどうすればよいかを説明。また、子どもたちに自分で考えて知識を深めてもらうために、質問を投げかけて発言してもらいます。

身近に感じてもらえるよう、教材に工夫

パンフレットでは日常的な場面設定で訴えます

パンフレットでは地雷を見つけたときに取るべき行動を、写真を使って具体的に説明しています

長く続いた紛争中、映画や写真が禁止されていたアフガニスタンで地雷回避教育を行うにあたって、私たちは、アフガニスタンの人たちが今まで見たことのないカラフルな映像を積極的に取り入れました。地雷や不発弾についての正確な知識を知ってもらうのはもちろん、視覚に訴え、メッセージをより効果的に伝えるためです。

例えば、私たちがモバイルシネマで使用する映画では、人々が身近に感じられる登場人物として、帰還する難民家族の旅路を描きました。ポスターには地雷や不発弾の実物大の写真を使い、パンフレットでは、地雷や不発弾の問題を自分のこととして感じてもらえるよう、日常的な場面設定で、登場人物が表情豊かにメッセージを伝えます。

夏/冬60度の温度差の中、今日も村から村へ

アフガニスタンの冬はマイナス20度、夏は40度になることもあり、年間の寒暖差はなんと60度にもおよびます。凍りつく雪の中で、あるいは乾燥した秋の砂嵐の中であっても、難民を助ける会カブール事務所のスタッフたちは、毎朝元気良く事務所を出発します。一方で、事務所に残るスタッフは安全対策のために、治安や天候、道路状況などについて情報を収集し、各チームに連絡します。アフガニスタンでの移動は決して簡単ではありませんが、情報を直接子どもたちに伝えることの手応えは、それらの条件の難しさを超えるものがあります。

2005年から開始したこの事業は、2009年6月現在で授業数約4500回、延べ22万人強が受講しました。情報の浸透しにくいアフガニスタンにおいて、モバイルシネマを息の長いプロジェクトにしていきたいと考えています。

学校から地雷がなくなった日

校舎のすぐ裏が地雷原でした

校舎のすぐ裏が地雷原でした(赤い石はその先に地雷が埋まっていることを示します)

2007年にアフガニスタンに赴任して初めて訪問した学校は、首都カブール郊外にあるにも関わらず、校舎のすぐ裏山が地雷原でした。校舎から手を振ってくれた子どもたちのすぐ目と鼻の先に地雷が埋まっているという現状に、20年以上続いた紛争の傷跡の深さを感じました。

地雷が無事に除去されました

赤から白い石に代わり、地雷がなくなりました

今年4月の出張中に、イギリスの協力団体ヘイロー・トラストの地雷除去活動を視察した際、偶然この学校を再訪しました。かつて地雷原だった裏山は、地雷除去作業が完了し、今は子どもたちの遊び場になっていました。これからは、鬼ごっこもボール遊びも、心配することなく思いきりできます。

難民を助ける会の地雷対策の一つである地雷除去活動がもたらした子どもたちの自由に、嬉しさで一杯になりました。

※この事業は、皆さまからの温かいご寄付のほか、国連地雷対策支援信託基金(VTF)と、2009年7月から外務省日本NGO連携無償資金協力のご支援により実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 青木 真理子

2007年9月よりアフガニスタン・カブール事務所駐在。2008年11月より東京事務局海外事業担当。大学卒業後IT関連企業に4年間勤務。英国の大学院で紛争解決学を学んだ後、難民を助ける会へ(千葉県出身)。

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