「啓発」ってこんな活動-全国の学校で遠い国への関心が着実に広がっています
難民を助ける会は2009年6月、これまでの重点分野「緊急支援」「地雷対策」「障害者支援」に、「感染症対策」「啓発」を新たな活動の柱として加えました。2010年度のAARニュースでは、この5つの分野毎に、難民を助ける会の活動を掘り下げて報告していきます。今月は、2005年から難民を助ける会の啓発活動を担ってきた東京事務局の堀越が、活動の様子と、啓発に込めた思いをお伝えします。
どんな活動をしているの?
「啓発」という言葉にあまり馴染みのない方も多いかもしれません。難民を助ける会では、私たちがアジア、アフリカ、中米のハイチなどで取り組んでいる活動について、一人でも多くの方に理解してもらい、関心をもってもらえるようにするための活動を「啓発」と呼んでいます。具体的には、学校への出張授業や、学校からの訪問学習の受け入れをはじめ、企業や自治体、市民団体が主催する国際協力のイベントなどでの講演を行っています。
特に、未来を担う日本の若い方々に難民を助ける会の活動と世界の問題について知ってもらい、将来国際協力に関心を持つ方を増やしたいという考えから、学校での啓発活動に力を入れています。講演や出張授業では地雷の恐ろしさなど、世界の問題についてお話するとともに、必ず「自分たちにできること」を考えてもらっています。これまでに学校の皆さんと行った活動をいくつかご紹介します。
オリンピックをきっかけに、全校をあげた活動へ
長野市立三本柳小学校では、1998年の長野オリンピックの際の一校一国運動でボスニア・ヘルツェゴビナを担当したのをきっかけに、当時同国で活動していた難民を助ける会との協力が始まりました。同校はその後活動の幅を広げ、現在では6年生を中心に、全校をあげて国際協力の学習に取り組んでいます。
毎年、7月に設けられた「国際ウィーク」に難民を助ける会の職員が同校を訪問し、地雷問題や途上国の暮らしなどについて、出張授業を行っています。また、各学年でテーマを設けて「平和」や「対人地雷」「難民問題」などについて学習し、その成果を発表しながら募金活動を行ったり、資源回収やバザーを通してご寄付くださっています。
寄付の使われ方を知って、活動の励みに
石川県の小松市立稚松小学校では、児童の皆さんが集めたアルミ缶回収の収益を10年連続で難民を助ける会にご寄付くださっています。この2月、3~6年生の皆さんに講演を行いました。地雷対策活動の内容と、活動に必要な資金について説明。また、地雷・不発弾が残るアフリカ・アンゴラの様子を紹介し、「自分たちの生活にあってアンゴラの小学生の生活にないものは何か」などを考えてもらいました。先生方からは講演後、「自分たちの寄付が具体的にどういう活動に役立てられているのか、イメージできるようになり、生徒たちの励みになりました。今後、今まで以上にアルミ缶が集まると思います」とコメントを頂きました。
学園祭や催し物で難民を助ける会の活動写真を展示してバザーや募金活動を行うなど、他にも、多くの小・中・高校や大学が様々な形でご協力くださっています。
地雷やアフリカを自分の事として
難民を助ける会では、スタッフによる講演を年に60件ほど行っています。多くの方が、講演を聞いたことが契機となり、地雷や難民、感染症などの問題に関心を持ち、その後自分たちで学び続けてくれます。それだけでなく、学習して得た知識を学校で発表したり、周りの人に伝えたりすることで、難民を助ける会の活動や、難民を助ける会が取り組む国際的な問題に関心をもつ人を、着実に増やしてくださっています。子どもたちが、自分たちにできることから活動に取り組むことで、将来にわたって国際的な問題にも関心を持つ大人へと成長していってくれたら嬉しいです。
学校で皆さんに話をすると、水運びをするアフリカの子どもたちの写真を食い入るように見つめたり、「足や手を失ってしまう恐ろしい地雷が、300円から作られている」と聞いて、驚きの表情をしたりします。それまで「アフリカ」と聞いても、何もイメージできなかった子どもたちが、講演をきっかけに、アフリカの様子が一枚の絵として頭に浮かぶようになると、自分と関係のあることとして捉えられるようになると思います。啓発活動を通して、このような「きっかけ」を多くの方々に提供していきたいと思います。
稚松小学校5年1組の皆さんの感想より |
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「わたしは今日地雷のことについて教えてもらって、世界にはたくさんの人たちが地雷にあって苦しんでいるのだと思いました。地雷というものは人の足や手をなくしてしまうほどおそろしいものなので、わたしは地雷をなくすためにアルミ缶をあつめようと思いました。 自分の家の近くには地雷がないけれど、ほかの国には地雷がたくさんあるので、はやく地雷をなくしたいです。」 |
「ぼくは、初め地雷ってなんだろう、と思いました。世界ではいろんな人たちがいます。その中でもアンゴラという国は、ズックがない子や学校に行けない子がいます。かわいそうだなあ、たすけてあげたいなあ、と思いました。世界でめぐまれない子どもたちのために、アルミ缶をできるだけたくさんもって行こうと思いました。 今日の話を聞いてぼくは、地雷についてもっと調べようと思いました。」 |
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 堀越 芳乃
2005年4月より東京事務局でアフリカ事業と啓発活動を担当。アメリカの大学院で国際政策を学んだ後、南米ガイアナで国連ボランティアとして国際機関に勤務。その後、難民を助ける会へ(東京都出身)